救急患者連携搬送料の改定ポイント(2026年度改定)
救急における連携関係
2024年度改定で新設された救急患者連携搬送料は、三次救急医療機関など地域の救急医療の中心となる施設において、退院困難な軽症~中等症患者の搬送によって病床が逼迫し、本来の役割である重症患者の受け入れが困難になる事態を軽減することを目的としています。
具体的には、救急搬送受入件数が年間2,000件以上の医療機関が、救急外来を受診した患者または入院3日目までの患者について、医師・看護師・救急救命士のいずれかが同乗し、自院または転送先の救急車を用いて、あらかじめ作成した受入先候補病院リストに掲載された医療機関へ転院搬送した場合に算定できる点数であり、救急患者のいわゆる「下り搬送」を評価するものです。
2026年度改定では、図の右下に示すように、医師・看護師・救急救命士が同乗しない場合の点数や、自院または搬送先の救急車以外を使用した場合の点数に加え、受入先医療機関が算定する点数が新たに設定されました。さらに、長時間加算が新設されるなど、下り搬送に対する評価は一段と拡充されることとなりました。
救急患者連携搬送料の改定内容
改定前後の点数については、搬送元が算定するものをオレンジ、受入先が算定するものをブルーで示しています。改定前は、搬送元または受入先のいずれかの医師・看護師・救急救命士が同乗し、搬送元または受入先の救急車で搬送した場合に、搬送元が算定する仕組みでした。対象は入院3日目までの患者で、搬送したタイミングに応じて1,800点から600点までの4段階の点数が設定されていました。
改定後は、受入先にも点数が設定されました。搬送元・受入先の双方に高い点数と低い点数の2段階の点数が設けられ、同乗者を出した医療機関が高い方の点数を、同乗者を出さなかった医療機関が低い方の点数を算定する仕組みとなっています。グラフ上端に示した数値は、搬送元と受入先を合算した点数です。いずれかが同乗者を出していれば、合計点数は改定前を上回る設定となっています。さらに、いずれかの医療機関が同乗者を出した場合には、搬送に要した時間が30分を超えた際に長時間加算700点が算定可能となりました。一方、どちらの医療機関も同乗者を出さなかった場合であっても点数が設定されています。車両のみを出した場合や、患者搬送業者の車両を使用した場合などが該当し、この場合は搬送元・受入先ともに、2段階のうち低い方の点数を算定します。なお、搬送元が同乗者を出す場合において、①の「入院中の患者以外」の患者の点数は、改定前から大きく引き上げられています。入院前段階における下り搬送を特に高く評価する改定といえますが、これを適切に実施するためには、検査や画像診断を含めた迅速かつ正確な診断体制が求められます。
今回の改定では受入先にも点数が設定されたことから、候補リストに掲載される医療機関と事前に協議し、時間帯や患者の状態などに応じて、どちらが同乗者を出すかといった優先パターンを受入先ごとに決めておくことも、実務上有効と考えられます。
救急外来に関する点数の再編
救急外来に関する点数についても、大きな再編が行われました。全体として算定対象が拡大され、新設された点数もあります。本ページでは主な変更内容を一覧で示し、患者ごとの合計点数の変化については、6ページで示します。救急搬送された場合と、それ以外(いわゆるウオークイン)の場合がありますが、まず図の上半分、救急搬送の場合について見ていきます。改定前は夜間・土曜・休日のみが対象であった「夜間休日救急搬送医学管理料」は、名称から「夜間休日」が外れ「救急搬送医学管理料」となり、平日日中も算定対象となりました。また、改定前は初診患者に限定されていましたが、改定後は再診患者も対象となっています。点数は1・2・3の3段階で設定されていますが、これには病院の体制や実績を要件とする施設基準が設けられています。
精神科疾患患者等受入加算は、名称および点数に変更はありませんが、平日日中も算定対象に加わりました。一方、改定前の救急搬送看護体制加算は廃止され、代わって施設基準のない「時間外救急搬送加算」が新設されました。この加算は、搬送された時間帯に応じて3段階の点数が設定されています。さらに、全く新たな点数として「救急外来緊急検査対応加算」が新設されました。これは平日日中および夜間・土曜・休日のいずれも算定対象となり、点数は施設の体制や実績に応じて1・2の2段階となっています。次に、図の下半分、救急搬送ではなくウオークインで受診した場合についてです。改定により「夜間休日救急医学管理料」が新設され、この点数も施設の体制や実績に応じた3段階となっています。ちなみに図では夜間・土曜・休日となっていますが、この点数の対象となるのは、その医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜において救急外来を受診した患者です。救急外来緊急検査対応加算については、救急搬送の場合と同じ点数が設定されています。また、院内トリアージ実施料は「院内トリアージ実施体制加算」に名称が変更され、対象患者がトリアージ実施患者のみから、初診・再診患者へと拡大されました。一方で、点数については大幅な減点となっています。
