機械的血栓回収療法の適応推奨度の変化
ここ数年間の、機械的血栓回収療法の適応推奨度に関する図です。内頚動脈または中大脳動脈M1部閉塞例を対象にしたものです。それぞれ横軸は発症あるいは最終健常確認時刻からの時間で、縦軸は虚血コア体積とそれに相当するASPECTSです。緑はグレードA(強く勧められる)、黄色はグレードB(勧められる)、オレンジはグレードC1(考慮しても良い)です。
図1は経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針 第4版(2020年3月)、図2は同指針の第5版(2023年8月)にあったものです。この2つを比べると、第4版にあったグレードCの部分も含めて、第5版では縦は虚血コア体積が100ml(ASPECTSが3)まで、横は24時間までグレードBの範囲が広がっています。図2では黄色部分の上端はグラデーションになっていますが、第5版の文章では「ASPECTSが3~5点の広範囲虚血領域を有し、発症または最終健常確認時刻から24時間以内の脳梗塞では、本療法を行うことは妥当である(推奨度B)」と書かれています。また、図の下に記しましたが、第5版では、脳底動脈の急性閉塞による脳梗塞でも条件を示して24時間まで推奨度B、また軽症例、中血管閉塞例、発症前に障害を有する脳梗塞についても条件を示して推奨度C(考慮しても良い)としています。
機械的血栓回収療法の適応推奨度の変化
そして図3は、図2に「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025] 」(以下ガイドライン)の内容を追記したものです。青地に記した数字はガイドラインの項目番号です。ASPECTSが7以上は24時間まで推奨度Aに一本化、ASPECTSが3から5について24時間まで推奨度Bの件は適正使用指針第5版同様、そしてASPECTSが3未満でも6.5時間以内は新たに推奨度Cとなっています。詳細についてはガイドラインをご参照ください。
このように、脳血栓回収術の適応範囲はここ数年拡大する傾向にあります。適応対象となる患者さんを早期に見極めて、血栓回収療法の実施あるいは実施可能施設への転送を迅速に行う重要性がますます増大しているのです。
脳卒中治療における連携と診療報酬
脳卒中治療における連携と診療報酬について、図にしてみました。図の左側はアルテプラーゼ静注療法は可能で脳血栓回収療法は実施できない施設。右側は両方とも実施可能な施設です。
図のケースAとケースBは、それぞれ単独の病院で治療が完結するケースです。この場合には、施設基準を満たしていれば、条件(脳梗塞と診断され発症後4.5時間以内にアルテプラーゼ静注療法を実施し入院治療を行う)を満たした患者についてそれぞれの施設が単独で超急性期脳卒中加算10,800点を算定できます。
ケースCのような、左の施設でアルテプラーゼ静注療法を行い、その後右の施設に転送して入院治療(脳血栓回収術を行う場合も含む)を行うという連携は、とくに専門医が不足している地域などで必要になるケースが多いと思います。この場合には、左の施設では画像診断を遠隔画像診断で行なったり、その後のアルテプラーゼ静注を遠隔脳卒中診療で専門医の指示のもとに行うケースも考えられます。それも含めて、2施設で連携して治療を行うケースに対して、両方の施設がそれぞれ施設基準を満たしていれば、条件を満たす患者に対して右の施設が超急性期脳卒中加算10,800点を算定して左の施設と分配することができます。なお超急性期脳卒中加算を連携で算定する場合の施設基準には、左の施設は「医療資源の少ない地域」あるいは「医師少数区域等」にある施設であること、という条件が含まれています。「医療資源の少ない地域」と「医師少数区域等」はそれぞれ厚労省ホームページに一覧が掲載されており、内容は逐次更新されています。
連携して治療を行ない右の施設で脳血栓回収術を実施した場合には、超急性期脳卒中加算の算定条件を満たしていれば(ケースC)同加算の算定ができますが、満たしていない場合(ケースD)には、2024年度改定で新設された脳血栓回収療法連携加算5000点が算定可能です。
超急性期脳卒中加算と脳血栓回収療法連携加算についてはこのあとのページに要点を記載しましたが、施設基準や算定上の留意事項などの詳細については厚労省ホームページをご参照ください。
超急性期脳卒中加算の施設基準
超急性期脳卒中加算の施設基準(2024年度改定時点)です。
