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石黒 剛 先生

2019年に愛知県豊田市で開院した、いしぐろ在宅診療所豊田(以下、豊田院)から分院する形で、2021年、隣接する岡崎市にいしぐろ在宅診療所岡崎が開院しました。在宅医療について、医療の選択肢として必要とする人が確実に受けられるものにしたいと話す院長の石黒剛先生に、同院が地域の中で在宅クリニックとしてどのような役割を果たすことを目指しているのか、お話を伺いました。

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いしぐろ在宅診療所のホームページ(https://ishigurozaitaku.com/)では、診療所の概要のほか、在宅医療をより身近な選択肢としていくための様々な取り組みを紹介している

 患者さん本人やその家族が当院のことを調べて直接、在宅診療を依頼してくるケースはまれです。在宅医療という選択肢がまだ地域の方に広く認知されているわけではないということだと思います。ただ、私の意見としては、当事者に知ってもらうことよりも、支援者の側、つまり地域の医療・介護関係者に知ってもらうことの方が重要です。全ての患者さんが在宅医療を必要とするわけではないなか、必要とする人に接する医療・介護関係者さえ在宅医療をしっかり認知してくれていれば、その人には在宅医療という選択肢が確実に届きます。支援者にすらたどり着けない生活困難者などもいることは社会的な課題ですが、現状、岡崎市内の地域中核病院、および介護サービス関連の事業所と当院との連携は良好に機能しており、月に計30人ほどの新規患者さんを紹介いただいています。
 また、こうした連携関係を維持するため、紹介元への配慮は大切にしてきました。例えば、病院に紹介状を出す際は丁寧な記載を心掛けていますし、病院から逆紹介を受けた場合には、自宅に戻った患者さんと当院スタッフで写真を撮り、無事に家に帰れたという喜びや安堵を込めて、紹介状の返信とともに病院に送っています。このような気持ちを込めたやり取りを継続することが、紹介元との密な関係構築の鍵だと考えています。

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 当院では、終末期患者さんの自宅での看取りを重要なミッションに位置づけています。終末期患者さんのなかには、病院での入院治療を100としたときに、60の医療で十分と希望しているにもかかわらずADLが低下していて通院治療の選択肢が選べず、入院せざるを得ないという方がいます。そうした患者さんに対し、在宅看取りという選択肢を設けることで希望を叶えてあげられるうえ、病院の現場にかかる過剰な負担の削減、ひいては医療資源の効率的な利用にもつながっていくと考えています。そうした意味で、在宅看取りは、在宅医療が担っている社会的責務の一つだと私は思っています。加えて、患者さんの人生の最期に関わることができる看取りはシンプルに心を引くものでもあります。その方の生き方や人生観、家族や周囲との関わり方が垣間見えることで、1人の人間として素敵な方だ、看取りに携われて良かったと思えることもありますし、自分の今後の人生を考える手掛かりになると感じています。
 また、病院での看取りと比べると、在宅看取りはあらかじめ死期のタイミングを予測して家族に説明できるので、最期のお別れの場も落ち着いた状況で設けられることが多いです。残された家族も大変な苦労をしながら看取りをやり切ったことに納得していて、私たちにも心から感謝してくれている、と感じることが多く、当院はそうした方々の支えとなる存在でありたい、と思っています。

(2024年10月31日取材)

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