High-resolution, Anatomically-accurate Diffu-sion-weighted Imaging of Orbital and Sinonasal Lesions with RESOLVERESOLVEによる眼窩および副鼻腔病変の解剖学的に正確な高分解能拡散強調画像

MAGNETOM Flash 翻訳版 Vol.15より|2018/08/01

Yan Sha1; Hailin Wan1; Menglong Zhao1; Feng Wang1; Ping Lu1; Fang Zhang1; Wen Lin Tang2; Yushu Cheng1
1 Department of Radiology, Eye, Ear, Nose and Throat Hospital, Fudan University, Shanghai, China
2 Siemens Healthineers, MR Scientific Marketing, Shanghai, China

拡散強調画像は脳、体幹部、乳腺、骨盤部など多くの解剖学的領域における臨床ルーチンイメージングの基本シーケンスである〔1, 2〕。従来の拡散強調画像に用いられるのはシングルショット・エコープラナーイメージング(ss-EPI)シーケンスで、モーション由来の位相誤差に強く、撮像時間が比較的短いというのが主な長所である。しかし、このシーケンスは空間分解能の低下や、特定の領域(生体組織と空気の境界など)の磁化率に起因する幾何学的歪みという短所も併せ持つ。そのため眼、耳、鼻、喉では高画質の拡散強調画像が困難になる。RESOLVE(REadout Segmentation Of Long Variable Echo trains)〔3, 4〕はreadout-segmented EPIによるサンプリング方式のマルチショット拡散強調シーケンスである。GRAPPA〔5〕に 加えてモーション由来の位相誤差に対する2D非線形補正を採用している。EPIエコースペーシングが大幅に短縮されることにより(各ショットでリードアウト方向のRawデータポイントの1部しか収集しない)、RESOLVEは磁化率やボケ(blurring)の問題を大幅に軽減して高分解能の拡散強調画像を得ることができる。

本稿では、副鼻腔病変および眼病変の拡散強調画像におけるRESOLVEの臨床的有効性を確認した当施設の最近の研究4件を紹介するとともに、これらの病変の検出および性状評価におけるRESOLVEの臨床的有用性について述べる。

副鼻腔病変の撮像におけるRESOLVE
副鼻腔病変の撮像におけるRESOLVEの最初の評価として、副鼻腔病変を有する患者32例を対象に従来のss-EPIと画質を総合的に比較した(各シーケンスの撮像パラメータは表1を参照)〔6〕。 頭頸部を専門とする放射線科医2名が画質を定性的に評価し、意見が一致しない場合は両者の合意により評価を決定した。さらに、幾何学的歪みを定量的に評価した。
RESOLVE ADCマップはss-EPIに比べて画質、病変の視認性、画像の歪みの評価成績が有意に高かった(表2および図1)。また 、5例においてRESOLVEはss-EPIより鮮明に中耳炎を描出できることが示された(例えば、乳突蜂巣の浸出液により判明)。さらに、RESOLVEでは眼窩、頭蓋底、上頸部における歪み、ゴースト、blurringが大幅に減少し、眼球、視神経、外眼筋、涙腺などの眼窩の繊細な構造を描出することができた。鼻咽頭および上頸部の画質もRESOLVEによって改善され、ゴーストおよび歪みが大幅に減少して鼻咽頭疾患および頸部リンパ節の観察が可能になった。

 

