外傷領域におけるRetina 3D (術中3D) の有用性QOL を向上させるこれからの整形外科手術について
岡山医療センター様導入事例

独立行政法人国立病院機構岡山医療センターは、急性期高度医療を診療の軸とする地域の中核病院です。「今、あなたに、信頼される病院」を理念に掲げ、政策医療、移植医療、運動器医療、難病医療など、総合的で高度な急性期医療を提供しています。同センターの整形外科の手術件数は2000件以上で最先端手術数は全国トップレベルであり、国内外から手術の見学希望者を受け入れています。同センターは、2005年にSiemens Healthineers初の3D撮影を可能にしたモバイルCアーム ARCADIS Orbic 3Dを導入、外傷領域におけるIntra-Operative 3D(術中3D撮影)の礎を築きました。その後、ARCADIS Orbic 3D Generation2に、そして今回Cios Spinへと更新されました。進化を続ける術中3D撮影について、整形外科・リハビリテーション科 医長 塩田 直史 先生にお話をうかがいました。

岡山医療センター様

|2020-03-27
整形外科・リハビリテーション科 塩田 直史 医長

当院においては術中にCT画像を使用するのは、 今や "普通のこと" になっていると思います。CTの設置台数が急激に伸びている現在、特に若い 医師は一般撮影の画像よりもCT画像の方が見なれていて、CT画像を解析する能力にも長けています。手術のときだけ一般撮影と同じ2Dの透視画像で手術を行わなければならないというのは、すでに現実的とは言えなくなっています。術中にモバイルCアームを用いて3D画像を取得できることには、非常にメリットがあると思います。

3D撮影が特に有用な症例のひとつに、関節内 骨折があります。関節内骨折に関しては、従来の透視や術後のレントゲン撮影では、一見問題がなさそうに見えても見落としが存在すると多くの 論文で発表されています。実際、Retina 3D撮影機能を持たないCアームで手術をしていた頃は、 術後にCT撮影を行い、その結果に応じて再手術 をしていたケースもありましたそれがRetina 3Dになり、見落としや再手術のリスクが劇的に低減されました

今はあぶないと思ったときは迷わずRetina 3D撮影を行い、万全の体制で手術をしています。またCios Spinでは、MPR画像だけでなくVRT表示ができるようになり、視覚的にもわかりやすくなりました。私たちは1mm単位の精度で手術を しています。1mmにまでこだわる手術は、3D画像なしには考えられません。他には、骨盤骨折もRetina3Dがないと手術ができないといっても過言ではありません。3D画像が取得できない手術には制約が多く、もはや現実的ではないと思っています。

装置全体の重量は、以前の装置と比較して50kgほど重くなっているとうかがいましたが、C アームの取り回しはむしろよくなりました。フリースペースが広くなったおかげで、ポジショ ニングが容易になっています。電動でCアームを動かせるので、女性の看護師でも楽にポジショ ニングができるととても好評です。特に電動ポジションメモリ機能が便利ですね。2種類の角度を登録できますので、正面と側面で設定しておけば、アームを操作する際にメモリの1と2の繰り返しで正面側面へとCアームを移動できます。ボタンを押し続けるだけで設定した角度まで自動的に Cアームが動きますので大変便利です。女性が操作すると、Cアームを正面から側面へ移動させるのも一苦労ですが、特に転子部骨折の際などに重宝しています。

フラットディテクタ(以下 FD)が大きくなったので股関節軸位のポジショニングがとりにくい ように思われがちですが、FDとX線管のフリースペースが広くなっているので牽引台に当たることもなく楽にポジショニングがとれるようになり ました。よほど身体が拘縮している患者さんで ない限り、ほぼすべての症例で使うことができ ます。そもそも拘縮している患者さんのポジショニングは、どんなCアームを使っても難しいです。

当院にもかなり狭い手術室がありますが、ベッドを斜めに配置するなどの工夫をして、狭い部屋でも問題なく使用できています。装置の外観が大きく見えてしまうため取り回しに不安を持つ人もいるかもしれませんが、以前の装置と比較 ても設置の自由度は高くなっています。Cios Spinの他にも、小型で軽量のCアームを使用していますが、看護師が最初に選ぶのは必ずCios Spinです。重量が軽ければ取り回しも楽とは限らないということがよくわかりました。

