急性期の入院基本料の改定
2026年度診療報酬改定では、急性期の入院基本料に、急性期病院A一般入院料、急性期病院B一般入院料が新設され、その2つの入院料の施設基準に「病院全体の急性期機能」が含まれることになりました。病棟単位で届け出る入院料でありながら、病院全体としての機能が求められるのです。「病院全体の急性期機能」の内容はいくつかあるのですが、メインとなるのが図の下部※1※2に記された救急搬送件数と全身麻酔手術の件数実績です。病院は、その実績などに応じて新設された急性期病院A・B一般入院料か、あるいは従来からある急性期一般入院料1~6か、いずれかを選択することになります。
急性期病院A一般入院料は看護配置は7対1以上で、点数は急性期一般1よりも高く、急性期病院B一般入院料は看護配置は10対1以上で点数は急性期一般3と4の間の点数です。また、急性期病院B一般入院料と急性期一般4を対象に新設された「看護・多職種協働加算」が算定できれば、合計点数は急性期病院B一般入院料であれば急性期病院A一般入院料と急性期一般1の間の点数になり、急性期一般4であれば急性期一般1と同じ点数となります。
急性期の入院基本料 おもな施設基準の比較
急性期の入院基本料のおもな施設基準の比較です。ブルーの字は今回改定で新設あるいは変更された部分です。
看護配置は急性期病院Aと急性期一般1が7対1以上で、他は10対1以上。看護・多職種協働加算は急性期病院Bと急性期一般4に設定されていて、多職種(看護職員、PT、OT、ST、管理栄養士、臨床検査技師)の25対1以上の配置が必要です。
重症度、医療・看護必要度の該当患者割合についてはのちほどお示しする変更があって「指数」と呼ぶようになっていますが、急性期病院A、急性期病院B、急性期一般1が同じ数字となっています。平均在院日数、在宅復帰・病床機能連携率、その他(医師の員数など)、救急搬送等の病院の実績として図の通りの基準があります。この実績については、急性期病院Bについてのみ、人口20万人未満の医療圏と離島のみからなる医療圏について緩和された条件が設定されています。急性期病院A・Bの救急搬送件数の実績については、夜間(22時から翌朝8時まで)の受け入れ件数が全体件数の1割以上であることも条件となっています。また、急性期病院Aについては地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の届出をしていないこと、急性期病院Bについては地域包括医療病棟の届出をしていないこと、も条件となっています(経過措置あり)。
急性期の入院基本料 点数の改定
これまで数回の診療報酬改定における入院基本料の点数の変遷は、左のグラフの通りで、今回新設の急性期病院A、Bが四角い点です。急性期一般1~6については今回の改定で、大きく上がっていることがわかります。アップ率は右の表のとおり、8%台から11%台です。
そして今回、物価対応料という点数が各入院料に新設されており、今年6月から、そして来年6月から、表にある点数を上乗せできますので、それを含めると改定前と比較して表にお示ししたアップ率になります。
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度 の改定①
今回改定では、急性期病院A、Bの入院料以外にも、救急搬送件数と全麻手術件数などの実績が施設基準に新たに組み込まれたものが数多くあります。
特定集中治療室管理料1~3では救急搬送件数は急性期病院Bの要件よりやや少ない数字、全麻手術件数は急性期病院AとBの要件の間の数字となっています。ハイケアユニット入院医療管理料では救急搬送件数は急性期病院Bの要件よりやや少ない数字、全麻手術件数は急性期病院Bの要件と同じ数字となっています。PICUやNICUの病床が多い場合と人口の少ない地域では別建ての数字があります。脳卒中ケアユニット入院医療管理料では、超急性期脳卒中加算と経皮的脳血栓回収術の算定件数が合計で年間20以上という実績要件が加わりました。またDPC標準病院群については、救急搬送により入院した患者数や全麻手術件数によって、基礎係数を2段階に分けることとなりました。
急性期入院料への高額な加算に関する改定
急性期の入院料に対する高額な加算に関する改定についてです。2種類あります。
まず図の上段です。急性期充実体制加算1・2と総合入院体制加算1~3は、施設基準が微妙に異なっていたのですが、今回その施設基準が一本化され、急性期総合体制加算1~5に再編されました。新設の急性期総合体制加算の詳細な施設基準は厚労省の資料でご確認いただきたいですが、従来の2つの加算の両者あるいはいずれかの施設基準に含まれていた内容がほとんどとなっています。点数は全般的に上がっており、仮に退院患者数10,000人/年で全患者に11日算定した場合には、その総額は従来の同等の加算よりもほぼ1億円ずつアップしています。ですが、この急性期総合体制加算1~5の対象となる入院料は、加算1~4は急性期病院A一般入院料のみ、加算5は急性期病院AおよびB一般入院料に限られています。これまで急性期一般入院料1、2などで急性期充実体制加算や総合入院体制加算を算定していた病院は、急性期病院AかBに切り替えなければ、同等の加算を算定することができなくなります。
