甲状腺ホルモン検査(甲状腺機能検査)
「甲状腺の機能」を調べる検査には、①甲状腺ホルモンの検査と②甲状腺に作用する下垂体ホルモンの検査の2種類があります。
甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という二種類があり、血液中に遊離したこの二つのフリーT3(FT3)とフリーT4(FT4)を測定すれば、甲状腺機能が正常か、亢進しているか、低下しているかがわかり、使用している薬の効果も調べる事ができます。
一方、甲状腺に作用する下垂体ホルモンにはTSHがあり、甲状腺細胞表面に存在するTSH受容体と結合しT4を作る「ホルモンのリレー」が行われています。さらに甲状腺ホルモンT4とのネガティブフィードバック機能により、T4の分泌量を調節する機能があります。
甲状腺からのT4の分泌量が多くなる甲状腺機能亢進症は、新陳代謝を増大させるため、以下の症状が起こりえる甲状腺の病気です。逆にT4の分泌量が少なくなる甲状腺機能低下症は、代謝が減少するため以下の症状が起こりえます。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病等) | 甲状腺機能低下症(橋本病等) |
甲状腺の腫れ | 甲状腺の腫れ |
眼球突出 | 眼瞼膨張 |
息切れ、動悸 | 息切れ、脈がゆっくり |
イライラ、不安 | 無気力、抑うつ、物忘れ |
筋力低下、しびれ | 筋力低下、関節痛 |
月経減少、無月経 | 月経過多、月経不順 |
軟便 | 便秘 |
かゆみ | 皮膚の乾燥 |
食欲があるのに体重減少 | 体重増加、むくみ |
眠れない | いつも眠い、動作緩慢 |
疲れやすい、発汗増加 | 疲れやすい、発汗減少 |
暑がり | 寒がり |
甲状腺自己抗体検査
抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)、TSHレセプター抗体(TRAb)の三項目の検査があります。 さらにTRAbはTSAb(甲状腺刺激抗体)とTSBAb(甲状腺刺激阻害抗体)から成ります。
- 抗サイログロブリン抗体(TgAb)
Tg抗体、又TGHAとも呼ばれ、甲状腺にあるサイログロブリンという蛋白に対する自己抗体です。橋本病やバセドウ病では高く検出されます。 - 抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体(TPOAb)
TPO抗体又MCHAとも呼ばれ、甲状腺ペルオキシターゼに対する自己抗体です。橋本病では、この自己抗体が高く検出されます。またバセドウ病でも検出される事があります。 - TSHレセプター抗体(TRAb)
甲状腺細胞表面にあるTSHが結合する場所(TSH受容体)に対する自己抗体で、バセドウ病の原因物質と考えられています。TRAbはTSAb (甲状腺刺激抗体)とTSBAb(甲状腺刺激阻害抗体)から成りますが、特にTSAbは甲状腺のTSH受容体に結合し、あたかもTSHの様に甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンをどんどん作らせてしまいます。
甲状腺機能検査から診断まで
甲状腺機能異常を疑う患者さんには甲状腺ホルモン濃度が正常かどうかを調べるTSHとFT4の検査が有用です。