Simultaneous Multi-Slice – a Concise Review Covering Major Applications in Clinical PracticeSimultaneous Multi-Slice - 主な臨床応用のまとめ

MAGNETOM Flash 翻訳版 Vol.15より|2018/09/01

Val M. Runge, M.D.; Johannes K. Richter, M.D.; Johannes T. Heverhagen, M.D., Ph.D.
Department of Diagnostic, Interventional and Pediatric Radiology, University Hospital of Bern, Inselspital, Bern, Switzerland

はじめに
MRIは臨床への導入当初はシングルスライス撮像しかできなかった。その後急速に2Dマルチスライス撮像が開発され、この30年間はこれが臨床上の標準的な方法として、ほぼ全ての患者の検査に用いられている。しかしマルチスライスという用語は少々誤解を招きやすい。実際には、各スライスのデータをTR毎に逐次的に収集しているからである。真のマルチスライス同時収集法SimultaneousMulti-Slice(SMS)はつい最近登場したばかりで〔1-3〕、従来の2Dマルチスライス撮像法と組み合わされることが多い。SMSは臨床MRIにおいて、この10年間で最も重要な技術上の進歩であると考えられ現行の方法ではスキャン時間を2分の1~3分の1に短縮することができる。

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図2A:頭頸部の拡散強調画像にSMSを応用することで、必要な解剖学的構造全体をカバーすることができる。(スライドして図をご覧ください)

SMSは当初エコープラナーイメージング(EPI)に組み込まれたが、その後ターボスピンエコー(TSE)にも拡張された。技術的な観点からは高次のアクセラレーションも可能で、現在はこの分野が研究の中心になっている。過去数十年間に開発された多くの新技術と同様に、SMSの応用についても、例えば単純なスキャン時間の短縮ではなく単位時間当たりの信号対雑音比(SNR)の向上に注目するなど、総合的にとらえる必要がある。単位時間当たりのSNRが向上すれば、スキャン時間の短縮(図1)、TRによる制限がある状況下でのスライス数の増加(図2)、適切なスキャン時間内での(必要な解剖学的構造全体をカバーした)高分解能撮像(図3)が可能になる。

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図3:脳の薄いスライスの拡散強調画像では、SMSによって適切なスキャン時間で脳全体をカバーすることができる。画像はSMSあり・なしの薄いスライスの2D ss-EPI DWIスキャン像で、サジタル再構成画像(右下の小画像)が撮像された解剖学的範囲を示す。

SMSは先行するMRハードウェア・ソフトウェア双方の重要な技術的進歩がなければ実現できなかったであろう。具体的には、フェーズドアレイコイル、CAIPIRINHAおよびslice-GRAPPA再構成などである。また、SMSは従来のパラレルイメージングとの併用も可能で、臨床においては一般に併用される。2D EPIシーケンスに組み込むことができるのは、収集時間のかなりの部分を占める拡散エンコードが各スライスの励起ごとに撮像ボリューム全体に印加されるからである。解剖学的関心領域をカバーするのに必要なスライス励起回数が減少するので(毎回2~3スライスを同時に励起するので)、TRの短縮が可能になり、それによりスキャンの高速化が可能になる。
SMSはsingle shot(ss)EPIにもreadout segmented(rs)EPIにも組み込まれている〔4〕※(readout segment EPIへのSMS組み込みはWIP)。特にrs-EPIはss-EPIに比べてスキャン時間が延長するので、rs-EPIへの組み込みは重要である。SMSはEPIに続いてTSEシーケンスにも組み込まれた。EPIと同様にTRの短縮が可能になることでスキャンは高速化されるが、おそらくより重要なのは、必要なスライス数を得るのに2以上の分割数(concatenation)が必要になるTSEスキャンへの応用だろう。この場合、SMSを用いれば単一のconcatenationで必要なスライス数を得ることができ、スキャン時間が短縮される。

図6: 拡散強調画像の時間短縮のためにSMSを用いた乳腺画像。悪性腫瘍が強く疑われるスピキュラを伴う高信号病変(6A、オレンジ色矢印)を右乳房のT2強調画像に認める。磁化率アーチファクトおよび幾何学的歪みの軽減と高速化のために選択的FOV(zoomed)を用いた従来のss-EPI 拡散強調画像(6B)と比較して、SMS(アクセラレーションファクター2)によるrs-EPI拡散強調画像(6C)では拡散制限を伴う(高信号の)腫瘍は同等に描出されているが、スキャン時間は5分52秒から3分17秒に短縮された。また、rs-EPI拡散強調画像では右腋窩リンパ節転移(白色矢印)が視認できるが、6Bでは磁化率アーチファクトおよび幾何学的歪みのため描出されていない。

