血液ガス分析を行う2つの目的
ヒトは酸素不足になるとエネルギー産生が滞り、分単位で命の危険に晒されます。この時同時に“酸”を産生することで血液は酸性(アシデミア)へと傾き、体内のあらゆる代謝に関与する酵素の働きを阻害することになります。そこで酸素化と酸塩基平衡の2つを評価することで、対象となる患者さんが生命の危機に瀕していないのかを知ることができます。さらに、血液ガス分析装置で同時測定ができるヘモグロビンとその関連項目や電解質、代謝項目(Glucose,Lactate,Creatinineなど)も、初療現場や院内急変時など急性期の場面で必要な検査値となっています。

データ解読に必要な情報と考え方
血液ガス分析は命に関わる病態を評価する場面で必要とされる検査であり、データ解読の際にはあらゆる患者情報が有用となります。患者情報とは血圧や脈拍、呼吸、意識状態といったバイタルサインのほか、年齢、性別、主訴、既往歴などです。さらには採血部位(動脈血 or 静脈血、穿刺採血 or ルート内採血)などの情報を把握しておく必要があります。これらの情報から、どのような病態なのか、またその病態ではどのような酸塩基平衡異常が想定されるのかを知っておくことが非常に重要となります。
「解読の結果、代謝性アシドーシスでした」では意味はありません。代謝性アシドーシスを起こす病態にはどのようなものがあるのか?それは患者病態と一致するのか?までを追いかけることで、初めて血液ガス分析の威力が発揮されることになります。下表に、よくある病態とそこから予測される酸塩基平衡異常を示します。
よくある病態とそこから予測される酸塩基平衡異常
あたまの体操!血液ガス クロスワードパズル
▢ に入る文字を組み合わせると何になる?
血液ガス分析における主なピットフォール
見落としやすい落とし穴について解説します。詳細は次号以降に掲載していきます。

採血前
患者さんの状態
- ラベルの確認: 患者とサンプルの取り違え
- 息ごらえの影響:pH↓・pO2↓・pCO2↑
- 過呼吸の影響:pH↑・pO2↑・pCO2↓
- 安定状態:呼吸器設定の変更から安定するまで20~30分
- 白血球・血小板高値:pO2が低下、pCO2が上昇する可能性
抗凝固剤の選択
- ヘパリン以外の抗凝固剤の選択:かわら版第2号参照
- ヘパリン種別:液体ヘパリンでは検体希釈が起こる可能性

採血~測定
採血時
- ルート採血時の輸液混入:十分なフラッシュが必要(かわら版第2号参照)
- 空気の混入:pO2は160mmHgに近づきpCO2は漸減
- 静脈血の混入:pO2が低下、pCO2は上昇
- 組織液の混入:K+上昇および希釈によるHbなどの低下
- 吸引時の陰圧:赤血球が溶血しK+が上昇
採血後

データ解釈
基本的なデータの読み方
- ” pO2値が基準範囲=酸素化正常 ”でない:酸素投与時はP/Fなどで評価
- “ pH値が基準範囲=酸塩基平衡正常 ”ではない:pH・pCO2・HCO3-の全てが基準範囲の場合のみ正常
- “ PaCO2>45mmHg=呼吸性アシドーシス ”ではない:
PaCO2、HCO3-ともに代償反応によって変化している可能性 - 代償の有無について読み方がわからない:
代償はpH=7.4に戻そうとする反応で、呼吸性異常は代謝で、代謝性異常は呼吸で代償
代償反応は主となる酸塩基平衡異常と同じ向き(上昇/低下)に変化
データトラブル
- 容積置換:高脂血症や高蛋白血症では生化学(間接法)が偽低値の影響を受けるため、影響を受けない血液ガス(直接法)との乖離が生じる
各種薬剤の影響:例えば消毒薬である次亜塩素酸ナトリウム、ADHD治療薬であるアトモキセチンなどが血液ガス分析Na+値に偽高値となる可能性
