
みうら脳神経クリニック 第2回
患者数増加に伴い生じる運営上の諸課題に対処し
満足度の高い診療提供を追求

開業時からMRI装置とCT装置の両方を導入し、迅速な診断ができる検査体制を整えたみうら脳神経クリニックでは、順調に外来患者数が増えるにつれ、長引く待ち時間や検査スタッフの疲弊などの課題も出てきました。そうしたクリニック運営上のさまざまな課題に対し、経営者として実際にどのような工夫を重ねてきたか、院長の三浦正智先生にお話を伺いました。
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予約受診時の診療フローの効率化により
待ち時間を短縮し混雑状況を改善
2023年4月の開業当初は予約なし受診の患者さんでもスムーズにMRI検査を受けられていましたが、患者数の増加に伴って診察や検査の待ち時間が長引くようになってきました。そして翌年に入った頃からは、予約なし受診だと待ち時間が2時間を超したり、当日のMRI検査ができなかったりするケースも生じるなど、混雑状況がより深刻化してきました。開業時の理念(第1回参照)にのっとって、患者さん1人当たりの診察時間を十分に確保しながらも待ち時間を短縮し、可能なかぎり即日診断を行えるように検査も滞りなくこなすことが運営上の重要課題となっていました。
そこで対策として、予約を取った方についてはMRI検査の枠をあらかじめ確保しておき、診察の結果、必要と判断した場合は必ず即日、長く待ってもらうことなく検査実施できるようにしました。加えて、ウェブ予約を行ってもらった方は問診もウェブ上で事前記入できるしくみを導入しました。これらの工夫により、予約受診する患者さんを中心に来院後のフローが効率化し、全体として待ち時間の問題は随分解消されてきています。また、現在は特に混雑する土曜日の午前診療のみ、私と非常勤医師1人の2人体制で行っています。
技師の業務負担軽減に向けて増員を計画
装置の日常点検はオンラインツール活用で効率化
他方、外来患者数の増加に伴って生じたもう1つの大きな課題は、検査を実施する技師の業務負担の増大でした。当院ではMRI検査、CT検査、エコー検査に対応するため、開業時から診療放射線技師と臨床検査技師を1人ずつ置き、MRI検査は基本的に診療放射線技師の担当とするものの、必要に応じて臨床検査技師も対応できる体制で実施してきました。しかし、先述のとおり、最近では1日のMRI検査件数が平均20件を超えるようになっており、技師2人は日々、目に見えて疲労している状況です。そのため現在、診療放射線技師をもう1人追加採用すべく、募集を進めています。1日の検査件数には変動がありますが、少ない場合には看護師業務の補助など、検査業務以外にも適宜対応してもらうようにすることで、採算を取りながら検査業務の負担を分散できるのではないかと思います。
また、装置の日常点検などの検査関連業務については、メーカーの付帯サービスの活用による効率化を図っています。例えば、当院で導入したMRI装置とCT装置のメーカーであるSiemensHealthineersは、使用する複数の装置をオンラインで一元管理できる専用ポータルサイト「teamplayFleet」を無償提供しています。同サイトにログインすると、当院にあるMRI装置とCT装置の各機種に特化した日常点検項目があらかじめ設定されているので※、技師はタブレットを片手に装置をチェックし、該当する項目を順次入力していけば日常点検が完了します。このサービスを利用開始する前は、装置から離れて置かれたPC端末上に表計算ソフトを立ち上げた状態で、装置をチェックしに行っては戻って入力することを繰り返さざるをえませんでした。それと比べると、技師の手間は軽減されていると思います。
※ CT装置とMRI装置の日常点検については、厚生労働省の通知「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(2007年3月発出1))の2018年6月2)および2021年7月3)の改正によって、毎日の始業時および終業時の点検が義務付けられている。
1)平成19年3月30日付医政指発第0330001号・医政研発第0330018号通知
2)平成30年6月12日付医政地発0612第1号・医政経発0612第1号通知
3)令和3年7月8日付医政総発0708第1号・医政地発0708第1 号・医政経発0708第2号通知

開業当初に受託検査や脳ドックの実施体制を整備
現在は外来患者数増加に伴い
役割を縮小
開業前は、診療の設備や人員を整える以外に特別な集患戦略を練ったわけではありませんでしたが、MRI検査件数を確保する努力として、受託検査を増やそうと考え、近隣のクリニックにあいさつ回りして患者紹介を依頼しました。また、ホームページ上に依頼手順を説明し、検査予約や患者さんへの注意事項説明のために使う書類をダウンロードできるようにしました。その結果、整形外科クリニックから当初は1日に2、3件の検査を受託していましたが、外来患者数の増加に伴って受け入れる余裕が小さくなってきた影響もあり、現在は1日1件程度にとどまっています。他方、CT検査については耳鼻咽喉科クリニックなどから週1件程度、受託しています。頭部以外の部位について受託した検査の画像読影は、遠隔画像診断サービスを利用して行っています。
また、脳神経疾患専門クリニックが集患の目的でしばしば行う脳ドックは、当院でも開業時に導入しました。導入にあたり、頭部の画像検査はしてほしいものの、脳ドックでしばしばセットになっている血液検査などの検査項目は不要という方も多いのではないかと考え、独自の工夫として頭部MRIの撮影から結果説明までを短時間で行うメニューを設けました。また、地域住民を対象として運営されている共済事業の補助を受けられるようにもしました。ただ、受託検査と同様、外来患者数の増加と共にMRI検査件数が増えるにつれて予約件数が減少し、現在は週1件程度です。

患者さん・家族が求めるものを受け止め
思いに応える医療の提供が
満足度につながる
当院では開業以来、迅速な診断によって少しでも早く患者さんの不安を取り除けるよう検査体制を整え、来院患者数の増加に対応した待ち時間対策も行い、一貫して患者さんに満足してもらえる医療の提供を目指してきました。
日々の診療のなかでは、診察室に入ってくる患者さんやその家族が何を求めているのかは1人ひとり異なるので、それをしっかり受け止められるよう頭を働かせながら、慎重に話を聞くように心掛けています。例えば、患者さん本人であれば、今抱えている不安を解決したいのか、病気をしっかり治したいのか、認知症患者さんの家族であれば、望んでいるのは明確な診断がつくことなのか、それとも現状の症状が少しでも落ち着くことなのかなど、思いは人それぞれだと感じます。そうした思いを理解し、それに合わせた方針を提案することが大切だと考えています。
スタッフ採用についても、業務遂行能力が優れていること以上に、患者さんや家族の方に優しく接することができる人であることを重視して選んできました。実際、当院のスタッフによる人として温かみのある接し方が、円滑な診療を実現し、経営を軌道に乗せることにも大きな役割を果たしていると感じています。今後も、患者さんだけでなく家族の方にも受診後、満足して帰ってもらえることを第一として、診療・経営に工夫を凝らしていきたいと思います。
(2024年8月8日取材)
販売名:MAGNETOM センプラ 医療機器認証番号:229AABZX00020000
全身用X線CT診断装置
販売名:ゾマトム go 医療機器認証番号:228AABZX00138000

