脊椎手術におけるCios Spin の新たな可能性
その未来像について
安佐市民病院様導入事例

安佐市民病院は広島県北部の地域医療において中核を担う医療機関であり、その役割を果たすべく手術支援ロボット、カテーテル治療室、AI診断対応型内視鏡センターなどを積極的に導入されています。その中でも整形外科は2018年の整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センターへの改称に伴い、伝統的に行ってきた顕微鏡視下脊椎脊髄手術に加え、膝関節手術にも注力、2022年5月には最新の顕微鏡および手術支援ロボットシステムを導入、現在、モバイルCアームイメージングシステム CiosSpinとナビゲーションシステムを連動させた顕微鏡視下手術に取り組まれています。今回は、同センター主任部長の藤原 靖先生に、Cios Spinを他の機器と連動させた手術の現状と将来展望についてお話をうかがいました。

安佐市民病院様

|2022-08-08
藤原 靖 先生

1980年の病院開設当初から、当科では顕微 鏡視下脊椎脊髄手術に取り組んで来ました。おそらく、この手術を日本で最初に行った施設の1つだと思いますが、2021年の脊椎脊髄手術1,047件(脊髄腫瘍30件)はその殆どを顕微鏡 視下に行っております。当センターの特徴は、顕微 鏡視下手術を基本とし、また胸椎および腰椎における術式では後方脊柱管除圧術が圧倒的に多い点と言えます。

今や外来診療でも3D画像が使われる時代に、手術室だけが2D画像のままというのに限界を感じていたため、術中に3Dイメージが取得できるCios Spinの導入を決定しました。当初の目的は、固定術を行う際にスクリューの状態を確認することだったのですが、他社との連携が進むにつれて、顕微鏡、ナビゲーションシステム、手術支援ロボットとの連動による手技サポートという可能性も新たに出てきました。
事実、今ではCios Spinとナビゲーションシステムを連動させた手術を年間150 件ほど行っており、そのうち固定術は1/3弱、残りの2/3を顕微鏡とも連動させた脊髄腫瘍摘除あるいは脊椎神経除圧術が占めています。

ナビゲーションシステムを使った脊椎手術では、術者がモニタを見ながら手元を操作しなくては ならない瞬間がどうしても出てくるため、その時ばかりは視線を術野から外すしかなく、それが潜在的に危ないと感じることがあります。
ブレインラボ社製「Cirq®ロボットアームシステム」を使用することによって、これまで画面を見ながら行わなくてはいけなかった手元の調整を、ロボットが代わりに行ってくれるようになります。ですので、術者は術野に視線を集中させたまま操作を続け ることができ、安全性が向上しました。
ロボットアームはセッティングに多少の時間を要し、さらに細かいことを言えば、プランニングされた骨の位置が傾斜面だとスクリューが滑ってしまう時があるなど、今後の課題はありますが、それでも良いシステムだと思います。

従来では術前のCTをベースにして手術を行っていましたが、どうしても患者さんの体位は術前(仰臥位)と術中(伏臥位)とで異なるため、二椎体以上が対象となるとレジストレーション時の正確性において問題がありました。しかしCios Spinとの連動によって、患者さんの「術中の」体位で3Dイメージを取得できるようになり、また位置情報を含めたデータをナビゲーション側へ転送することで、結果として複数椎体の位置 関係を正確に突合できるようになったため、精度と実用性において変化を感じています。また、2D透視をしながらスクリューを挿入する従来の方法は、手術のスピードが早い一方で、術者被ばくの問題もありました。手術を受ける患者さんはもちろんですが、特に毎日手術を行う度にX線被ばくが避けられない手術チームのスタッフにとって、ナビゲーション・ロボットを連携していくことで被ばく量を低減できることは、大きなメリットと言えます。

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アームの操作性は良好ですし、X線透視装置としても、また同時に術中コーンビームCT装置 としても使えるという汎用性があります。Cios Spin を使った手術を見学に来た他診療科の医師は、3D撮影が簡便なことに驚いていました。広さに限界のある手術室内であっても場所を占め過ぎることがないですし、また従来のように移動型CT装置とC-armを両方持ち込む必要がなくなったため、手術スタッフからは「使用可能な電源の数や位置が限られている部屋でも、操作の度に複数機器の電源ケーブルを繋ぎ替えたりすることがなくなり、Cios Spin 一つで完結できるようになった」と好評です。

Cios Spinそのものより、周辺機器を工夫する余地があると考えています。たとえば、寝台をさらに薄くコンパクトにすれば、患者さんの位置が中心から多少外れても、同時に捉えたい末端部まで視野に含めながらアームを回転させる余裕ができます。また術中の患者さんの体を固定する器具などにも改良の余地があると思いますし、これらを含めて、術中イメージングに関連する機器を製造している企業同士が、オペに最適なシステム全体を一体となって開発してくれるといいですね。

既に、サージカルドリルをプランニングされた 位置で停止させるシステムが実用化されていますので、脊椎固定術におけるスクリューにも応用 可能だと思います。また前述した通り、当センターは除圧術の方を主体としています。術者が顕微鏡画像等で確認しながら行うのではなく、予定外の域に達すれば、ドリルが自動停止するというような、プランニング通りに正確に骨を削るシステムに繋がればと期待していますし、そのようなシステムが搭載されれば、安全性がさらに向上すると思います。

Siemens Healthineers には、責任感を持ってレスポンスのいい対応して頂けているので助かっています。製品に関して欲を言うと、脊椎の長尺方向に撮像した3D画像を複数枚連結させることができる装置があれば、側彎症の手術におけるアライメント評価時に有用だと思います。またCios Spin に限って言えば、術中のアーム 位置合わせの際に “ここを中心に” と指示すると装置側が自動で動いてくれるようになると 良いですね。ハイブリッド手術室対応のX 線透視・撮影装置ARTIS pheno とCios Spin の、双方の長所を併せ持つような術中イメージング装置を今後提供してくれることを期待しています。


広島安佐市民病院外観

所在地:広島県広島市安佐北区亀山南1-2-1
病床数:434床
主なご導入装置: SOMATOM Definition Flash, SOMATOM Definition AS OPEN, SOMATOM Drive, BIOGRAPH Vision 450(6 R/64CT), MAMMOMAT Inspiration, syngo RT Therapist,  SONOVISTA FX(コニカ), ARCADIS Avantic Gen2, ARCADIS Orbic Gen2, Cios Spin

お話をおうかがいした先生
整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター主任部長
藤原 靖 先生


cios spin
FD搭載モバイルCアームイメージングシステムCios Spin