
西岡内科在宅クリニック 第2回
簡便に高精細な画像が撮れるCT装置の導入で
プライマリ・ケアの質が向上

西岡内科在宅クリニックの西岡伸明先生は、開業以来目指してきたプライマリ・ケアの担い手としての役割をより一層果たすべく、コロナ禍の最中にあった2021年、CT装置を導入し、COVID-19をはじめ多様な疾患の患者さんの初期診療に活用してきました。操作が簡便で低線量にもかかわらず高画質という導入機種の特徴を生かし、診療の質と効率を高めてきたという西岡先生の具体的な取り組みについて、お話を伺いました。
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早期の鑑別診断の必要性を日々痛感し
開業2年半後にCT装置導入に踏み切る
開業後約2年半は、CT検査については10kmほど離れた基幹病院に委託していました。日々の診療のなかで鑑別診断に必要と考えた際に都度、検査依頼を行っていましたが、患者さんに同病院で検査を受けてきてもらって当院で結果を説明できるようになるまでには2、3日を要していました。当院がプライマリ・ケアの担い手として果たしたい役割を考えると(第1回参照)、本来なら治療まで対応できるはずの患者さんを、鑑別診断のためだけに病院に紹介しなければならない状況について、残念に感じていました。苦痛や症状を訴えている患者さんの治療開始が遅れてしまうことについても、申し訳ない思いがありました。
こうした思いが募った結果、2021年にCT装置の導入に踏み切りました。もともと導入前提で院内を設計していましたので、外来患者数が経営的にはある程度安心と言えるところまで伸び、なにより診療上の必要性を感じるシーンがいよいよ増えてきたことを受け、導入を決断しました。収益性について綿密なシミュレーションを行ったわけではありませんでしたが、たとえCT検査単独では赤字だったとしても他の診療でカバーできると考えました。なにより、当院で治せると思える患者さんを病院に送ることに終止符を打ちたいがゆえの判断でした。
CT検査の院内実施により
新型コロナ肺炎など
多様な疾患の早期診断・治療を実現
以降、院内でのCT検査実施によって迅速・的確に診断し、早期治療介入に結び付けられたケースを多く経験しています。特に導入当初はコロナ禍の最中であり、発熱外来を開設していた当院には近隣の都市圏からの方も含め、COVID-19を疑い受診先を探し求めた患者さんが多数来院していました。症状の重い方に対しすぐにCT検査を行い、肺炎の重症度評価によって抗ウイルス剤の治療開始や入院治療の必要があるかどうかを判断するうえで、導入した装置が大いに貢献しました。ほかにも、胸痛を訴えるものの単純X線検査では判断できず、CT検査で縦隔気腫と診断できたケースや、発熱外来に来た方の頭痛が単なる風邪の一症状とは思えず、CT検査を行ってみたところ脳出血が発見されたケースなどがありました。
現在、1日あたりのCT検査件数は4、5件程度です。検査後にCT画像は自分で読影してそのまま結果説明まで行っており、読影レポートが必要な場合には外部業者にオンラインで作成を依頼しています。
撮影はワンタッチで
低線量ながら高画質が特徴の
CT装置をフル活用し診療の質が向上
当院が導入したCT装置は、検査のセッティングが完了したらワンタッチで撮影を開始できる簡便さが特徴であり、装置選定の決め手の一つになりました。看護師がセッティングを終えた後、私が撮影開始のボタンを “ポチッ”と押すだけで撮影が開始され、画像作成まで一気にAIが自動で行ってくれます。当初は技師に行ってもらうことも想定していましたが、実際にはその必要はなく、当院の技師はエコー検査にほぼ専念してもらっています。また、セッティングにおいても難しい作業はなく、メーカーのトレーニングを受けた看護師全員が対応できる状態です。したがって、CT検査対応のためのスタッフの増員や配置変更、また院内動線の変更などは、特に行っていません。
加えて、低線量のため被ばくリスクが抑えられていることも、当院の患者さんには大変良い特徴と考えています。特に小児の患者さんも多いなか、例えば気胸で来院したお子さんの保護者の方に低線量であることをお伝えすると、やはり安心感を持ってもらえます。
このように非常に簡単な操作と低被ばくが特徴の装置ですが、画質についても全く問題を感じることはなく満足しています。勤務医時代に大きな病院で見てきたCT画像と比べても鮮明に感じますし、当院で撮影したCT画像を添付して地域中核病院に患者さんを紹介する際も、画質が問題になったことはありません。最近ではこのCT装置で脊椎などの3D画像も構築できることを知り、まだ実臨床で使用したことはないものの、そのリアルさに驚き感動していたくらいです。
なお、このような簡便性などを特徴とするCT装置があることについて、当初は全く知りませんでした。装置選定時に卸業者さんからSiemens Healthineersを紹介してもらい、その機能に驚くとともに、担当者の親身な対応姿勢が大変印象に残りました。そのお人柄から、導入後のアフターサポートも丁寧に行ってくださると期待できたことも、選定の決め手でした。実際にこれまで、何かトラブル等あれば迅速に対応いただいており、満足しています。
かかりつけ医として
さらなる地域貢献を果たすため
診療体制拡充を目指したい
私が1人の開業医として、また当院の院長として大切にしてきたことは、地域社会に医療を通じて貢献することであり、それが自分自身の生きている意味であるとも思っています。より一層の貢献のために力を尽くしたいという思いがありますが、それには診療体制の拡充が不可欠だと考えています。
訪問診療については、近隣の医療機関から在宅療養希望の患者さんの紹介をしばしば受けるのですが、現状では対応できるのが私1人なので断らざるを得ないことが多く、受け入れのキャパシティ拡充は当院の重要課題です。加えて、救急病院の救急外来を時間外受診する患者さんのうち、軽症の方の受け皿に当院がなれるよう、診療に対応する時間帯も拡大していきたいという希望を持っています。
これらを実現するには、当院がプライマリ・ケア施設として目指す医療に共感し、ともに取り組んでくれる医師を見つけ、診療体制を整えることが必要になると思います。それに向け、クリニック経営者としてのマネジメントスキルを向上させることも私自身の当面の課題だととらえています。


