
都道府県の医療計画は6年ごとに改定され、2024年度からは第8次※1がスタートしています。医療計画は、医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携を推進するため、昭和60年の医療法改正により導入されました。当初の内容は都道府県の二次医療圏ごとの病床数の設定、病院の整備目標などが中心で、病院・病床を対象としたものというイメージでしたが、その後「4疾病5事業」ごとの医療連携体制に関する記載が加わり、平成24年の第6次医療計画では「5疾病5事業および在宅医療」※2となって在宅医療がクローズアップされるなど、クリニックにも関連する内容が少しずつ出てきていました。そして平成30年の医療法改正により各都道府県が新たに「外来医療計画」を令和元年度中に策定することとなり、当時は第7次医療計画の追補版という位置づけで策定されたものが、第8次医療計画ではその一部として組みこまれました。今回は、この第8次医療計画の中の外来医療計画に相当する部分について、お話ししたいと思います。
※1 一部の県では第9次や他の名称で記載されていることがある。
※2 第8次では5疾病6事業および在宅医療となる。5疾病はがん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患を、6事業は救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療、新興感染症発生・まん延時における医療を示す。
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「外来医療計画」は「診療所医療計画」とも言える内容
外来医療計画は「医療計画における『外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項』を定めたもの」で1)、その内容は「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(前期)~」2)で規定されています。外来医療の提供体制は比較的短期間に変化しうることから、3年ごとに中間見直しを行うこととされており、2026年度には第8次(後期)外来医療計画の策定・公表が予定されています。
外来医療計画の内容の中心は、「外来医師偏在指標」と「外来医師多数区域」の設定、およびそれを踏まえた都道府県としての取組です。「外来医師偏在指標」は、厚労省が設定した計算式によって二次医療圏ごとに算出される数字で、図1の通り、診療所の医師数が要素として使われるため、診療所の偏在状況を示す指標としても使用可能と考えられています。そして、この「外来医師偏在指標」の上位1/3に該当する二次医療圏が「外来医師多数区域」に指定されます。
外来医師偏在指標に基づく
外来医師多数区域の設定を踏まえた都道府県の取組とは
「外来医師多数区域」に指定された二次医療圏では、都道府県が新規開業を希望する者に対して、当該区域において不足する医療機能を担うよう求めることとされています。もし本開業希望者が求めに応じない場合は地域医療構想調整会議など、都道府県が設定する協議の場への出席が求められ、協議結果は住民等に対して公表されます2)。
では、「不足する医療機能」とは、どのようなものが想定されているのでしょうか。令和4年度の厚労省医政局地域医療計画課の調査3)によれば、初期救急医療(夜間・休日)、在宅医療、公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)の3つが他を大きく引き離して「不足」となっています(図2)。それもあってか、都道府県によっては外来医療計画の中で、2次医療圏ごとに病院と診療所に分け、外来医師偏在指標のデータとあわせて初期救急や在宅医療への対応割合を表示しているところもあります。またガイドラインには、初期救急医療と在宅医療への対応に関して、「在宅医療の24時間体制を支えるためにグループ診療に関する取組を行うこと」や「夜間・休日外来の体制構築のために在宅当番医制への参加や夜間休日診療センターの設置・参加を進めること」が例として記載されています2)。
既に開業中の先生方、指定区域外のクリニックも
取組対象になり得る
では「外来医師多数区域」ですでに開業されている先生方、または外来医師多数区域ではない地域に立地されているクリニックは、都道府県の取組の対象外になるかというと、実はそうではありません。ガイドラインでは「外来医師多数区域以外の区域において、又は新規開業者以外の者に対しても、地域の実情に応じて、地域で不足する医療機能を担うよう求めることができることとする」と記載されています2)。
こうした記載も踏まえ、ぜひご自身のクリニックが立地する都道府県の医療計画を一読してみてください。医療計画は都道府県のホームページで公表されており、「外来医師偏在指標」のキーワードで本文を検索すると、都道府県によって形式は異なるものの概ね下図3のようなものが見つかると思います。
外来医療計画を把握しつつ
より小さな区域のニーズにもアンテナをはって
来たるべき外来患者シフトに備える
ガイドラインに「今後、地域医療構想の達成に向けて病床の機能分化・連携のための医療機関の統合・再編が進むことで、入院からの移行により外来医療がさらに医療サービスの受け皿となっていくことが見込まれ(以下略)」2)という文章がある通り、外来医療の担い手としてのクリニックの重要性は増していきます。そのため自身の都道府県の外来医療計画については、クリニックとしてもぜひ把握しておいていただくことをおすすめします。ただ一方で、外来医療計画は二次医療圏単位での大まかなものですので、地域に根差した診療所として、より小さな区域での医療ニーズにアンテナを張ることも大切に、来たるべき変化に備えていただきたいと思います。
1) 厚生労働省「外来医療計画の概要」:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001071386.pdf
2) 厚生労働省「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(前期)~」:https://www.mhlw.go.jp/content/000550063.pdf
3) 厚生労働省「令和4年10月26日 第16回第8次医療計画等に関する検討会 資料1」:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001004967.pdf
(2024年11月19日作成)





