医療用ロボットの歴史

カテーテル検査にロボット技術を導入

人とロボットが手を取り合う手術~その展望に迫る

地雷の解除もできます。車の製造ももちろん可能です。では、ロボットを用いて心臓手術を支援するとなると、どうでしょう?フィクションのように感じられるかもしれませんが、この技術を用いて正確で刺激の少ない手術を行う外科医がすでに存在するのも事実です。

文:Andrea Lutz

|2021/10/20

ドイツのギーセン大学病院では、心臓医のホルガー・ネフ医学博士が、ドイツ国内で初めてとなるロボット支援によるインターベンションを行いました。この方法がもたらすメリットを考えれば、これで終わりということはないでしょう。

冠動脈性心疾患は、西欧先進国で最も一般的な心血管疾患の1つです。それによって起こる急性心筋梗塞などは世界的に見ても主要な死因となっています。1)冠動脈性心疾患の治療には、ステント留置術がゴールデンスタンダードとして確立されています。しかし、PCIは患者とカテーテル検査室(通称:カテ室)で働く医療チームの双方に課題をもたらしているのも事実です。

冠動脈インターベンションの新しいパスウェイ

現在、遠隔操作ロボットは、冠動脈インターベンションで標準的に使用できるほど進歩しています。しかし、「ロボットだけでは成功しません」と、Siemens Healthineersで心臓血管治療を担当し、全世界でCorindus事業の成長をコーディネートするDoris Pommiは語ります。さらにPommiは、詳細な画像処理とシステムからの適切な情報、そして熟練した心臓専門医の知識と組み合わせて用いられて初めて、ロボットが「革命」をもたらすことができるのだと説明しています。

PCIの先駆者

ギーセン大学病院のホルガー・ネフ博士とそのチームが、どのように新しいレベルの精密なパフォーマンスを実現しているかをご覧ください。

このロボットは血管造影システムと組み合わせ、カテーテルを誘導し、ステントを留置するために用いられます。血管造影画像により、医師は手技中に患者の血管構造を正確に把握することができます。循環器内科医は、カテ室にあるロボットをコントロールモジュール使って遠隔操作し、カテーテル、ガイドワイヤー、バルーンやステントを正確に動かすことができます。これほどのレベルの精度は、手術の成功と長期的なアウトカムを左右します。マシンは休むことなく1ミリ単位の動きを何度も繰り返すことができるため、ロボットはカテ室が求める一貫した高精度を提供することができるのです。

精密さのみならず、優れた保護性能

冠動脈インターベンションでは、血管の構造を詳細に把握するために正確な画像が重要です。そのため、患者には造影剤を注射しますが、手術中に一瞬、放射線を浴びることになります。しかし、それを行う術者は毎日のように放射線を浴びています。そのため、手術中は鉛のエプロンを着用し、常に放射線から防護しなくてはなりません。時間が経過するごとに、エプロンはまさに鉛のように重く感じられるようになるでしょう。防護服の着用により、骨や脊椎、筋肉に負担がかかりますし、すべての臓器や部位を完全に保護できるわけではありません。だからこそ、術者は作業中に放射線源から十分な距離を保つことができる方法を検証する必要があります。

このロボットシステムは、従来のように血管撮影台の前に立つことなく、独立したコントロールモジュールから手技を行うことができるため、医師の放射線被ばく量を低減することができるのです。

精密な処置

カテーテルを誘導し、ステントを正確に留置するために、ギーセン大学のチームはSiemens HealthineersのCorPath GRXロボットシステムとArtis血管造影システムを組み合わせました。ネフ博士は、「インターベンションはうまくいきました」と語ります。博士はジョイスティックとコントローラーを使い、ステントを取り付けたワイヤーを操縦しました。チームの仕事ぶりをご覧ください。

最適な医療へのアクセスを可能に

Siemens Healthineersはポートフォリオを大幅に拡大するために、11億米ドルを投じてCorindus Vascular Robotics社を買収しました。Corindus Vascular Robotics社は、低侵襲血管治療のためのロボット支援システムをいち早く開発した米国の企業です。「私たちの目標は、医用技術を発展させ、フロントランナーとなることです」と先述のPommiは語ります。加えて、Siemens Healthineersが将来性の高い成長市場に投資する理由はここにあると説明しています。

このロボットシステムは、医師にとっては改善をもたらし、医療機関にとっては真のチャンスを生み出すものと言えます。人工知能(AI)の導入により、PCIの手順が簡素化されることが期待されており、この未来的な技術が標準となる時も間近に来ているのです。

長期的には、患者や医療チームを守るだけでなく、ロボットが再手術の必要性を最小限に抑え、効率を高め、より多くの人が最適な医療を受けられるようになることを目指しています。この技術の可能性は、プロセスの最適化にあります。

<p>ホルガー・ネフ医学博士</p>

Andrea Lutz
ドイツ・ニュルンベルク在住。医療、テクノロジー、ヘルスケアIT分野のジャーナリスト兼トレーナー