超急性期脳卒中加算の施設基準は2022年度改定の前までは、図の「ア」の(1)脳卒中の診断・治療を専ら10年以上経験し、t-PA講習 を受講済みの常勤医が1名以上いる、(2)脳外科的処置が迅速に行える体制が整備されている、(3)脳卒中治療を行うに相応しい専用の治療室、SCUなどを有している、に加えて(4)救急蘇生装置(気管内挿管セット、人工呼吸装置等)、除細動器、心電計、呼吸循環装置がある (5)CT、MRI等の脳画像撮影及び診断、一般血液検査、凝固学的検査、心電図検査が常時行える体制がある、という条件で、単独施設完結での点数でしたが、2022年度改定で、この(1)(2)(3)の代わりに図の「イ」の内容でも届出が可能になりました。医療資源 の少ない地域あるいは医師少数区域等にある医療機関であれば、医師の10年以上の経験は不要でt-PA講習受講済みの常勤医がいて、テレストロークガイドラインに沿った情報通信機器を用いた診療体制を整備していて、超急性期脳卒中加算の届出がある他の医療機関との連携体制を構築していればよいということになりました。施設基準としては「ア」「イ」のいずれかと(4)(5)を満たすこと、とされました。
「イ」の内容のうち橙色の「または医師少数区域等」と「『ア』の条件を満たす超急性期脳卒中加算届出施設との間で、経皮的脳血栓回収 術の適応判断における連携について協議し、手順書を整備した上で対象患者について助言を受けている」という部分は2024年度改定で加わりました。後者は次ページの「脳血栓回収療法連携加算」の施設基準の一部にもなっています。
脳血栓回収療法連携加算
2024年度に新設された脳血栓回収療法連携加算です。この点数は、K178-4 経皮的脳血栓回収術 33,150点 という手術の点数の注加算として2024年度改定で新設されました。
さきほどのイの条件で超急性期脳卒中加算を届け出ている医療機関の救急患者について、アの施設が経皮的脳血栓回収術の適応判断について助言を行った上で、イの病院から搬送された当該患者に対して経皮的脳血栓回収術を実施した場合は、脳血栓回収療法連携加算として、5000点を所定点数に加算する。ただし脳血栓回収療法連携加算を算定する場合には、超急性期脳卒中加算(10,800点)は算定できない、とされています。
施設基準は、超急性期脳卒中加算のアの条件で届け出ていて、イの条件で届け出ている施設との間で脳梗塞患者に対する経皮的脳血栓回収術の適応の可否の判断における連携について協議し、手順書を整備した上で、対象となる患者についてイの医療機関に対して助言を行っていること、とされています。また、算定上の留意事項には、脳血栓回収療法連携加算を算定する場合においては、手術を実施するアの医療機関と連携するイの医療機関の間で合議の上、当該連携に必要な費用の精算を行うものとする、とされています。
遠隔画像診断
遠隔画像診断は、撮影して画像データを送信する送信側の医療機関と、画像データを受け取って診断・読影する受信側の医療機関との間で行われるものです。
実施するためには送信側・受信側どちらの施設も、遠隔画像診断の施設基準の届出が必要です。その施設基準の内容は、送信側は、撮影及び送受信に十分な装置・機器を備えていて、受信側施設以外に読影や診断を委託していないこと。受信側は、画像診断管理加算1,2,3,4のいずれかを届け出ていること。そして、特定機能病院、臨床研修指定病院、へき地医療拠点病院、あるいは医療資源の少ない地域にある病院、のいずれかであること。つまり、受信側は特定の施設しかなることができないのです。これらの基準を満たして届出をした施設の間で遠隔画像診断が行われます。送信側が撮影した画像データを送信し、受信側が読影(診断)、報告書作成を行い送信側に返します。診療報酬については、撮影料、診断料、画像診断管理加算、すべてを送信側が算定します。画像診断管理加算は受信側の施設基準の届出によるものです。
受信側の医療機関における費用については、算定上の留意事項に「双方の合議に委ねるものとする」と書かれています。とくに規定はありませんが、診断料、画像診断管理加算の100%に相当する金額(実費)を送信側が受信側に支払っているケースが多いようです。
脳卒中治療のお話で言えば、最初に患者を受け入れた施設が送信側となり、脳卒中専門医のいる施設が受信側となります。受信側、送信側がそれぞれの施設基準を満たしてあらかじめ届出をしていれば、ここに書かれた点数を算定できるということです。ただ現状では、この届出をしている施設の数は非常に少なく、数施設しかない都道府県も珍しくない状況です。
この記事をPDFでもご覧いただけます。(印刷可能)


![機械的血栓回収療法適応の推奨度(脳卒中治療ガイドライン2021 [改訂2025])](https://marketing.webassets.siemens-healthineers.com/3c059e2b40ed6fea/c04941c02d52/v/1858dcd579cb/MS_25078A_fig2--002-.png)






