
医療の2025年問題と騒がれたのも今は昔、その2025年が来年に迫った現在は、2040年以降を見据えてさまざまな施策が開始・検討されています。医療提供体制に関する施策としては、これまでは都道府県の保健医療計画、地域医療構想、病床機能報告制度など、入院病床が議論の中心となっているものがほとんどで、外来医療を中心とするクリニックとしてはあまり関係がないと思われてしまうものばかりでした。しかし、令和7年度から開始が予定されているかかりつけ医機能報告制度は、まさにクリニックが対象の中心となるものです。そしてこの制度は独立して突然立案されたものではなく、医療機関の機能分化と連携強化を目指す全体の大きな流れの中で、他の施策とつながって具体化されてきたものです。本稿では、かかりつけ医機能報告制度のスタートが目前に控えるなか、これまでの施策や、クリニックとは直接の関連が薄かった医療関連施策をピックアップして、クリニックの視点から見ていきたいと思います。
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医師の働き方改革等に資すべく
令和4年度から外来医療の機能分化が始まった
医療機関の機能分化のなかで、令和4年度に動き出した施策が外来医療の機能分化です。図1は、令和4年度の診療報酬改定を審議していた中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の資料にあるもので、機能分化・強化を行っていない場合といる場合の外来患者の流れを示しています1)。前者(図1上段)では、一般外来の患者は病院と診療所をとくに区別せず受診していますが、後者(図1下段)になると患者の大多数が診療所を受診し、病院の外来は後述する「医療資源を重点的に活用する外来」が中心となっています。上段のような姿から下段のような姿にしていくことで、病院側の入院機能が強化され、さらに、病院勤務医の外来負担の軽減など、医師の働き方改革に資すると考えられています。

外来医療の機能分化に向けて
令和4年度から「外来機能報告制度」が開始
図1のような変革を推進する施策のひとつとして、「外来機能報告制度」が令和4年度に開始されました。本制度は、各医療機関が外来医療の実施状況等を年1回、都道府県知事に報告するというもので、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」を明確にすることが第一の目的でした。そのため、クリニックは対象にならず、一般病床あるいは療養病床をもっている病院および有床診療所のすべてと、厚労省がレセプトデータによって対象の可能性があると判断して抽出し、参加意向を確認したごくごく一部の無床診療所だけが対象となっています。
そして、こうした外来医療の実績が一定(初診で40%、再診で25%)以上あり、かつ希望する施設を「紹介受診重点医療機関」に指定し、地域の外来機能の明確化と連携を推進していくことが「外来機能報告制度」の第二の目的とされています。
※「医療資源を重点的に活用する外来」は、令和5年度の報告から「紹介受診重点外来」という呼称に変更されました。
近隣病院の外来機能報告をみて地域の動向を知り、
来たるかかりつけ医機能報告制度にも備える
全国の病院の外来機能報告結果は、実は施設名入りで厚生労働省のホームページに公開されており、2024年現在は令和4年度と令和5年度の結果にアクセスできます。「報告する必要がないならばクリニックには関係ない」とも言えますが、近隣病院の報告内容にご興味はありませんか。そこには図2のような項目が並び、例えば黄色エリアの「紹介受診重点外来の患者割合」からは、今後病院ではなくクリニックで受け持てるであろう患者がどの程度いるのかが分かります。また、赤色エリアの項目は、報告されているものの紹介受診重点外来に該当しないもので、多くはクリニックで実施されており、かかりつけ医機能と直結します。
今は本報告制度の対象になっていないクリニックですが、令和7年度に始まるかかりつけ医機能報告制度への対応準備として、また地域の病院をはじめとする他施設の動きを自院の方針決定などにつなげていく参考材料として、本データを活用してみてはいかがでしょうか。
1) 厚生労働省「令和3年11月12日 中央社会保険医療協議会 総会 第496回資料 総-1」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000853822.pdf
2) 厚生労働省「令和5年度外来機能報告の結果について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525_00013.html
3) 厚生労働省「令和5年度外来機能報告の結果について 報告様式2」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001303792.xlsx
(2024年10月1日作成)