透視画像に関しては、以前のモデルと比較して劇的に向上されています。イメージインテンシファイア(以下I.I.)からFDへと変わりダイナミックレンジが広くなり、白と黒の差がより精細に描出できるようになりました。微妙なコントラストの差がしっかり描出される ので手術の際、とても役に立っています。どこの メーカーも "画像がきれいです" とPRしますが、Siemens Healthineersは、細かい調整まで対応してくれて私たち日本人の医師が求める画像にカスタマイズしてくれています。"見たいところ" を描出できるように画像をしっかりと作り込めるのは、技術がすぐれているだけでなく技術者が現場に精通していているからだと感じます。きれいな 画像を瞬時に描出できるということには、それ以上の意味、メリットがあります。たとえば、何度も透視で確認する必要がなくなるので、被ばく低減 にも貢献しているわけです。

視野サイズが20cm程度の円形から30cmの 矩形に変わり、関心領域が一度で透視できるうえ拡大も3段階調整できます。しかもI.I.のときのような歪みがないので、より正確に手術ができるようになったと感じています。画面の端でも歪みがありませんので、ポジショニングにおけるフレキシビリティも向上していると思います。

Retina 3Dは、インプラントが入っている場合の骨の描出能がかなり高いです。タンタルを使用 したインプラントはアーチファクトが特に多いのですが、インプラントがたくさん入った状態の骨盤骨折で256列のCTでも描出が困難だった箇所を、Retina3Dは見事に描出していたので感動してしまいました。放射線技師も一緒に画像を見ましたが、みな驚いていましたね。長い間待ったかいがありました。

ここ数年でFDタイプのモバイルCアームが 一気に広まっていると聞きました。これまで、一般 撮影やその他のモダリティのFD化が進んでいくなかで、モバイルCアームだけが遅れを取っていましたが、ようやくFD化されました。外科医にとってのより良い手術環境が整いつつあると感じ ています。

脆弱性骨盤輪骨折の手術はRetina3Dがないと取り組めない手術と言ってよいでしょう。私自身、術中3D撮影とナビゲーションを用いた脆弱性骨盤輪骨折症例の論文を数多く書いています。当院へ赴任してきたばかりの若い医師は、最初のうちはナビゲーションを持っていないと手術はできないし、手術を行う必要もなく適用症例も多くはないと感じていると思います。しかし、脆弱性骨盤輪骨折の手術適用症例が潜在していることを知り、手術をすることで患者さんにとって多くのメリットがあり実際に良くなっていく様子を見ていくうちに手術の重要性を理解してくれます。今までは軽度な脆弱性骨盤輪骨折に対する治療は保存治療がメインでした。ギブスもでき ない部位なので1ヶ月近い入院が必要になるケースも少なくありません。歩けるようになるまでには最低でも1か月半はかかっていました。 退院後も安静に休養を取ってもらうしかなく、1ヶ月、2か月と経過しても、痛みを訴え再度来院される患者さんもいました。運よく半年くらいで骨がついた場合は「ラッキーだったね」という治療法です。

しかし、私たちが行っているRetina 3Dとナビ ゲーションを用いてスクリューを挿入する手術ならば、手術後1日で全荷重で立てるようになり術後1週間で約半数の患者さんが伺を使えば歩けるようにまで回復し、2週間もすればほとんどの方が元気に帰宅できます。従来は、軽度の骨折なら保存治療でかまわないという考え方でしたが、これからは患者さんのQOLを考え適応の患者さんには手術をするべきだと思います。適切な手術をすることで早期回復と予後改善につながり、看護にあたる家族の負担も軽減できる と考えています。病院経営の観点からも初めから手術をしないという選択肢を選ぶ必要はないと思いますね。

最新の医療は多大なメリットをもたらします。そのためにはRetina 3D機能は必須です。Cios Spinは非常に役立っています。当センターには海外からも多くの医師が症例の見学に来られ ます。ここ日本から海外へ、最新の医療を広めていければと思います。

岡山医療センター外観

所在地:岡山県岡山市北区田益1711-1
病床数:609床
主なご導入装置: Cios Spin, ARCADIS Avantic, SIREMOBIL Compact L×2, 他

お話しをおうかがいした先生
整形外科・リハビリテーション科
塩田 直史 先生


cios spin
FD搭載モバイルCアームイメージングシステムCios Spin