
みうら脳神経クリニック 第1回
MRI・CT 両装置をそろえた検査体制で
患者さんを不安なまま待たせない
脳神経疾患診療を目指す

2023年4月、熊本市中心部から東へ約10km、九州自動車道のインターチェンジからほど近い県道沿いに、脳神経疾患を専門とするみうら脳神経クリニックが開院しました。院長の三浦正智先生は、来院する患者さんに満足感や安心感を得て帰ってもらえる診療を提供したいという思いのもと、開業時からMRI装置とCT装置の両方をそろえ、正確な診断結果をできるだけ早く説明することにこだわって同院を運営してきました。その結果、開院以来、外来患者数は順調に増加し、脳神経疾患の専門的なクリニックでありながら1日平均約60人に達しています。地域医療に対する三浦先生の思いと、その実践を支える設備の運用について、お話を伺いました。
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1人ひとりに丁寧に向き合う診療姿勢を継続し
開業約1年半で1日の外来患者数は約60人に
当院を開業する前はいくつかの高度急性期病院に在籍し、脳梗塞に対する血管内治療などの急性期治療に専門的に携わっていました。そのため、日常的な患者さんとの接点は治療を終えて退院するまでの入院中1週間程度、という形がメインでしたが、退院後のフォローアップとして、回復期リハビリを終えた方を外来で診察することもありました。すると、入院中は病衣姿しか見ていなかった方がピシッとしたスーツ姿でいらっしゃったりして、患者さん1人ひとりの背景にはそれぞれの生活があるということに、あらためて気づかされることがたびたびありました。そうした経験を通じ、自らが目指す医師のあり方として、疾患を治療するだけでなく、患者さんの生活や人生をトータルにサポートする医療に携わりたいとの思いが大きくなり、クリニック開業を志すようになりました。
その思いを実践に移すべく、立地選定、建物の設計・施工、設備の選定・導入といった必要な準備を約4年かけて進め、農地と住宅地が混在した現在の場所に2023年4月、開業しました。開放的で明るい空気感に包まれた環境であること、地域基幹病院である熊本赤十字病院と熊本市民病院へのアクセスが良好なため、病診連携が取りやすいことなどが決め手でした。九州自動車道の益城熊本空港インターチェンジにも近く、患者さんは熊本市内全域のほか、近隣の合志市や宇城市からも来院する方がいます。
開業後は一貫して、診察時には1人ひとりの話をじっくり聞いたり、検査画像の説明を丁寧に行ったりすることを心掛けています。内科や耳鼻咽喉科のクリニックを受診する患者さんと比べると、脳神経疾患の可能性がある症状で専門のクリニックを訪れる患者さんは数が限られますので、その分より多くの時間をお1人に割くことができると考えています。開業以来、集患を意識した特別な取り組みや宣伝は行っていませんが、1日の外来患者数は徐々に増加し、現在は平均60人ほどとなっています。
患者さんの状態に応じてMRI・CTを使い分ける
効率的な検査体制で迅速な診断を可能に
当院の大きな特徴を1つ挙げるとすれば、開業当初からMRI装置とCT装置の両方を導入し、適宜使い分けることによって、来院する患者さんへ迅速に診断をつけられる検査体制を整えていることだと思います。当院を受診する方は、頭痛、めまい、しびれといった症状のある方と、打撲や外傷を負った方が大半を占めますが、そうした患者さんの頭部評価をすべてMRI検査で行おうとすると、1日に撮影できる件数には限りがあるなか、即日検査・診断まで行えないケースが出てきます。そうすると患者さんには再来院しての検査日まで、不安のまま待ってもらわざるをえません。
そこで、急性期病院での経験をもとに、頭部打撲など簡便評価でまずは問題ないと判断した場合にはCT検査を実施できる体制とすることに決めました。MRI検査は頭痛、めまい、しびれ、物忘れなどを訴える方について頭部評価が必要な場合に実施としています。このように、患者さんの状態に応じて2つの画像検査を使い分けられるようにしたことで当院の検査のキャパシティが確保され、現在では1日に平均20件超のMRI検査が実施できており、また検査後は即日、診断まで行えています。不安を抱えて来院する患者さんを待たせることなく速やかに診断することが可能なうえ、当院にとっても効率的な診療が実践できていると思います。
