PCI 用支援ロボットCorPath GRX の導入で患者にも術者にも優しい、心臓カテーテル治療と新しい医療マーケットの創出を目指す

医療法人偕行会 名古屋共立病院様導入事例

常に先を見据え、最先端技術を他施設に先駆けて導入してきた偕行会 名古屋共立病院。2022年8月には、ガイドワイヤーやカテーテル操作を遠隔で行うことができるPCI(経皮的冠動脈形成術)用支援ロボットCorPath GRX(以下、CorPath GRX)を東海地区で初めて導入されました。これにより、術者の被ばく線量の大幅な低減と、重い放射線防護衣の着用による慢性的な整形外科疾患の軽減が実現。また、操作が自動化されていることや、1mm単位での正確な調整が可能なことから、術者による技量格差の少ない、質の高い医療を地域の患者さんに提供できることに加え、偕行会グループの約3500人に及ぶ透析患者さんの循環器合併症対策に力を発揮することも期待されています。偕行会グループ会長の川原 弘久 先生と名古屋共立病院循環器内科部長の伊藤 竜太 先生にお話をうかがいました。

偕行会名古屋共立病院様

|2023-05-19

川原 会長 偕行会グループは決して大規模な医療機関ではありませんが、MRIと高精度放射線治療システムは愛知県で最初に、ガンマナイフは2番目に導入しています。また、PET-CTを臨床検査に導入したのは当グループが日本で初めてでした。このように、常に先を見据えて最先端の医療機器を導入し、医療の質の向上に努めるという歴史が当グループにはあります。また、2035年頃にはAIとロボットを組み合わせた医療技術革命が起こると私は思っているのですが、今回導入したCorPath GRXはその先駆けだと考えています。読影や診断をAIが行うような時代を前に、こういった先進的な医療機器を使いこなしていかなければ、医療技術革命に向けて後れをとってしまうと判断したわけです。

さらに、当グループの透析施設は22施設あり、約3500人の患者さんが透析治療を受けています。日本透析医学会の調査によれば、透析患者さんの約25%が心疾患により亡くなっています。そこで偕行会では、グループ内のクリニックで心疾患のスクリーニングとしてアンモニアPET検査に力を入れているのですが、約3割の透析患者さんに異常所見が見られ、心臓カテーテル検査が必要だと判断されました。今回の積極的なCorPath GRXの導入には、グループ内でのそういった背景もありました。

川原 会長 新しい技術が導入され、最先端の機器に触れられるというのは、職員にとっても喜びです。仕事に自信と誇りが持てるのではないでしょうか。また、伊藤先生が実施した1例目のPCIを見学したのですが、最初の手術にもかかわらず、手間取ることなく約1時間で終了しました。あまりに早くてびっくりしましたね。今後、症例を重ねていけば、時間もより短縮し、手術も伊藤先生と助手1人で済むわけですから、時間の節約と省力化の両方が実現し、経営的にも非常に良いと感じています。

若い医師を育てるのも我々の使命ですが、CorPath GRXに興味を持つ若い医師が当院に研修にくるようになり、赴任先でCorPath GRXの存在を喧伝して導入施設が増えれば、それは医療技術の向上にもなりますし、PCI用支援ロボットのさらなる高度化にもつながっていくことでしょう。さらに、こういった優れた新しい技術の導入は、新しい医療マーケットの創出にもつながります。そのためにも、伊藤先生には、「CorPath GRXといえば伊藤先生」といわれるような存在になってほしいと期待しています。

伊藤 先生 使用する前に考えていたよりも、思い通りに、自然な形で手技ができるというのが正直な感想です。デバイスが入りすぎない、抜けてこないというロボット特有の機能も良いと思います。デバイスの固定の良さによる安定感・安心感があります。一方で、感触や手応えがないという不安はありますが、そのぶん、目の前の透視画像をより集中して見るようになりました。通常のPCIでは手の感覚に頼っていたと思い込んでいたのですが、実は視覚から得る情報に頼っていた部分がかなり大きかったのではないかと、ロボット支援PCIを5例実施する中で気づきました。また、通常のPCIでは、たわみや抵抗感、摩擦力などを全部織り込んで、頭の中で自然に処理しながらガイディングを動かしているのですが、CorPath GRXにはそれがない。時短のために織り込み済みでできていた自然な動きが、ロボットでは使えないといった挙動の違いがあるので、蛇行のある症例などでは慣れるまでに少し時間がかかってしまうかもしれませんね。ただし、1 mm単位で正確にデバイスを動かすことができるので、ズレやジャンプは最小限に抑えることができます。

