ロボットが医師を助け、医療に革命をもたらすという夢は、決して新しいものではありません。むしろその歴史は古く、これまでにカメ型ロボット、からくり人形、おしゃべりをするアンドロイドなどが誕生してきました。
2,000年前から私たち人間は、自分たちと同じ姿をした機械を作りたいと考えてきました。長い間、からくり人形が、当時の技術者たちに作ることのできる最高のものでした。人型のロボットが登場したのは1970年で、それ以前はSFの世界のものでしかありませんでした。
最初のロボットは産業用に作られたもので、可動式のアームを使って、人間には疲れる作業や、危険、あるいは不可能だったりする作業を担ってきました。最初の手術用ロボットが登場したのは1990年代末のこと。このロボットは、医師に代わるものではなく、医師を補助するものでした。
人工知能のおかげで、より洗練されたアプリケーションが次々と生まれていますが、人型ロボットがあまりにもリアルだと、人は拒否感や嫌悪感を抱いてしまいます(これは「不気味の谷現象」と呼ばれています)。どうやら私たちの技術的な「分身」は、あまりリアルすぎてもいけないようです。
解剖学の授業で活躍?
「Lumena」は体の中が透けて見える、しゃべるロボットで、1950年以降、医学生が女性の体について解剖学を学ぶのに役立っていました。静脈や神経、臓器などを詳細に表現するために、11kmもの長さのケーブルが使用されていました。
ロボットも、死を免れない?
「Sim One」は、麻酔医を養成するために作られた最初のアンドロイドロボットです。1967年に開発されたこのロボットは、呼吸ができ、心臓が鼓動し、まばたきをし、口を開け、薬に反応しました。そしてなんとこのロボットは、医師がミスをすると死んでしまうのです。
著者について
Hildegard Kaulen, PhD
分子生物学者。ロックフェラー大学(ニューヨーク)、マサチューセッツ総合病院(ボストン)を経て、現在はフリーランスの科学ジャーナリストとして新聞や科学雑誌に寄稿している