
なぜ "酸塩基平衡" が必要なのか
私たちの身体を流れる血液のpH(ペーハーではなくピーエイチ)は7.40±0.05と非常に狭い範囲に維持されています。これは酵素などの蛋白質活性を至適に保つためです。もし大きく逸脱すると細胞の機能が停止し生命維持が困難となります。また酸塩基平衡を測定する目的は単にアシドーシス、アルカローシスを解釈することではありません。そこからどのような病態が存在しているか、それに対して身体がどう反応をしているかを推定することにあります。今回は酸塩基平衡を理解するための基礎知識について解説していきます。
なぜpHは7.35 ~ 7.45なの?
ヒトは酸素と糖を利用して解糖系、TCA回路を経て38ATPというエネルギーを作り出しています。ここでTCA回路が正常に進むためには各種の酵素が必要になります。そしてこれらの酵素には至適pHがあり、それが7.4付近というわけです。これは糖代謝に限ったことではなく、タンパク質代謝、脂質代謝と、我々が体内で行っているあらゆる生化学反応も同様であり、pHが異常になるといかに危険かというのがおわかりいただけるかと思います。

酸とは?塩基とは?
酸にはさまざまな定義がありますが、血液ガス分析では「H+を生み出す物質」=酸と考えると理解しやすくなります。CO2は水に溶けると炭酸(H2CO3)となりH+を生じるため、「酸」として働きます。一方、塩基は「H+を受け取る物質」です。HCO3-(重炭酸イオン)はH+を受け取り、中和する働きがあるため「塩基」と考えます。私たちの身体は代謝によって常に大量のH+ が産生されています。H+ が蓄積すると酸性に傾き生命維持ができなくなるため、身体はH+をCO2などの形に変えて肺や腎臓から排出し、酸塩基平衡を保っています。

アシデミアとアシドーシス、どう違う?
アシデミア/アルカレミアは「血液の酸性度」を示し、pHが低い(<7.35)状態がアシデミア、高い(>7.45)状態がアルカレミアとなります。一方、アシドーシス/アルカローシスは「pHが変動する原因となる病態」を指します。下図のように綱引きをしている状態をイメージして下さい。例えばある患者さんのpHが7.20だったとします。ここでアシドーシスという病態が綱を引いているのは確かですが、アルカローシスも綱を引いている可能性があります。このようなに隠れた病態を探すことも酸塩基平衡を解読する目的になります。
あたまの体操!血液ガス クロスワードパズル
▢ に入る文字を組み合わせると何になる?
酸塩基平衡の読み方①
Pre STEP:患者情報から予測
血液ガスの解読は、測定後のデータを見て考える前に対象となっている患者さんについての情報を知ることがスタートになります。
どのような病態なのか、そこからどのような酸塩基平衡異常が出るのかを予測しておくことで、得られたデータは予測通りなのか、または予測されている以外にも異常が考えられるのかを考えます。例えば循環不全(ショック)があれば代謝性アシドーシスの要素がありますし、嘔吐があれば代謝性アルカローシスがあるだろうと考えて、実際のデータを読んでいくことが重要になります。
よくある病態とそこから予測される酸塩基平衡異常
STEP1:アシドーシス?アルカローシス?
まずpHが7.40より大きいのか小さいのかを確認します。<7.40の場合は「アシドーシス」、>7.40の場合は「アルカローシス」
STEP3 以降の読み方については次号で解説します





