PET/CT用PSMAバリアントの検討

Hildegard Kaulen, PhD
Photography by Carsten Büll
|2020/07/08

 

前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺がん細胞に発現する特異性の高いタンパク質であり、低分子リガンドに結合することができるため、医療に有用です。低線量または高線量の放射性核種と組み合わせることで、PSMAリガンドは診断や放射線治療で使用されるトレーサーとなります。その可能性は、もともと何年も前に米国で示唆され、ドイツのがん研究センター(DKFZ)のMichael Eisenhut、PhD、Matthias Eder、PhD、およびKlaus Kopka、PhD、ならびにドイツのハイデルベルク大学病院のUwe Haberkorn、MD、およびFrederik Giesel、MD、教授によって認められました。ハイデルベルク大学核医学部門の副部門長であるGiesel氏と、ヘルムホルツ・ドレスデン・ロッセンドルフ(HZDR)の放射性医薬品がん研究所の現所長であり、前職のDFKZ(2013-2019)の放射性医薬品化学部門長でもあるKopka氏は、数年前からPSMAをベースとした診断法と放射線治療の適用を提唱しています。

 

「PSMAをベースとしたトレーサーは、現在世界中で使用されています。」とGiesel氏は誇らしげに語っています。「前立腺がんの病期分類や再分類におけるPSMA PET/CTの利用は、ますます認知度が高まっています。我々のレトロスペクティブデータは、PSMA PET/CTが前立腺がんの生化学的再発患者の約半数において治療マネジメントの変更をもたらすことを示しています。PSMA PET/CTを受けた患者は全身治療を受ける可能性が低く、放射線治療をより個別化することができます。これらの結果は2018年にJournal of Nuclear Medicine誌に発表しました1。」とGiesel氏は述べています。

 

Frederik Giesel and Klaus Kopka sit at DKFZ to discuss the imaging possibilities presented by various PSMA variants.
DKFZでさまざまなPSMAバリアントによるイメージングの可能性について議論するFrederik Giesel 氏とKlaus Kopka氏

また、Giesel氏とKopka氏は、ドイツのトランスレーショナル・キャンサー研究コンソーシアム(DKTK)の傘下で、学術的な資金提供を受け、68Ga-PSMA-11の安全性と有効性を調べるための第I/II相試験を主導しています[a]。「この研究の目的は、PET / CTイメージングにおけるトレーサーの分布が、手術時の腫瘍の広がりとほぼ一致していることを示すことです。要するに、画像上で見たものが実際の腫瘍病変であるという高い確証が必要とされています。」とGiesel氏は述べています。

 

DKTKの研究には、ドイツ、オーストリア、スイスの 11のセンターが参加し、日本と韓国では、Kopka氏とGiesel氏が率いるドイツ連邦教育研究省のプロジェクトの一環として、同様の研究が行われています。「DKTKの研究では、前立腺がん患者173人が参加し、そのうち170人がすでに登録されています。データは来年に分析され、発表される予定です。結果を語るには時期尚早ですが、トレーサーは忍容性が高く、副作用もないと言えるでしょう。」とKopka氏は述べました。

 

 

PSMA PET/CTの付加価値は、ハイデルベルクにおける前立腺がんのクリニカルマネジメントにどのような影響を与えているのでしょうか?「生化学的再発の患者でPSA値が0.2-0.5ng/mlと低い値でも、PSMA PET/CTで再発腫瘍を検出、特定することができます。」と、Journal of Nuclear Medicineに掲載されたハイデルベルクの別の研究を参照しながらGiesel氏は説明します2。「局所再発のみを検出した場合、放射線治療や手術が可能です。孤立性リンパ節転移も外科的治療の対象ですが、数の少ない転移は放射線治療で治療されることもあります。このように分化したアプローチのおかげで、より特異的な治療を行うことができ、ホルモン療法を遅らせることもしばしばあります。患者からはとても感謝されます。」

Frederik Giesel, MD,ハイデルベルク大学病院
ハイデルベルグでは、同様の構造、生体内分布および腫瘍への取り込みを示す2つのPSMAトレーサーが開発されました。68Ga-PSMA-11と18F-PSMA-1007[a]です。 


 どちらの方が成功するか? 

「どちらにも長所と短所があるので、一概には言えません。」とKopka氏は答えます。F-18の長所は、世界中で使用できることです。さらに、Ga-68の半減期が68分であるのに対し、F-18は110分と長い半減期を持っています。これにより、フッ素を一元的に製造し、サテライトセンターに配送することが可能になりました。さらに、F-18は陽電子エネルギーが低いため、より良好な画質を得ることができます。しかし、ガリウムバリアントを支持する重要な論点は、その製造方法にあります。フッ素バリアントの製造にはサイクロトロンを必要とするのに対し、Ga-68ジェネレータは2〜4人の患者のために便利なバッチ製造を可能にします。 「フッ素バリアントの利点は、主に肝臓と腸から排泄され、腎臓と膀胱からの排泄が限られていることです。」とKopka氏は説明します。「尿路経由のクリアランスが低いため、局所再発は隠されません。しかし、最終的には入手可能かどうかも決め手になります。いくつかの企業ではすでに承認試験を開始しています。」Giesel氏によると、ガリウムバリアントの可能性として「コールドキット」があります。物質を混ぜて振るだけで済むので、Ga-68ジェネレータとの組み合わせで取り扱いが容易になります。

Klaus Kopka, PhD, 放射性医薬品がん研究機構 (HZDR); ドイツがん研究センター (DKFZ)

コストの問題

PSMA PET/CTの費用は健康保険会社が負担するのか?Giesel氏とKopka氏はドイツとスイスの状況についてコメントしてくれました。「ドイツでは、PSMA PET/CTは、昨年の前立腺癌に関するS3ガイドラインの更新版で、オプションの推奨事項として含まれており、専門家が研究の価値を認めていることを示しています4が、まだ請求コードはありません。ドイツでは現在、PSMA-PET/CT検査の払い戻しを行うかどうかは、健康保険会社の裁量に委ねられています。ベルリンやノルトライン・ヴェストファーレンなど、ドイツの一部の地域では、すでに健康保険会社との間で合意がなされています」とGiesel氏は述べ、スイスでは68Ga-PSMA-11が進行中の試験結果を待って承認されたことを付け加えています。

治療用放射性核種177Lu-PSMA-617[a]の開発も進んでおり、ホルモン療法に反応しない進行性前立腺癌に対して試験が行われています。「オーストラリアのPeter MacCallum Cancer CentreのMichael Hofman氏らが主導した第II相試験は、The Lancet Oncology誌に発表され、治療用バリアントに関する我々の経験を裏付けました。」とGiesel氏は述べています。「Hofman氏のデータによると、多くの患者で177Lu-PSMA内用療法後にPSA値が低下し、腫瘍が縮小することが示されていますが、無増悪生存期間や全生存期間についてはまだ何も言えません。」とGiesel氏は付け加えています5。

Hildegard Kaulen, PhD, は分子生物学者です。ニューヨークのロックフェラー大学、ボストンのハーバード大学医学部での勤務を経て、1990年代半ばにフリーランスの科学ジャーナリズムの分野に移り、評判の高い日刊紙や科学雑誌に多くの寄稿をしています。

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