
広角トモシンセシスの短時間撮影を実現したMAMMOMAT B.brilliantを診療・検診双方に活かす
秋田県内で唯一の大学病院である秋田大学医学部附属病院は、遺伝性乳癌診療や妊孕性温存治療など、専門性の高い乳癌診療を担っており、2025年2月、広角・高速トモシンセシスに対応したマンモグラフィ装置MAMMOMAT B.brilliantを導入しました。同装置の画質や各種性能を活用し、どのように乳癌診療の質向上につなげているか、乳腺・内分泌外科の寺田かおり先生にお話を伺いました。
MAMMOMAT B.brilliantのトモシンセシス撮影では、高濃度乳房内に位置する微小病変も鮮明に描出される印象です。石灰化も分布を含め、容易に評価できると感じます。このようなトモシンセシス画像の良好な画質が、導入の決め手の一つになりました。

秋田県は全国の中でもとりわけ急速に高齢化が進行し ていますが、そうした状況下でも当院の乳腺・内分泌外科 は、比較的若年の患者の受診もあります。というのも、大学病院として、高度に専門的な乳癌診療を地域内で集約的に担っている当科では、遺伝性乳癌症例のほか、妊孕性温存を目指した治療や乳房再建術を希望する方を多く受け入れているためです。受診経緯としては、他施設で乳癌と診断された方の紹介や、乳がん検診で要精査判定となっ た方の受診が中心です。
受診患者に対し、当院では、乳房検査を中心とした診断フローを当科が主体となって進めています。問診、視触診に続けて超音波検査までを当科の乳腺外科医が行った 後、マンモグラフィの撮影を中央放射線部の診療放射線 技師に依頼した上で、読影は乳腺外科医が行っています。 また、CT検査やMRI検査といった専門性の高い画像検査や、確定診断としてステレオガイド下吸引式組織生検を 行っているほか、遺伝性乳癌に対するMRIガイド下生検 も実施しています。

2025年2月に、広角・高速・高画質なトモシンセシスを 搭載したマンモグラフィ装置MAMMOMAT B.brilliant を導入しました。当科では先述のとおり、若年患者の受診が 比較的多いため、高濃度乳房を持つ方が多く、従来の2D マンモグラフィ画像では病変を疑う部位の評価がしばしば 難しいと感じていました。MAMMOMAT B.brilliantのト モシンセシス撮影では、振り角50°を約5秒※でX線管が 移動しながらさまざまな角度で取得した投影画像からトモ シンセシスのスライス画像を再構成するため、高濃度乳房 内に位置する微小病変も鮮明に描出される印象です。FAD は画像のコントラストによって比較的容易に所見として認識でき、腫瘤も形状や微細鋸歯状・微細分葉状・スピキュラ といった辺縁を明瞭に視認して評価できると思います。石灰化も分布を含め、容易に評価できると感じます。このようなトモシンセシス画像の良好な画質が、MAMMOMAT B.brilliant導入の決め手の一つになりました。
要精査症例に対して病変の見逃しがあってはならない ですし、乳癌診療の高次医療機関としての役割を担う当 科では、発見した病変に対する確定診断と治療方針の決定までを確実に行うことも求められます。そのため、当科でマンモグラフィを実施する際は、2Dとトモシンセシス をMLOとCCの2方向で撮影することをルーチンにしています。また、トモシンセシスは乳癌手術後の患者のフォ ローアップにも有用と感じており、特に乳房形状の左右差 が現れやすい乳房部分切除後の方を対象に確実に病変検出するには重要と考えています。
※平均的な乳房の場合
MAMMOMAT B.brilliantに対し、被検者からは「痛みが少なかった」というお声を多数いただいており、これは圧迫板がしなることが影響していると思います。従来の2D撮影に加えて初めてトモシンセシス撮影を受けた被検者からも、苦痛や負担が増したといったお声は聞かれません。より高性能の装置できちんと調べてもらえることへの満足感があるように感じますが、単に装置の性能が信頼されているというだけではないと思います。何よりも撮影を担当する技師が、被検者と上手にコミュニケーションを取りながら、より良い検査を行おうとしている日々の努力の賜物と感じています。

