0.55Tの超電導式でありながらヘリウムの充填量が 0.7リットルと極めて少なく、クエンチ配管を必要としない特長もあり設置場所の検討が容易でした。加えて設置スペースがコンパクトな設計のため、0.3T装置からの更新に伴う改修工事も最小限に抑えることができました。またこの装置には、多チャンネルで高密度なフェーズドアレイコイルを搭載しており、高磁場装置に匹敵する高画質を期待できます。

インタビュー抜粋
当院では、2010年の開院と同時にOpen 型0.3T MRIを導入しました。開院当時から、整形外科に加え神経内科の診療も行っていたため、MRI は重要な診断ツールとして活用してきました。しかし、導入から10年以上が過ぎ、1.5T 装置を中心とした高磁場MRI 装置の普及が進む中で、装置の更新が必要となりました。当初は既存装置のソフトウェアのバージョンアップを検討しましたが、診療所の看板であるMRIの画質にこだわりたいという思いから、高磁場に匹敵する性能を期待できる新世代の低磁場装置としてSiemens Healthineers 製0.55T MRI 装置「MAGNETOM Free.Star」の導入を決断しました。そして、2023年1月から「MAGNETOM Free.Star」の稼働が開始し、日々の診療で幅広く活用しています。

「MAGNETOM Free.Star」は、2022年5月から日本で販売さ れている最新型の低磁場MRI装置です。0.55T の超電導式でありながらヘリウムの充填量が0.7リットルと極めて少なく、クエン チ配管を必要としない特長もあり設置場所の検討が容易でした。加えて設置スペースがコンパクトな設計のため、0.3T装置からの更新に伴う改修工事も最小限に抑えることができました。またこの装置には、多チャンネルで高密度なフェーズドアレイコイルを搭載しており、高磁場装置に匹敵する高画質を期待できます。
ソフトウェアにはパラレルイメージングや Simultaneous Multi-Slice(SMS)、Compressed Sensing(CS)などの高磁場で発展した多様な高速化技術が搭載されています。さらに、近 年MRI 医用画像においても応用が進んでいるDeep Learning を用いた画像再構成技術「Deep Resolve」を利用できることが最大の特長です。これら最新のハードウェアとソフトウェアの採用により、従来の低磁場MRIにおいて問題とされるSNR や分解能の改善が図られており、1.5Tなどの高磁場装置に匹敵する高精細な画像を短時間で取得できる点が導入の決め手でした。

低磁場MRI装置は磁化率によるアーチファクトが低減される特長があります。これにより金属インプラント周囲のMRI評価が可能となります。高磁場MRI装置ではアーチファクトの影響で金属周囲の評価が困難な場合がありますが、低磁場MRI装置ならではのメリットです。さらに、最新の金属アーチファクト低減技術であるSEMACも搭載されており、金属による画像の乱れが大幅に改善することが期待できます。実際に、人工膝関節置換術後のフォローアップ検査においてアーチファクト低減の効果を実感しました。
画質の大幅な向上により、医師は自信を持ってMRI検査のオー ダーをすることができるようになりました。MRIを利用すれば確実な診断が可能という確信を持っています。その結果、MRIの検査数も増加しました。直近3年間のMRI検査数の推移では、新装置導入前後で月平均の検査数が55.1件から88.4件に増えています 。また、検査時間の短縮により、患者の負担が軽減されるだ けでなく、病院スタッフの負担も削減されています。最新の装置を導入したことで、新たな患者が口コミで訪れるケースも増え、新規患者の獲得にも寄与しています。なお、Open型MRIからの更新による閉所恐怖症などの問題もほとんどありませんでした。照明の工夫など、明るく閉塞感の少ない環境づくりに取り組んでいます。

当院ではまだ半年しか経過していませんが、既にルーチン検査の 時間短縮と画質の向上を実感しています。しかし、新たな装置の可能性を考えると、まだまだ向上の余地があると感じています。将来的には撮像時間の最適化や高画質化、さらには新たな撮像方法の導入などに取り組み、装置の能力を最大限に発揮し、地域医 療の発展に貢献していきたいと考えています。
(2023年8月9日取材)
お話しをうかがった先生:
新町整形外科診療所 院長 荒木 俊光 先生
記事全文と、各部位の臨床画像を掲載したPDFファイルをダウンロードしていただけます。
新町整形外科診療所
- 所在地:三重県津市大園町4‐29(大園荘1F)
- 診療内容:整形外科、精神科、神経内科
- 最寄り駅:近鉄「津新町駅」から約1.2 km