Conventional ss-EPI

RESOLVE

TR ms

8000

4700

TE ms

88

66

Echo spacing ms

1.08

0.34

FOV

240 x 240 or 220 x 220

240 x 240 or 220 x 220

Matrix

154 x 192 or 164 x 164

154 x 192 or 192 x 192

Slice / Gap mm

4.0 / 0.6

4.0 / 0.6

b-values s/mm²

0, 1000

0, 1000

Averages

4

1

GRAPPA factor

2

2

Readout segments

-

7

Total acquisition time min

2:34

2:55

幾何学的歪みの程度を評価するために、重要な解剖学的ランドマーク(上顎洞両側の前内側,外側,背側、下鼻甲介両側の背側、蝶形骨洞両側の前外側の各点)を特定し、それらの座標をT2w TSE画像、T1w TSE画像、およびss-EPIとRESOLVEのB0画像に記録した。T2w画像とその他の画像(T1w、ss-EPI、RESOLVE)における座標位置の差(mm単位)を測定・比較した。その結果、RESOLVE画像はT1w画像に比べて極めてわずかな歪みだったが、ss-EPIでは平均してRESOLVEの3倍大きかった〔6〕。
さらに、関心領域(ROI)を病変および脳幹に慎重に配置し、RESOLVEとss-EPIのADC、信号対雑音比(SNR)、コントラスト対雑音比(CNR)の差を評価した。病変のADC値はss-EPIに比べてRESOLVEで有意に低かったが、脳幹のADC値は同等であった(表2)。ss-EPIで認められた病変部ADC上昇は、鼻腔における拡散強調画像でよく見られる磁化率およびゴーストアーチファクトによるADCマップの不均一が原因であると考えられた。脳幹のADC値が同等であったことがこれを裏付けている。
SNRはss-EPIに比べてRESOLVEで低かったが、CNRに有意差はなかった。撮像時間の短さという長所がどうしても失われるRESOLVEに比べてss-EPIはk-spaceを効率的にカバーするので〔7〕、この結果は驚くには当たらない。ただし、ss-EPIにおける高いSNR向上が分解能や画質の向上につながるわけではない。一方、RESOLVEではss-EPIに比べて磁化率アーチファクトおよびT2* blurringが減少することで分解能が向上する可能性がある。重要なのはCNRに差がないという点で、これは過去の乳癌の研究と一致している〔7〕。

 

 

N

ss-EPI mean ± SD

RESOLVE mean ± SD

p-value

定性的評価

画質

32

2.36 ± 0.57

3.72 ± 0.68

<.001

病変部描出

32

2.24 ± 0.83

4.00 ± 0.87

<.001

歪み

32

2.20 ± 0.50

0.16 ± 0.37

<.001

定量的評価

ADC x10-3 mm2/s

 

 

 

 

病変部

20

131 ± 0.73

1.25 ± 0.68

.001

脳幹

32

0.74 ± 0.42

0.75 ± 0.44

.350

SNR b1000

 

 

 

 

病変部

20

150.72 ± 118.97

 90.64 ±56.0

.002

脳幹

32

108.42 ± 32.74

81.58 ± 31.21

<.001

CNR

20

2.46 ± 1.51

2.51 ± 1.50

.798

RESOLVEによる副鼻腔病変の画質向上が確認されたので、次にRESOLVEの臨床的有用性を検討した。具体的には、RESOLVEの追加により副鼻腔病変の良性・悪性の鑑別がDCE-MRIに比べて改善するかどうかを検討した〔8〕。対象はRESOLVEおよびDCE-MRIによる検査を受けた患者98例(女性61例、平均年齢47歳)で、このうち58例は組織学的に悪性病変、40例は良性病変であることが確認された(症例は図2を参照)。病理組織検査の結果を知らされていない経験豊富な放射線科医1名が画像の後処理およびデータ解析を行った〔8〕。DCE-MRIから得るパラメータは各種の造影剤集積特性などとした(詳細は文献〔8〕を参照)。まずDCE-MRIパラメータ単独で、次にDCE-MRIおよびRESOLVEのADC値を用い、ロジスティック回帰および受信者動作特性(ROC)曲線分析を行った。DCEパラメータ単独での分類の精度は70.4〔ROC曲線下面積(AUC)0.69、感度57. 5%、特異度79.3%〕であった。ADCを追加した分析では診断精度が85.7(AUC 0.87、感度85.0%、特異度86.2%)に向上した。