もうひとつの金額の大きな加算が、今回新設された看護・多職種協働加算です。点数の高い加算1は急性期一般入院料4が対象、加算2は急性期病院B一般入院料が対象です。この点数も仮に退院患者数10,000人/年で全患者に11日算定した場合には、その総額はほぼ3億円になります。入院料とこの加算を合計した1日あたりの点数を、この加算の対象ではない急性期病院A入院料、急性期一般入院料1と比較すると、図の下段右側のようになります。
改定後の入院基本料と加算の組み合わせが経営に大きく影響
今回改定にあたって、入院基本料をどれにするか、また加算はどれを算定できるのか、が病院にとって極めて重要になります。中でも改定前に急性期充実体制加算や総合入院体制加算を算定していた施設では、同等の加算がとれるかどうかが重要です。大幅増収もあり得る一方、減収の可能性もあります。
次のページで考えられるすべてのパターンの具体的な数字をお示ししますが、まずはここにいくつかの例を挙げてみました。改定前に急性期一般入院料1で急性期充実加算を算定していた施設では、急性期病院A一般入院料に切り替えて急性期総合加算をとるか、10対1に落として急性期病院B一般入院料にして、急性期総合加算5と看護・多職種協働加算2をとるパターンなら増収です。もともと7対1だったところを10対1に落としても看護師がそのまま残っていれば看護・多職種協働加算の人数部分は満たしていますので、その後ゆっくり他の職種に入れ替えて行けば良いことになります。いっぽう、改定で新たな加算がとれなければもちろん減収、急性期病院Bになって加算が急性期総合5だけとなっても減収になります。改定前に急性期1で総合入院体制加算を算定していたところもほぼ同様ですが、急性期1だけになった場合には、改定前の加算が総合入院の1~3のどれであったかによって増収/減収が変わります。
いっぽう、急性期1や2でとくに加算を算定していなかった施設であれば、そのまま急性期1や2で行っても入院料のアップ分だけは増収になりますが、それでは物価上昇分がクリアされる程度であり、病院の「利益」増加に貢献するほどにはなりません。むしろ、急性期病院Bや急性期4に落として看護・多職種協働加算をとったほうが増収分は大きくなります。
収支変化モデル試算(改定前に急性期一般入院料1算定の場合)
改定前に急性期1を算定していたケースについて、算定していた加算の種類や有無のタイプごとに、改定後に理論上可能なパターンと各パターンの増収・減収金額の試算を一覧にしました。
改定後のパターンは理論上可能なものを増収の多い順にひととおり挙げていますが、改定後の加算が改定前よりも上のランクになると思われるケースについては欄をグレーにしています。ただ、施設の状況によっては可能性がある場合も考えられます。各加算や入院料の施設基準を詳細にご検討いただければと思います。
金額の計算は退院患者10,000人/年、全患者11日算定とした場合、という単純なパターンで計算しています。表の数字に「貴施設の年間の退院患者数÷10,000」を掛けた数字でご判断ください。なお、物価対応料は計算に含めておりません。一番上の行、急性期1で急性期充実1を算定していた施設の場合は、急性期Aに切り替え可能のケースがほとんどと思われ、あとはどの加算をとれるかが課題になります。急性期総合1をとれればかなりの増収になります。
2行目、同じく急性期1で、急性期充実2を算定していた施設でも急性期Aへの切り替え可能性はかなり高いと思われますが、加算については急性期総合1は急性期充実2より上のランクになると思われるため、グレーにしました。以下の行では同様の理由でひとつずつグレーの欄を増やしてあります。
一番右の列は、右から2番目と同じ数字です。改定前に急性期1の病院が改定後も急性期1にする場合と、急性期4に落として看護・多職種加算をとる場合では、1日あたりの点数は同じなので増収金額も同じ、ということです。看護師不足で困っているケースでは後者もあり得る選択なのでしょうか?
改定前後の収支変化(改定前に急性期一般入院料2、3、4算定の場合)
改定前に急性期2,3,4を算定していた病院の場合の表です。金額の計算方法は前ページと同様です。
急性期2の施設の場合、急性期Aに切り替えるケースはグレーにしました。急性期3、4の施設では急性期Aへの切り替えは表に含めておりません。
前ページとこのページの表でグレーになっているパターンや表に含めなかったパターンを、実現するご施設が出てこないかが注目されます。
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