新設点数の施設基準
表は、救急搬送医学管理料1・2・3、夜間休日救急医学管理料1・2・3、救急外来緊急検査対応加算1・2について、主な施設基準を比較したものです。今回の改定では、救急搬送件数が多くの点数において施設基準に組み込まれましたが、これらの点数についても同様の扱いとなっています。いずれの点数においても、最も高い点数である「1」の算定要件は、救急搬送件数が年間1,500件以上(人口20万人未満の地域では1,200件以上)とされています。また、「2」の算定要件は800件以上(同640件以上)です。救急搬送件数が800件未満の場合、救急外来緊急検査対応加算は算定できません。一方、救急搬送医学管理料および夜間休日救急医学管理料については「3」の算定が可能ですが、点数はかなり低く設定されています。また、検査体制やコメディカル職種の配置についても、これら3つの点数すべてに共通する施設基準として位置づけられています
救急外来 患者1人あたりの点数の範囲
改定前と改定後について、救急搬送の有無および時間帯ごとに、患者1人あたりの合計点数の範囲を比較した図です。「最大」は、1・2・3といった段階設定のある点数や各種加算について、最も厳しい施設基準をすべて満たしたケースを指します。一方、「最小」は、これらの施設基準を満たさないケースです。なお、時間帯によってのみ点数が決まる時間外救急搬送加算については、「最大」は休日等夜間の場合の300点、「最小」は休日等日中の場合の200点として記載しています。実際には、この「最大」と「最小」の間にさまざまなケースが存在します。
改定前後の変化を見ると、まず救急搬送で夜間・土曜・休日の場合、救急搬送件数が1,500件以上(人口20万人未満の地域では1,200件以上)の病院では、休日等夜間で患者1人あたり400点、平日日中では1,100点もの増加となります。地域の医療機関間であらかじめ協議を行い、それぞれが得意とする対応パターンを分担することで、収益向上や働き方改革につながる可能性があると考えられます。
救急外来 患者1人あたりの点数の詳細
新設点数の施設基準のポイントである年間の救急搬送件数に応じて、今回の改定により、救急外来における患者1人あたりの点数がどのうに変化するかを一覧にしました。なお、救急搬送件数以外の施設基準については考慮していない点にご留意ください。
上段は、救急搬送された患者の場合です。表の1行目および2行目に救急搬送件数を示しています。4ページの表に示したとおり、人口20万人以上の医療圏と20万人未満の医療圏では基準となる搬送件数が異なるため、その点に注意が必要です。また、夜間・土曜・休日に搬送された患者の場合と、平日日中に搬送された患者の場合に分けて整理しています。
該当する救急搬送件数の列の最下段には、今回改定による患者1人あたりの点数と金額の増減(プラス・マイナス)を記載しています。夜間・土曜・休日に搬送された患者については、年間の救急搬送件数が800件未満の病院では、改定によりマイナスとなっています。これは、改定前に一律600点であった夜間休日救急搬送医学管理料が、改定により救急搬送件数に応じた3段階の救急搬送医学管理料へと変更され、800件未満の場合は200点となったためです。一方、平日日中については、今回の改定で新たに評価対象となったことから、その分の点数が上乗せされ、夜間・土曜・休日で生じるマイナス分を十分にカバーできると考えられます。
なお、改定前の救急搬送看護体制加算(夜間・土曜・休日が対象)は、救急搬送件数が1,000件以上で400点、200件以上で200点であったことから、本表でも1,000件および200件で列を分けて数値を示しています。この救急搬送看護体制加算は今回の改定で廃止されたため、夜間・土曜・休日については、救急搬送件数が1,000件を超える病院では、1,000件未満の場合と比べて改定によるプラス幅が小さくなる結果となっています。
下段は、救急搬送ではない患者の場合です。これは、当該医療機関が掲げる診療時間外、休日または深夜に救急外来を受診した患者を対象とした点数です。こちらについても、該当する救急搬送件数の列の最下段に、今回改定による患者1人あたりの点数と金額の増減を示しています。
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