図2

図2:横紋筋肉腫と診断された43歳男性。太い矢印が病変、細い矢印がROIを表す。2A:アキシャルT1強調画像、右鼻腔および上顎洞に等信号の腫瘤を認める。2B:アキシャル脂肪抑制T2強調画像。2C:アキシャル造影T1強調画像、顕著な不均一性の信号増強を認める。2D:b値1000s/mm²のRESOLVE画像、病変部に高信号を認める。2E:ADCマップ、病変部が低信号でROI内の平均ADC絶対値は0.482×10-3mm²/s。2F:DCE-MRI時間信号曲線、washout enhancementを伴うtype 3に分類される〔8〕。

視神経炎の撮像におけるRESOLVE急性の視神経炎(ON)は若年成人に最もよく見られる視神経疾患の1つである。多発性硬化症(MS)または視神経脊髄炎(NMO)に併発することが多いが、孤立性の発症もある〔9〕。 今のところ、ONの診断は臨床検査および神経眼科学的検査のみに基づいて行われる〔10〕。しかし、MRIも視神経の炎症性変化の評価や器質性病変およびその他の圧迫性または炎症性眼窩病変の除外診断に用いられる。視神経の拡散強調画像はON患者の臨床転帰の予測因子になることが示されている〔11, 12〕。しかし 、これらの研究はRESOLVEに比べて当該領域で磁化率アーチファクトが発生しやすいss-EPI拡散画像に基づくものであった(図3)。そこで、脂肪抑制造影T1w TSE画像との比較で、急性ONの検出におけるRESOLVEの役割を検討した〔13〕。最終的な検討対象は、眼科症状を有し神経眼科医およびMRIによるONの評価を急性発症後4週間以内に受けた42例で、このうち8例は病歴も眼科検査のON陽性所見もなかったが、34例は左眼、右眼、または両眼のONと診断された。検討対象となった合計84本の視神経のうち、臨床的に41本が陽性、43本が陰性と判断された。
MRI検査の内容は、RESOLVE(TR4700ms、TE70ms、スライス厚2.9mm、ギャップ10%、25スライス、バンド幅723Hz/px、マトリクス192、FOV220mm、アベレージ1~2、b値1000s/mm²、拡散方向3、TA 2.5~5.3分)および造影T1強調TSE(CE-T1)のアキシャル(TR643ms、TE12ms、スライス2mm)、オブリークサジタル(TR713ms、TE12ms、スライス2mm)、 コロナル(TR568ms、TE11ms、スライス3mm)の3方向であった。病歴および神経眼科医の診断結果を知らされていない神経放射線科医2名が個別にRESOLVE画像および造影後T1強調画像(CE-T1)を 評価した。各視神経についてONの評価を行い、陽性(+)、陰性(-)、判定保留のいずれかを記録した。その結果、予想された通り急性ONの正診率は拡散ADCに比べて脂肪抑制CE-T1で高かった。読影者2名の評価では、CE-T1は感度が68.3/85.4%、特異度が79.1/93.0%、正診率が82.1/90.0%で、RESOLVEは感度が82.9/82.9%、特異度が81.4/83.7%、正診率が82.1/83.3%で あった〔13〕。 それでもRESOLVEの感度および特異度は高く、多くの症例の解明に役立った点には留意しなければならない。本研究において、CE-T1では明らかな信号増強を認めないがDWIではADC値低下を伴う高信号を認めた両側の急性非定型ONが3例存在した(図4)。さらに、造影剤注入が禁忌の患者において、DWIは診断および患者管理に重要な役割を果たす。
急性ONの診断以外に、さまざまな臨床病型を鑑別できる点も重要である。通常、急性ONはMSまたはNMOの発症に先行する。NMOはアストロサイト水チャネル蛋白質アクアポリン4(AQP4)抗体の存在によって生化学的レベルでMSと鑑別できるが〔14〕、依然としてMSと誤診されることも多い。NMOの治療および予後はMSとは異なるので〔15〕、両者の臨床的な鑑別に役立つことは重要である。我々は急性のMS関連ON(MS-ON)とNMO関連ON(NMO-ON)の鑑別におけるRESOLVE拡散強調画像の有用性を評価するとともに、MR拡散パラメータが急性発症後6カ月時点の光干渉断層撮影(OCT)所見の予測に役立つかどうかを検討した〔16〕。対象は患者群34例(MS-ON群19例、NMO-ON群15例 )およびコントロール群16例であった(患者選択基準の詳細は文献〔16〕を参照)。全例にRESOLVEによる撮像を行った(TR4700ms、TE70ms、スライス厚2.9mm、ギャップ10%、25スライス、バンド幅723Hz/px、マトリクス192、FOV 220mm、ボクセルサイズ1.1×1.1×2.9mm³、アベレージ2、b値0および1000s/mm²、拡散方向3、リードアウトセグメント7、TA 5.3分 、図5)。