なお、最近の患者さんは受診前に情報収集する方が多く、頭部MRI検査を受けられる医療機関を探して当院を見つけ、来院する方が少なくありません。しかし診察の結果、CT検査のほうが適していると判断した場合は、MRI検査が不要であることを説明し、納得が得られた場合はCT検査により対応しています。現在、CT検査件数は1日平均5件ほどで安定しており、MRI装置があることでCT装置も一定の稼働が確保できるといった、相乗効果をもたらすような関係があると言えます。
的確な脳画像評価のためMRI装置は1.5Tを選定
導入後の長期使用を見据えるとアフターサービスの質も重要
当院の診療を支えるMRI装置とCT装置を開業前、選定するにあたっては、急性期病院の勤務医として地域のクリニックと病診連携していた当時の経験も振り返りながら、いくつかのポイントを重視しました。
MRI装置についての最重要ポイントは、高画質であることでした。勤務医当時、紹介された患者の紹介状に添付されていた脳画像の画質が不十分なために的確に評価できず、再撮影を余儀なくされたケースがしばしばありました。やはり脳画像を評価して診断をつけるためには、1.5T以上のMRI装置が必須であると考えました。また、頭部以外の全身が撮影可能であることも、もう一つの選定ポイントとしました。導入した装置を活用し、周辺の整形外科クリニックなどからの受託検査にも対応することを想定していたので、必要な条件と考えました。そのうえで、導入コストに見合った装置であるかどうかを慎重に検討しました。最終的には、コイルがオプション扱いでなく装置購入費用に含まれているなど、リーズナブルと感じられたことが決め手となり、Siemens Healthineers製装置を導入しました。導入後は実際に十分な画質の画像が常時得られており、当院の診療に対して期待どおりの役割が果たされていると感じています。
他方、CT装置に関しては、頭部評価が主な使用目的であり、他の部位や臓器を撮影するケースは少ないと想定されたので、高性能の装置は必要ないと考えました。であれば、営業やアフターサポートの窓口が1つのほうが効率的で便利と思い、すでに導入を決めていたMRI装置のメーカーであるSiemens Healthineersに、該当するようなCT装置があるかを問い合わせました。結果として、頭部評価に必要な画質を担保しながら比較的短い時間で撮影できるCT装置を提案してもらえたので、その装置に決めました。
なお、装置選定をクリニック経営者の視点で考えると、導入した装置が長持ちしてくれることも重要と言えます。そのため、装置導入から約1年半が経過した現在では、メーカーによるアフターサービスの体制やツールなども確認しておくとよいように思います。例えばSiemens Healthineersの装置では、使用する複数の装置をオンラインで一元管理できる「teamplay Fleet」という無償の専用ポータルサイトを使えます。装置を選んでいた際には全く知らず、導入後しばらく経ってから使い始めたのですが、当院の技師から、日常点検※が非常に簡便になり、点検の質が保ちやすくなったと聞いています。さらに点検結果は自動的にメーカーに共有されているそうで、メンテナンスを適切なタイミングで提案してもらえることに大変安心感があります。
※CT装置とMRI装置の日常点検については、厚生労働省の通知「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(2007年3月発出1))の2018年6月2)および2021年7月3)の改正によって、毎日の始業時および終業時の点検が義務付けられている。
1) 平成19年3月30日付医政指発第0330001号・医政研発第0330018号通知
2) 平成30年6月12日付医政地発0612第1号・医政経発0612第1号通知
3) 令和3年7月8日付医政総発0708第1号・医政地発0708第1号・医政経発0708第2号通知
(2024年8月8日取材)
販売名:MAGNETOM センプラ 医療機器認証番号:229AABZX00020000
全身用X線CT診断装置
販売名:ゾマトム go 医療機器認証番号:228AABZX00138000



