新たな地域医療構想の「基本的な方向性」には「かかりつけ医機能」が含まれている
とりまとめに書かれた新たな地域医療構想における基本的な方向性を見ると、以下の4点を中心として、「治す医療」と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療・介護提供体制を構築するとされています。
新たな地域医療構想における外来医療・在宅医療の課題と方向性とは
では、新たな地域医療構想でクリニックに期待することは、前述のような在宅や介護と連携したかかりつけ医機能だけなのでしょうか?とりまとめから、診療所の外来医療・在宅医療についての課題や方向性に関する記載を拾ってみましょう。
- 外来医療については全国的に需要が減少傾向
- 診療所の医師は全体として高齢化しており、人口が少ない地域の診療所数は減少傾向
- 診療科のうち内科を標榜する診療所が最も多く、ほぼ全ての二次医療圏において半数以上が内科を標榜
- 内科以外の診療科で需要に応じて効率的な医療が提供できるよう、地域の実情に応じて診療所と中小病院等の連携が求められる
- 人口減少や高齢化、外来医療の高度化が進む中、かかりつけ医機能の強化とともに、外来医療計画による外来の機能分化・連携の推進が必要
- 在宅医療については2040年に向けて大半の地域で需要が増加する見込み
- 在宅医療の提供の主体は診療所であるが、近年、在宅医療を提供する診療所の数は横ばいとなっている
このような課題と方向性をもって、「新たな地域医療構想においては、入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護連携等も対象とすることが適当」とされています。具体的な内容は2025年度中に策定されるガイドラインに記載されることになりますが、前項で書いたような、在宅や介護と連携したかかりつけ医機能だけではなく、外来医療における病院との機能分化と連携についても示されると思われます。
病院と有床診療所には新たに「医療機関機能報告」が求められる
病院と有床診療所については、新たな地域医療構想を進めるために、これまでの病床機能に加えて新たに医療機関機能を報告すること、とされています。そこで報告する医療機関の機能として、以下の5つが挙げられています。
「医療機関機能報告」によって可視化される連携構造とクリニックの対応戦略
医療機関機能報告の導入により、地域における連携関係が明確化され、患者さんの流れは下の図のようなパターンになると考えられます。ちなみに「専門等機能」については省略しています。また、「上り搬送」「下り搬送」は救急患者さんの流れを示しています。
クリニックから病院に患者さんを紹介する場合としては、図の①②③の3パターンが考えられると思いますが、例えば患者紹介①で紹介した患者さんが逆紹介で戻ってくるルートは直接の④、あるいはポストアキュートの転院を経て⑤、の2通りが考えられます。②で紹介した患者さんについても同様に、直接の⑥あるいはポストアキュートの転院を経て⑤のルートが考えられます。直接戻ってくる④や⑥に比べて転院を経由する⑤の患者さん、すなわち「在宅医療等連携機能」の医療機関を経由する患者さんは退院後に在宅医療や介護サービスが必要なケースが多いと考えられます。同じ機能をもつ医療機関は地域に複数存在することになるでしょうし、介護サービス機関も多数存在します。クリニックとしては、患者さんを紹介する、逆紹介される病院だけを見るのではなく、その先、すなわちその病院にはどこから患者が多く来るのか、どの介護サービス機関と連携しているのか、といった地域全体の医療・介護ネットワークの流れを把握し、自ら のクリニックに患者さんが流れるルートを確認するとともに、そのルートをより太くするにはどのような機能や連携関係を持つべきかを考える、という視点が求められるでしょう。それこそが、新たな地域医療構想において求められる外来医療におけるクリニック・病院・介護施設の機能分化と連携の実現に向けて、クリニックが主体的に関与していくための第一歩です。