トモシンセシス画像は、乳癌診療におけるチーム医療を活性化させ、その質を向上させる上でも効果的に寄与していると感じます。がん診療連携拠点病院である当院ではキャンサーボードを設置しており、乳癌に関しては確定診断後の術前、さらに術後の病理検査結果を受けて今後の治療方針を決定するタイミングなどに、多職種で検討するカンファレンスを実施しています。当科の乳腺外科医のほか、中央放射線部の放射線診療技師、放射線診断科と放射線治療科の医師、病理医、化学療法部の腫瘍内科医などが集まり、各症例についてディスカッションしています。その中で、切除病変の術中所見や病理所見を、術前の各種画像所見と照合する振り返りも行っており、そこでトモシンセシス画像も含めた検証が行えることで、各検査結果の情報を総合的に確認できている実感があります。トモシンセシス画像上でとらえた所見がMRI画像上ではどのように見え、術後病理所見とどう対応しているか、あるいは病理画像でとらえた所見が術前のトモシンセシス画像ではどこまでとらえられていたか、といった精緻な検証を行っていきます。こうした検証を通じ、多職種が共通認識を持って確定診断と治療方針決定に到達できるチーム医療を実践できていると思います。
なお、2024年度診療報酬改定で乳房トモシンセシス加算が新設されて以降、当科の乳腺外科医の間では、検査の質向上のためにトモシンセシス撮影を積極的に行っていこうというモチベーションが向上しています。きちんと評価される形になったことで、診断上不要な検査ではなく患者の予後向上につながる有意義な検査であるということを、より確信して実施できるようになっていると感じています。
近年、乳房検査では超音波検査とマンモグラフィの総合判定が重視されるようになってきています。そうした中、両検査結果を病変位置情報で連携させることが、他の画像検査結果と合わせて総合的な判断を下したり、正確かつ低侵襲な生検を行ったりする上で重要になってくると感じています。それを可能にする機能が搭載された読影ビューアソフトも登場しており、マンモグラフィ装置と併せてトータルでさらに利便性が向上した乳房検査の運用が可能になるとよいと思います。
また、昨今、当院のような大学病院に遺伝性乳癌の薬物療法など、高度で専門的な乳癌診療が集約されるものの、治療終了後は連携する地域の医療機関に患者が分散して 戻っていく、という医療提供体制が構築されてきています。 そうした中、MAMMOMAT B.brilliantのようなマンモ グラフィ装置は、高次医療機関での精査や治療方針決定に威力を発揮するだけでなく、地域の医療機関での乳房検査にも負担が少ない検査として活用可能と考えられます。このように診療機能の異なる医療機関も含め、同じ装置が幅広く運用される状況になれば、地域の乳癌診療全体の質向上にもつながっていく可能性があると思います。
また、トモシンセシスはRawデータからスライス画像だけでなく合成2D画像も再構成できます。合成2D画像を用いて診断することで被ばく低減が実現しますが、本邦では、現状、合成2Dの運用は検討課題です。将来的に運 用が実現すれば、必要十分な診断ツールとして活用され る可能性を感じています。診断的意義についての研究が今後進み、その位置づけが明確になることを期待したいと思います。

広角トモシンセシスの短時間撮影を実現したMAMMOMAT B.brilliantを診療・検診双方に活かす

秋田大学医学部附属病院 様
- 所在地:秋田県秋田市広面字蓮沼44-2
- お話をお伺いした先生
乳腺・内分泌外科 :寺田かおり先生/講師

MAMMOMAT B.brilliant
ブレストケアを次のステージへ導く、新たな高速トモシンセシス「PlatinumTomo」搭載。優れた平面分解能、最高の深度分解能1 とカスタマイズ可能な画像処理、被検者と撮影者にフォーカスした新しいシステム設計。

高速・50° 広角 - プラチナトモ
50° 広角トモシンセシスのメリットはそのままに、トモシンセシスの短時間撮影を実現。PlatinumTomo は迅速な診断に繋がる高精細画像を提供し、ブレストケアにおける新たなトモシンセシスです。