図3

図3:RESOLVE画像(3A:b1000、3B:ADC)ではss-EPI画 像(3C:b1000、3D:ADC)に比べて歪みが減少し、眼領域の微細な解剖学的構造がよりよく描出されている〔13〕。

図4

図4:21歳男性、両側の視神経炎および光覚消失。CE-T1アキシャル画像およびコロナル画像(4A、4B)では明らかなコントラスト増強を認めないが、RESOLVE b1000画像およびADC画像(4C、4D)では両側の明らかな拡散制限を認める。

図5

図5:患者3例のCE-T1画像、RESOLVE b1000画像、ADCマップ。5A~5Cは右眼の急性視力低下を伴うMS-ON患者、5D~5Fは血中AQP4-IgG陽性の左眼NMO-ON患者、5G~5Iは血中AQP4-IgG陰性の両眼NMO-ON患者〔16〕。 平均ADC値は、2つの患者群に比べてコントロール群〔(1.025±0.067)×10-3mm²/s〕で有意に高く(p<0.0001)、NMO-ON群〔(0.691±0.195)×10-3mm²/s〕に比べてMS-ON群〔(0.879±0.144)×10-3mm²/s〕で有意に高かった(p=0.013)。MS-ONとNMO-ONの鑑別に関するROC曲線分析のAUCは0.785であった。閾値0.830×10-3mm²/sで最良の結果が得られ、感度は75%、特異度は78.3%、正診率は76.7%であった。有意な相関がADC値と視神経乳頭周囲の網膜視神経線維層(RNFL)の厚さ(r=0.44、p=0.006)およびADC値と黄斑部網膜神経節細胞複合体(GCC、r=0.526、p<0.0001)の間に認められた。これらの所見はMSとNMOが病態生理学的に異なるという考え方を支持するものであり、MS-ONの急性脱髄とは異なり、AQP4抗体が引き起こす浸潤および壊死はより重篤な軸索損傷につながる可能性があることを裏付けている。

結論
副鼻腔病変および眼病変のイメージングにおけるRESOLVEの役割を検討した当施設の最近の研究4件を紹介した。従来のss-EPIに比べて、RESOLVEはこれらの難しい領域において高分解能で歪みの少ない拡散強調画像が可能であるという点が画期的である。RESOLVEを用いれば、これらの領域における従来の拡散画像でよく見られる磁化率に起因する歪みが顕著に現れることなく、微細な解剖学的構造をよりよく描出することができる〔6〕。RESOLVEがもたらす拡散強調画像の画質向上によって、副鼻腔病変および眼病変の臨床診断における拡散の役割を定量的に評価できるようになる可能性がある。我々はRESOLVE ADC値によって副鼻腔病変の良性・悪性の鑑別精度がCE-T1に比べて向上する可能性があることを示した〔8〕。若年成人に最もよく見られる視神経疾患であるONに関して、RESOLVE ADC値は正常視神経と罹患視神経の鑑別精度が高く、診断過程においてCE-T1を補うものである。また、RESOLVE ADC値はMS-ONとNMO-ONの鑑別および視神経萎縮の予測においても有用な可能性がある〔16〕。これは両疾患のよりよい診断や予後予測に役立つ可能性がある。

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