宝持会 池田病院局所から広範囲まで自由自在に撮像。歪みのない高分解能画像で、診断能が大きく向上。

取材日:|2017-12-08

池田病院
左から久後 技師、西尾 先生、中村 技師長

[取材にご協力いただいた先生方]
放射線科 西尾 博 先生
放射線科 中村 伸次郎 技師長
放射線科 久後 直希 技師

Avantofit バージョンアップ:2017 年2 月

導入後11 年目となり新たな技術の導入が難しくなるため、装置の更新を検討しはじめました。3Tへの更新案もありましたが、広範囲の撮像がしにくいことや歪みなどの問題も無視できないため、1台の運用であればと1.5T 装置に決定しました。工事期間は検査室の改修を含め、3 週間以内の短期間で終わらせることができたので、費用を抑えて最新の装置へ、さらに短工期というメリットは大きかったです。最近発売されている装置は広いFOVの撮像が難しくなってるので、広範囲の撮像が高画質で安定して得られるAvantofit はまさにお宝の装置だと思います。


  • 東大阪地区の中規模の施設で、1日のMRI検査は15-16人程度。これに対し予約枠は8時~19時で、オープン枠だけでも17枠と余裕を持たせ、質の高い検査内容になるよう努めている。
  • fitバージョンアップにより大幅な高画質化が図られたとともに、非造影MRAであるQISS,全身DWI,StarVIBE、SEMACで金属アーチファクトの低減、静音化などの新たな技術が導入され、日々の検査に役立っている。
  • 透析の方が多く、下肢MRAは造影剤を使い撮像していたが、QISSの非造影MRAにより短時間で高画質の画像が得られるようになった。
  • 全身DWIのポジショニングが簡便になり短時間で安定した画像が得られるため、別枠の検査でなく通常の検査と同時に行うことが可能になった。
  • 腹部検査は呼吸トリガー併用の撮像により、ダイナミック造影検査以外では息止めをすることなく全ての撮像が自由呼吸下で可能となり、高画質の画像が得られている。
  • 広いFOVの撮像ができるため、検査依頼の部位だけでなく広範囲を短時間で追加することが可能。HASTEやPD-STIR法を1プロトコル1分以内で追加することで、想定外所見の拾い上げに役立っている。
バージョンアップ前後 9か月間の検査状況の変化
バージョンアップ前後 9か月間の検査状況の変化

56 歳男性。
慢性腎不全で透析中。動脈硬化でABI 低値が指摘され下肢動脈MRAを施行。右大腿部で浅大腿動脈に著名な不整狭窄を認め、深大腿動脈からの側副血行路を介し膝窩動脈が描出。
右下腿部では三分岐部にも強い狭窄を認める。2か所の狭窄を認めるも足首まで造影剤を使うことなく明瞭に描出可能であった。左下腿部では前脛骨動脈と腓骨動脈に狭窄を認める。
造影MRAは撮像タイミングにとても気を遣う検査だが、QISSはTim Planning 機能を使いポジショニングが簡便で、撮り直しも負担にならず行える。

  • QISS
  • Tim Planning Suite

 

右浅大腿動脈不整狭窄、右下腿部狭窄

66 歳男性。
直腸がん術前の拡がり診断目的でMRI 施行。StarVIBE 法で造影MRIを施行し、3 方向の画像を得た。ギャップのない3 mm 厚の細かな画像がいずれも1 分台の短時間で得られた。腸管蠕動や血流アーチファクトのほとんどない画像で、周囲浸潤やリンパ節腫大の評価が容易に可能であった。

  • FREEZEit - StarVIBE

 

StarVIBE<br />matrix 320, SL 3 mm<br />TR/TE: 3.4/1.7 ms, FA 10&deg;<br />TA 1:30 min

88 歳男性。
腰痛で整形外科受診し、腹部単純CTで変形を伴った前立腺肥大が指摘され、MRI 検査となる。前立腺左辺縁域より精嚢に浸潤する前立腺がんを認め、T2WIで腫瘍部は低信号を呈し、左後方に浸潤を伴っている。同時に施行した全身DWIにて、前立腺および全身骨に骨転移と考えられる強い信号上昇を認めた。骨転移はほとんどが骨梁間型骨転移で、CTでの骨転移の指摘は困難であった。
 

  • Wholebody Diffusion
  • Quiet Suite
Wholebody DWI b800<br />matrix 256I, SL 5 mm (tra)<br />TR/TE/TI: 4860/50/180 ms<br />TA 2:26 min x 4 steps

53 歳女性。
徐々に増大する両下腿部腫瘍で両下腿部のMRI 検査を施行。両下腿部の筋繊維束に沿って、PD_STIRで高信号、DWIで強い信号上昇を呈し、筋サルコイドーシスと考えられる所見。続いて施行した全身DWIで全身の他の筋肉にも同様の病変を多数認めた。

  • Wholebody Diffusion
clinincal image

87 歳女性。
PD_STIR 法の冠状断像。SEMACなしでは人工関節周囲に強い歪みが生じているが、SEMACを併用することにより人工関節部は無信号となるものの、周囲に歪みによるアーチファクトはほとんど認めない。
 

  • Advanced WARP(SEMAC)

 

PD_STIR SEMAC(-)<br />matrix 320, SL 5 mm<br />TR/TE/TI: 6380/12/160 ms

70 才男性。
全体的に腰椎症を認める。SEMACを併用することにより、固定器具からのアーチファクトは大幅に軽減され、評価し易い画像となった。

  • Advanced WARP(SEMAC)
腰椎後方固定術後(PLIF)