フラットディテクタ搭載外科用CアームCios Alphaがもたらす新しい手術環境熊本赤十字病院様導入事例

熊本赤十字病院様

|2015-11-11

熊本赤十字病院は、1944年(昭和19年)の開設以来、時代の要請に応える医療活動を積極的に展開してきました。その後も、熊本における急性期医療の中核病院として先駆的な医療を展開し、1975年からは24時間・365日すべての領域の救急疾患に対応しています。また同院は、1980年というきわめて早い時期に熊本県で最初の救命センターの指定を受け「断らない救急医療の実践」を実現しています。さらに2012年1月にはドクターヘリの基地病院に指定され、同年5月には設備、機能ともにレベルアップした総合救命救急センター・こども医療センターが新築されました。
このたび同院は、手術室に最新型フラットディテクタを搭載した外科用イメージング装置Cios Alphaを導入し、新しくなった環境で手術が行われています。Cios Alpha導入の経緯と実際に使用されたご感想について、心臓血管外科の渡邉俊明先生にお話をうかがいました。

渡邉 俊明 先生

Cios Alphaを導入する前は、イメージインテンシファイアタイプの移動型Cアームでステントグラフト内挿術をしていました。7年半前に導入したのですが、当時としては最新の装置で、移動型の装置もここまで進化したのかと満足して使用していました。しかし、難しい症例では透視やDSAの画質が不十分なことがあり、若干のストレスを感じながら手技をしていたのも事実です。また、X線管装置がオーバーヒートしてしまうリスクもあるので、透視時間が長くなりそうな手技ではフットスイッチを頻繁に切るように意識しながら手技を行っていました。

大きなトラブルもなく以前のCアームを7年半使用していましたが、そろそろ更新のタイミングと思いHybrid ORの検討を始めました。実際にHybrid ORを使用している他施設での情報を収集し、当院での運用にあてはめて考えてみたところ、多くの課題が浮かび上がってきました。据置型の血管撮影装置を設置するためには、手術室を一部屋、専用の部屋として確保する必要がありました。さらに、部屋の構造の問題、改築している期間は手術を止める必要が出てくること、専属で機器の操作を行うスタッフが必要になることなど、マンパワーの問題もあることがわかりました。初期投資の費用やそれらをペイできるようなバランスが見出せず困っていたときに、絶妙なタイミングでCios Alphaの販売開始というアナウンスが飛び込んできたのです。

Cios Alpha に関して詳しい話を聞いてみると、フラットディテクタなのでひずみがなく視野が広くなっていること、X線管装置には水冷の冷却装置アクティブクーリングが付随して、さらに長時間の透視や撮影を行えるようになっているとのことでした。またCアームに液晶パネルが搭載され、電動でCアームが動かせるようになり、より据置型の血管撮影装置に近いものに進化しているとのことでした。これならば、イメージインテンシファイアタイプの装置で感じていたストレスもある程度解消できるのではないかと考え、据置型にこだわらず導入に踏み切りました。

ひずみがないので周辺でも描出能が高く、DSA撮影時は上から下まで血流の流れがとても鮮明に見えます。見えにくいとされていたデバイスもしっかり見えるので、安心して使うことができます。手術前にはどの角度で血管の分岐が見えやすいかしっかりプランニングするわけですが、角度を深く振ったような場合でも透視がとてもクリアに見えるようになりました。
新しいX線管冷却装置に付随した、アクティブクーリングの威力はとても大きいと感じています。以前はこまめにフットスイッチを切るように注意しながら手技を行っていましたが、X線管装置の温度上昇がほとんどないため、ストレスなく手術を行うことができます。手技の中断というリスクが少なくなったので、安心して手術を行うことができています。

実際の現場では、電動のCアーム移動がとても重宝しています。以前は手動でメモリを見ながら角度の設定を行っていたため、5°~10° 刻みでの角度付けしかできませんでした。それ以下の角度になるとほとんど感覚で行っていたのです。しかし電動になったことで、手元の液晶パネルにCRA、CAU、LAO、RAOの角度が表示されますので1° 刻みで正確に角度設定ができるようになりました。術前のプランニングにより近い状態で角度設定ができるので、手術の精度が上がったと思います。しかも液晶パネルの搭載により、手元で角度などの情報を見ることができます。放射線技師からも、操作性が向上し手技中のストレスが低減したと聞いています。
さらに、移動型という面でのメリットも感じています。当院にはヘリポートもあり、救急外来に力を入れていますので、外傷で骨折を伴いかつ血管の手術も必要になるような症例も受け入れています。Hybrid ORではこれらの手技を行うことは難しいのですが、Cios Alpha は移動型Cアームですから、整形外科症例と血管外科症例の両方に対応することができます。整形外科の先生方も、操作性や画質に関して高く評価していますね。Hybrid ORの場合、たとえば患者搬送時に他の手術で装置を使用していたら、このような救急対応は難しかっただろうと思います。移動型であればこそ、部屋を選ばず柔軟に手術をこなすことができています。

Cios Alpha は、Hybrid ORに設置される血管撮影装置と比べて機能やソフトウェアの面でまだかなわない部分もありますが、必要とされるほとんどの要望を満たす素晴らしい装置だと思います。今後、ソフトウェアなどが新しくなり、さらに進化していくことを望んでいます。他のモダリティとの画像連携や3Dロードマップなど、新しい機能が追加されていくとうれしいですね。

熊本赤十字病院の皆様
熊本赤十字病院 手術室スタッフの皆さま

所在地:熊本県熊本市東区長嶺南2‐1‐1
病床数:490床
主な導入装置:Cios Alpha, ARCADIS Avantic, ARCADIS Orbic(2台), SIREMOBIL Compact, Artic Q BA Twin, MAGNETOM Skyra, ACUSON S1000, ACUSON X300

お話しをおうかがいした先生
心臓血管外科:渡邉 俊明 先生


Cios Alpha
FD搭載モバイルCアームイメージングシステムCios Alpha