フォトンカウンティングCT開発チーム

MRI開発50周年: ベストはこれから

Arthur Kaindl, MR Executive Vice President, Siemens Healthineers 

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LinkdIn 公開日:2021年9月16日

|2022-11-08

2021年は、MRI(磁気共鳴画像装置)の誕生から50周年という節目の年でした。1971年9月2日、Paul Lauterburは、磁気共鳴信号を画像に変換できることを発見しました。この発明により、Sir Peter Mansfieldとともに2003年のノーベル医学・生理学賞を受賞しました。私はSiemens HealthineersのMR事業部門で責任者を務めており、このたびMRI開発から50周年を迎えたのを機に、医学の歴史、MRIの臨床能力、そしてこの画期的なイメージングモダリティの未来について、皆様と共有させていただきたいと思います。

Siemens Healthineersの前身であるシーメンスAG(以下、シーメンス)は早くからこの新技術の可能性に着目しており、1959年にはプラスチックの特性を調べるために磁気共鳴を利用していたのです。1977年にMRI装置の製造計画が具体化すると、LauterburとMansfieldはドイツ・エアランゲンを訪れ、シーメンスのチームを直接サポートしました。1983年、シーメンスは初となる商業ベースのMRI装置を、米国セントルイスのマリンクロット放射線研究所(Mallinckrodt Institute of Radiology)に納入しました。

1970年代の誕生以来、MRIはいまや軟部組織診断のゴールデンスタンダードと呼ばれるまでに進化しました。その高い解像度と比類のない軟部組織のコントラストにより、MRIは多くの疾患の診断において中心的な役割を担っています。多くスキャンされる部位としては筋肉、関節、脊椎の損傷などが挙げられます。また、腹部や胸部も得意とするところで、特にがんの早期発見には重要な役割を果たしています。肝臓がん、前立腺がん、乳がん、子宮頸がんなどは、すべてMRIで発見できます。さらに近年では、心筋症や心筋炎の診断にも用いられています。


MRI 50 anniversary Clinical Images

頭部画像はMRIが特に力を発揮する分野です。灰白質、白質、皮質、脳室、基底核の画像を、これほどのコントラストと解像度で提供できる技術は他にないでしょう。高齢化社会の到来などにより、変性疾患の発症が急増しています。同時に、多くの新しい治療法の開発も進んでいます。

これらの新しい治療法の多くは、患者さんを早期に治療し、疾患の進行を遅らせたり、予防したりすることを目的としています。治療法の多くは、疾患の特定の側面をターゲットにしています。そのため、患者さんに最大限の効果を得てもらうためには、正確に撮影することが肝心です。例えば、アルツハイマー病の初期には、内側側頭葉や大脳辺縁系の構造などの脳部位に影響が出ていることが知られています。このような形態的、機能的な変化をMRIで確認することで、それぞれの患者さんに合った疾患修飾性の治療を行い、疾患の負担を軽減することができます。MRIは脳の画像化に強いため、神経疾患を管理していくうえで非常に有効なツールといえるでしょう。


私は、このような最近の動きにとても刺激を受けていますし、MRIの最良の年はまだ先だと確信しています。X線などの他の画像技術に比べると、MRIはまだ若い技術です。それだけに、今後の発展の可能性は非常に大きいと考えています。いくつか例を挙げてみましょう。Siemens Healthineersは、超高磁場MRIなどの分野でイノベーションをリードしています。その一方で、デジタル技術と磁場強度0.55テスラを用いた新しいMRIを発表し、臨床応用の幅を広げているところです。さらに、ディープラーニングと人工知能を用いて、より一層高速で安定した結果を得るべく、放射線技師を作業面から支援し、放射線科医の診断をサポートします。

華々しい進歩の一方で、MRIにはまだ課題が残っているのが実情です。というのも、MRIによる検査を世界中の誰もが等しく受けられるにはまだ程遠い状況だからです。社会的、経済的な格差は歴然としてはいるものの、私たちは世界中のお客様やパートナーの皆様とともに、ヘルスケアの民主化、つまり医療へのアクセス向上に取り組んでいます。今ある不均衡を克服し、世界中で質の高い医療の実現を可能にし、そして最終的には多くの人々の生活の質を向上させていくことを目指しています。

私はMRIの開発に最前列で携わることができ、これからも変わらずイノベーションに情熱を注いでいきます。すべての患者さんがMRIにアクセスする権利があります。MRIの歴史が始まって半世紀、このビジョンは実現に大きく近づいています。


MR Executive Vice President, Siemens Healthineers