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図7:肝臓のスキャン時間短縮またはより薄いスライス厚目的とするSMS併用2D ss-EPI拡散強調画像。拡散強調画像の撮像時間は7A(non-SMS)が2分41秒、7Bが1分38秒、7Cが2分54秒(SMSはともにアクセラレーションファクター2)。スライス厚は7Aと7Bが5mmで7Cは3mm、いずれも肝臓全体をカバーしている。拡散制限を伴う小さなHCC(矢印)を認める。この病変は2分間の自由呼吸下radial VIBEスキャン(7D)によるガドキセト酸ナトリウム遅延造影画像でも良好に描出されている。

SMSの臨床使用を実現するには、パルスシーケンスのデザイン面でいくつかの重要な改善が必要であった。同時収集後の画像再構成において隣接しているスライスを展開する際のノイズを改善する必要があったが、例えばシングルショットシーケンスでは、それまでの方法に伴う高gファクター(SNR)の問題やボケ(blurring)を避けるblipped CAIPIRINHA〔5〕を使用することにより画像が改善された。同時収集スライス間の信号混入を抑制するための特殊な再構成法も用いられる。また、マルチバンドRFパルスは複数のスライスの同時励起およびリフォーカスをするために、単位時間あたりのRF印加エネルギーが増加し、比吸収率(SAR)の上昇も伴う。より低いSARで同様の画像が得られるvariable-rate selectiveexcitation(VERSE)パルスを組み込むことで適切なSAR低下が得られる。

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図8:小肝嚢胞の肝臓拡散強調画像、上段がb値800s/mm²画像、下段がADC画像。SMSなし(8A、8C)とSMS 2(8B、8D)を比較すると、スキャン時間は4分14秒と2分31秒、解剖学的範囲(スライス数)は同等で肝臓全体をカバーしている(スライス厚4mm)。

SMSはルーチンの臨床診療への応用範囲が広く、ほぼ全ての解剖学的領域が含まれる〔6, 7〕。本稿のスキャンは全て3Tで行われた。頭部におけるSMSは、スキャン時間を短縮すると同時に患者の不意の体動による影響も抑制することでスループットを向上させることができる(図4)。脳全体の薄いスライスが必要な場合は、拡散強調画像でもT2強調画像でも、SMSを用いれば臨床的に適切なスキャン時間で可能になる(図5)。乳腺イメージングにおいては、現在では乳癌の評価に拡散強調画像が必要とされるが、SMSはその所要時間を短縮する(図6)〔8〕。体幹部イメージング(例えば肝臓)では、アキシャル拡散強調画像が今やルーチンになっており、SMSを用いればスキャン時間を短縮することができる〔9〕。ただし、関心領域やz方向の撮像範囲によっては、スライス厚の減少(撮像範囲と画質は維持)を目的とするSMSの応用も、z方向の撮像範囲拡大を目的とするSMSの応用もともに重要である(図7)。

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図9:内側半月板後角の水平断裂を示すSMSなし(9A)および2倍速SMS(9B)の膝関節サジタル高分解能プロトン密度強調画像。画質とSNRは実質的に同等で、スキャン時間はSMSにより6分36秒から3分27秒に短縮された。

その他に拡散強調画像に関して言及すべきことは、SMSを用いるとADCマップの画質が維持される点で、これは主にSNRとアーチファクトの影響である(図8)。筋骨格イメージングでは多くの場合に高分解能画像が求められるが、SMSを用いれば適切なスキャン時間での撮像が可能になる(図9、図10)。しかし、患者の状態やスループットに関する要件から時間に追われることも多く、そのような状況ではスキャンの高速化を目的としてSMSを応用することになる(図11)。

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図10:内側側副靭帯・前十字靭帯再建術を受けた患者の膝蓋軟骨損傷を示す3T膝関節アキシャルTSE T2強調画像。SMSなし(10A)と2倍速SMS(10B)の画質は同等で、スキャン時間はSMSにより7分14秒から3分48秒に短縮された。面内分解能は0.4x0.4mm²。In plane resolution is 0.4x0.4mm²。(スライドして図をご覧ください)

SMSは現在ではDWIにもTSEにも応用可能で、非常に有用性が高い。応用範囲は脳、軸椎、乳腺、体幹部、全身、筋骨格イメージングにおよぶ。どの患者に用いる場合でも、SMSの使用目的がスキャン時間の短縮なのか、スキャン時間の大幅な延長なしで高分解能画像を得ることなのか、あるいは撮像スライス数の増加なのかが重要な判断の分かれ目になる。

謝辞
本稿の一部は『The Physics of Clinical MR Taught Through Images』第4版(Thieme社、2018年発行)から許可を得て引用した。
図6~図7および図9~図10と文章の一部はRunge VM,Richter JK, Heverhagen JT. Speed in Clinical MagneticResonance. Invest Radiol. 2017; 52(1): 1-17.から許可を得て転載した。

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