伊藤 先生 現状では、CTO(慢性完全閉塞性病変)ではなく、アテレクトミーデバイスを使用しない症例、アンカーやガイドエクステンションデバイスを使用しなくても対応できる症例を適応としています。シンプルな症例であれば、さほど経験を積んでいない医師でも問題なく使えるでしょう。今後、より習熟していけば、もっと複雑な症例にも十分取り組んでいけると感じています。最近では、「この症例はロボット支援PCIで対応できないかな」と常に考えてから決定するようになりました。また、遠隔操作により被ばく線量が大幅に軽減され、操作も座ってできますから、若い医師や女性医師でも安心して使用できるのではないでしょうか。ただし、通常のPCIの手技が上手な人の方が、やはりロボット支援PCIも上手だと思いますので、ロボットだけというのではなく、通常のPCIの習熟度も高めながら、ロボット支援PCIの手技も学んでいくというのが良いでしょう。

伊藤 先生 マイクロカテーテルやイメージングカテーテルに対するデバイス制限がなくなるといいですね。とくにイメージングカテーテルは、日本のPCIでは当たり前に使っているものなので、制限がなくなれば大幅に使い勝手が向上すると思います。また、アメリカではEVT(下肢動脈血管内治療)にもCorPath GRXが使用可能だと聞いていますので、日本でも早く使用できるようになることを期待しています。EVTは治療が長時間に及ぶことも多く、PCIよりも術者の被ばく線量が多いので、CorPath GRX使用によるメリットはより大きいといえるでしょう。FP(大腿膝窩動脈)領域で、ステントを留置せずにDCB(薬剤コーティングバルーン)だけで終わるような狭窄症例には、ストレスなく使えるような気がします。私自身も今後症例を積み重ね、より習熟度を高めたいと考えていますので、興味があり、見学したいとお考えの方がいらっしゃれば、ぜひ、お越しください。

川原 会長 偕行会の将来的な課題は「認知症への取り組み」と「がんの集学的治療」の2つです。

認知症患者は2025年には約750万人、2035年には1000万人を超すといわれています。認知症に限ったことではありませんが、介護施設になかなか入所できない現状では、介護は家族に負担がかかり、日本では高校生の15人に1人がヤングケアラー、仕事を持ちながら介護するワークケアラーの介護離職者は年間10万人にも上っています。認知症は医療問題であると同時に、今や大きな社会問題です。認知症の6割をアルツハイマー型が占めていますが、根本的な治療薬はまだないため、MCI(軽度認知障害)の段階で発見し、運動療法や音楽療法、人工炭酸泉浴などを実施して、進行を遅らせることが重要となります。名古屋市では無料で認知症の検診を受けられるのですが、受ける人があまりいない。自分では認めたくない人が多いのでしょう。そこで、MCIで発見するためには地域住民の意識改革が必要だと考え、現在、偕行会グループでは認知症についての講演会活動を進めています。

また、がん患者さんの中には、進行がんや遠隔転移を伴うがんで、緩和ケア以外に手立てがないといわれ、治療の場を失ってしまう人が少なくありません。こういった方々に、ピンポイントでがん細胞を温めることによりダメージを与える「温熱療法」や、高気圧の酸素ガスを吸入することで血液中に多量の酸素を溶け込ませる「高気圧酸素療法」を組み合わせ、治療効果を高めるのが、偕行会グループが目指すがんの集学的治療です。実際に、温熱療法だけで寛解に至ったり、抗がん剤とうまく組み合わせることで症状が改善するケースがあります。打つ手がないと見放されてしまった患者さんにとっては、精神的な治療効果も大きなものがあるでしょう。

この2つの大きな柱に、今後は全力で取り組んでいくつもりです。

施設概要

病床数:156床(一般111床・地域包括ケア45床))
主なご導入装置:CorPath GRX
お話をおうかがいした先生

偕行会グループ川原会長

偕行会グループ会長
川原 弘久 先生

名古屋共立病院循環器内科部長 伊藤先生

名古屋共立病院 循環器内科 部長
伊藤 竜太 先生

名古屋共立病院カテーテル室の皆様

カテーテル室スタッフの皆様

名古屋共立病院