血液ガス分析のお作法いのちの"いま"を見える化する
血液ガス分析かわら版Vol.2

血液ガス分析の採血はどのタイミングで行えばいいでしょうか?血液ガス分析の目的は大きく2つあります。1つは現在の患者さんの状態が危機的なのかどうかを知ること、つまり十分な酸素が末梢に供給されているかどうか、二酸化炭素がきちんと排泄されているか、またそれに伴って酸塩基平衡の乱れがないかをチェックすることです。この場合のタイミングは必要時はいつでも採血するということになります。もう1つは呼吸状態の評価です。具体的には吸入気酸素濃度の開始や変更時、人工呼吸器の設定変更時などがあります。この場合は採血時に呼吸が定常状態になっていることが望ましいとされています。定常状態に要する時間は20 ~ 30 分とされています。

直接動脈を穿刺する場合は問題になりませんが、動脈ラインから採血する場合は事前に逆流させてから採血を行う必要があります。また、吸入速度が速すぎてもライン内で乱流が生じてヘパリン生食が検体中に混入する可能性があります。

橈骨動脈からの採血

  1. 皮膚に感染や炎症がなく拍動がよく触れる部位を選択する
  2. アルコール綿で穿刺部位を消毒する(ベンザルコニウムは不可)
  3. 皮膚面に対して45度の角度で穿刺する
  4. 採血後はすぐに圧迫止血し、最低5分間は押さえる
血液ガス分析かわら版②採血

ラインからの採血

  1. ラインの接続部を確認しカテーテル内に空気が入らない事を確認する
  2. 三方活栓をアルコール綿で消毒する(ベンザルコニウムは不可)
  3. ラインとコネクタの死腔量の5~6倍量(約3mL)を吸引し、確実にロックした上で採血
血液ガス分析かわら版②採血

とくに生理食塩液はNa+ とCl-をそれぞれ154mmol/L 含有しており、K+やCa++ 、HCO3-、Glu、Hb は含まれません。よって検体中に混入するとNa+とCl-は154mmol/L に近づき、その他の項目は希釈性に低下します。


血液ガス分析装置に入った全血サンプルは測定経路を通り各電極部へと導かれます。ここで正しい結果を得るために最も基本的かつ重要なのは、抗凝固剤であるヘパリンの添加によってサンプルを凝固させないことです。ヘパリン化されていないサンプルを測定すると装置内で凝固塊が形成されて経路が詰まってしまい装置トラブルの原因となります。近年は乾燥ヘパリンが塗布された血液ガス専用シリンジが汎用されており、採血と同時にサンプルをヘパリン化する事ができます。またEDTA やクエン酸、NaFなどの抗凝固剤は酸性物質でありpH値への影響が出ること、またNaやKを含むと電解質にも影響が出ることから、血液ガス分析には使用することができません。

ヘパリン以外の抗凝固剤を使用した場合に考えられるデータへの影響

クエン酸(凝固用検査用)
pH7.2~7.6・脱Ca++・液状

  • pH ー 偽高/低値 ↑↓
  • Na+ ー 偽高値 ↑
  • Ca++ ー 偽低値 ↓
  • Hb ー 偽低値 ↓

EDTA (CBC検査用)
pH6.5~7.5・脱Ca++

  • pH ー 偽高/低値 ↑↓
  • Na+/K+ ー 偽高値 ↑
  • Ca++ ー 偽低値

フッ化ナトリウム( 血糖検査用)
pH5.5~6.5・脱Ca++

  • pH ー 偽低値 ↓
  • Na+ ー 偽高値 ↑
  • Ca++ ー 偽低値 ↓

低濃度ヘパリン

バランスヘパリン

機序

低濃度にすることでヘパリンの影響を最小限にする

ヘパリン中に予め電解質を付加し測定値への影響を抑えている

推奨単位

~40 IU/mL

~40 IU/mL

ヘパリンは陽イオンと結合する性質を持つため電解質、特にCa++ の測定値に影響を与えるとされている。このヘパリンの影響を最小限にするため低濃度ヘパリンやバランスヘパリンの使用が推奨されている。


血液ガス分析かわら版②イラスト

以前使用されていた血液ガス分析用のシリンジはガラス製でした。ガラス製シリンジは気体を通さないため血液ガス分析にはうってつけでしたが、割れやすく感染のリスクがあることから、近年ではプラスチック製シリンジが標準的に使用されています。現在使用されている血液ガス分析専用シリンジは気体を通しにくい構造を持つプラスチックで作られていますが、それでも採血から測定までに多少に時間がかかる場合は注意が必要となります。大気中の酸素分圧は約160mmHg、二酸化炭素分圧は約0mmHg ですので、検体中のpO2、pCO2 は時間経過とともに大気中分圧と平衡になろうと変化します。また検体中に空気が入った場合も同様の変化が起こります。


血液ガスかわら版②検体保存

血液ガス分析の検体は血液検査の中でも最もデリケートな取り扱いが必要なものの1つであり、採血後は速やかに測定するのが原則です。しかし分析装置まで距離があるなどの理由で測定までに時間がかかる場合があります。
CLSI のガイドラインによると、採血後30分以内でプラスチック製シリンジであれば室温での保存が望ましいとされています。一方、測定まで30分以上かかる場合は氷水中での保存を考慮すべきですが、この場合、溶結によるK値の偽高値には注意が必要とされています。
また白血球や血小板は採血後にも検体内で代謝を続けるためpO2↓/pO2 ↑/pH↓などの変化が起こるため、高値検体ではより迅速に測定する必要があります。

血液ガスかわら版②エアシューター図
*1 J Formos Med Assoc. 2003 Apr; 102(4):246-9.

院内のエアシューターを用いて血液検体を搬送されているご施設があると思います。エアシューターの中に入れた物品は手搬送よりも激しい振動にさらされ、血液ガス分析とくに検体中に気泡がある場合のpO2 の測定誤差を増幅させると報告されています。こちらの図表*1 によると、検体中に混入した空気量が多いほどpO2 の上昇が大きく、また同じ空気量でも得たシューターによる搬送のほうが手搬送よりも上昇幅が大きかったとされています。血液ガス検体を院愛搬送する際には注意しておきたいポイントの1つとなります。


動脈血の採血というのは侵襲が強いものです。患者さんのことを考えても、静脈血で代用できるならそれに越したことはありません。そのため、静脈血液ガスが動脈血の代わりになるのか、という議論はこれまでもされてきました。項目ごとの差は右図をご参照頂ければと思いますが、特にpH、HCO3- については相関は保たれており、“ 酸素化の評価はできないが酸塩基平衡の評価には十分使える” ということになります。ただし注意点として、pO2 やsO2 などで酸素化を評価する場合は静脈血では評価できませんので確実に動脈血で測定する必要があります。*2 *3

項目

静脈血で代用

動脈 vs 静脈

pH

動脈血が約0.03 高め

HCO3-

動脈血が約1.03 mmol/L 低め

pCO2

静脈血45mmHg 以下なら動脈血50mmHg 以下

Lactate

静脈血が基準範囲内なら動脈血も基準範囲内

pO2

×

動脈 xs 静脈の相関なし

sO2

×

動脈 vs 静脈の相関なし