救急患者さんのいないときにはICU患者さんのCTを撮影するなど、2ルームシステムがうまく生かされています。1ルームでは救急診療がスムーズに行えない可能性も考えられたため、総合的に見て2ルームにして良かったと実感しています。
センター長・教授
二次救急、三次救急を両立してきちんと診療を行える効率の良さが、やはり2ルームの大きな利点だといえます。また、ハイブリッドERは各職種がシステムを熟知して自身の役割をスムーズに行い、多職種で連携をとることでその利点を最大限発揮できます。
特任助教
森下 先生 当センターには救急科専門医のみならず、外科や麻酔科の専門医も持つサブスペシャリティが多いため、振り分けだけでなく、緊急手術から術後のICU管理までシームレスに患者さんを診る自己完結型の救急を実施しています。部屋に加え、医師もハイブリッドなので、迅速で包括的なケアを行うことが可能です。
2023年にオープンしたC 棟ERセンターには、2ルームハイブリッドERが導入されました。新しいシステムをうまく運用するためにはさまざまなプロセスが必要で、大変な面もありますが、やはり新しいシステムが入るとスタッフのモチベーションが上がります。もちろん、従来から高度な医療の提供を目指してスタッフ一同頑張ってきましたが、さらにモチベーションが高まったように感じます。
(写真:救命救急センター長・教授 森下幸治 先生)
藤田 先生 三次救急だけでなく二次救急患者も受け入れています。従来のERセンターでは、重症患者さんのCT 撮影を検討しているときは優先順位の問題から二次救急診療の停滞が少なからずありました。今回導入された2ルームハイブリッドERであれば、移乗を含めたCT撮影時間を大幅に削減できるため効率的に診療ができるようになったと感じています。
森下 先生 まずは動線です。ハイブリッドERを迅速かつ効率的に活用するためには患者さんがスムーズにまっすぐ入れる動線の確保が必要でした。そして何より2 ルームハイブリッドERであること。さらに、自己完結型の救急診療をスムーズに行うために、手術台の導入にはこだわりました。
藤田 先生 最も重視したことは、各職種の要望や変更にスムーズに対応していける環境づくり・体制づくりです。当院にはハイブリッドERでの従事経験者が1 人もいませんでした。そのため、とにかく多くの施設に見学に伺い、それぞれの施設の良い点や課題などを持ち帰って準備をはじめました。すると、ERセンター内だけでなく、関係各部署との取り決めや診療方法など、調整しなければならないことがたくさん出てきました。そこで、救急科医師や看護師だけでなく、放射線科・整形・循環器・血管内治療・麻酔科・放射線技師・臨床工学技士・救命士で多職種チームを編成し、とにかくコミュニケーションを円滑に行うことに注力しました。
藤田 先生 ハイブリッドERでは搬送から検査・治療までを患者さんの移動なく完結させることができるため、処置や治療までの時間が格段に短くなり、移動時のリスクも低減し安全性が高まりました。そのため、重症外傷やECMOを含む重症内因性疾患、脳卒中患者さんなどを積極的に入室させています。
二次救急では、最初からハイブリッドERに入室させることは少なく、診断がついてから入室となることが多いです。整形外科領域において鎮静が必要な脱臼整復の場合、以前であれば透視室に移動して処置を行うため、マンパワーや安全性の問題もありました。現在ではハイブリッドERに入室後、救急科が鎮静を補助しながら整形外科医師と整復を行うことで、他の救急搬送患者の診療も継続しつつ、安全な処置を実現しています。
(写真:特任助教 藤田晃浩 先生)
高谷 技師 以前のERセンターにはER担当者が1人いましたが、専任というわけではなく、ローテーションで担当するという形でした。しかし、C棟にERセンターを立ち上げることになった際、先生方から「専任の人が欲しい」という話があり、現在は平日日勤を2人で担当しています。1人が専任で、もう1人は夜勤対象者です。夜勤を行う全員がローテーションに加わり、専任者から救命救急についての教育を受けながらスキルアップを図っています。夜間帯でトラブルなく撮影できることを最低減の目標として、取り組んでいるところです。
また、2ルームタイプで、かたやCT 室、かたや血管撮影装置のあるER手術室となり、システムが複雑化したことは確かです。そのため、治療の流れが滞らないことに一番気を使っています。EVARなど特殊な手技が実施された際には、技師間で注意点などを共有し、情報を蓄積するようにしています。
(写真:放射線部 高谷英克 技師)
森下 先生 救急患者さんのいないときにはICU患者さんのCTを撮影するなど、2ルームシステムがうまく生かされています。1ルームでは救急診療がスムーズに行えない可能性も考えられたため、総合的に見て2ルームにして良かったと実感しています。将来的には、2ルームの両部屋の患者さんのテーブルが手術台となり、CTのガントリーとIVRのためのCアームが行き来してどちらの部屋でも、手術やIVR への進化ができると、より多くの患者さんに対応が可能になると思いますので良いかもしれません。
藤田 先生 二次救急、三次救急を両立してきちんと診療を行える効率の良さが、やはり2ルームの大きな利点だといえます。また、ハイブリッドERは各職種がシステムを熟知して自身の役割をスムーズに行い、多職種で連携をとることでその利点を最大限発揮できます。一方で、システムを使う側の中途半端な理解は、診療を停滞させ従来よりも時間がかかってしまう可能性もあるため、チームワークの向上とシステムの理解が大切だと日々感じています。
高谷 技師 1ルームのIVR-CTと違い、2ルームの場合、ハイブリッドERに患者さんがいなければCTを単独で稼働させることができます。そのため、ERセンターにもう1台CTを置く必要がなく、コスト軽減につながっています。また、スライディングガントリCTなのでベッドを動かす必要がなく、チューブ類の巻き込みの心配が少ない点も、技師にとっては安心材料です。
森下 先生 CTの撮影時間は今後ますます短くなると思いますが、得られた多くの画像情報をいかに処理していくかが問題です。AIを活用して、必要なものだけを迅速に自動解析してフィードバックしてくれるようなシステムの構築が望まれます。
藤田 先生 場所によって動線やスペースの問題があるため、血管撮影装置を使用しないときの退避ポジションに工夫がほしいです。例えば、必要なときだけ天井から降りてくるCアームや、CTとCアームが一体化したものなど、コンパクトで柔軟な装置が近い将来の期待でしょうか。
高谷 技師 手術台が別メーカーなので少し使いにくいですね。同じメーカー同士のような連携ができて、制限が少なくなることを期待します。
東京医科歯科大学病院
- 所在地:東京都文京区湯島1‐5‐45
- 病床数:813床
- 主な導入装置:ARTIS Q TA, SOMATOM Edge Plus Sliding Gantry, ARTIS icono D-Spin, Artis zee BC, SOMATOM Force, SOMATOM Edge Plus, SOMATOM X.ceed, MAGNETOM Spectra, Cios Alpha, Cios Spin, Cios Select, ACUSON S3000, ACUSON Freestyle 他
- お話しをおうかがいした先生
救命救急センター センター長・教授:森下 幸治 先生
特任助教:藤田 晃浩 先生
主任:高谷 英克 先生