臨床検査技師の将来を見据えた臨床検査科の取組免疫生化学統合分析装置Atellica Solutionの導入とこれからへの期待

 

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静岡徳洲会病院 様

|2022-03-30
Atellica Solutionの導入事例(静岡徳洲会)検査室の皆さま

医療法人徳洲会 静岡徳洲会病院は、静岡県静岡市において “生命を安心して預けられる医療”、“健康と生活を守る病院” を理念として地域医療において欠かせない役割を果たしています。今回、2021年5月に導入されたAtellica Solution(ScI)(以下Atellica)の現在の評価と今後への期待について、臨床検査科の上田 真路 技師長、望月 美孝 副技師長にお話を伺いました。

望月 美孝 副技師長
上田 真路 技師長

上田 技師長:医療法人 徳洲会 静岡徳洲会病院は一般病床403床、療養病床96床の499床を有しています。ケアミックス型の病院であり、静岡医療圏において、急性期から慢性期、回復期を含めてトータルでの医療を提供し、地域医療を支える役割を果たしています。

検査科の職員数は非常勤職員を合わると20名、4月には2名採用する予定ですので、合計で22名となり、増員を計画しています。現在のルーチン検査では、検体検査は6名、生理検査は8名の技師で日々の臨床検査業務を実施しています。4月に予定されている増員は、目に見える単純な利益率だけで考えると厳しい側面もあります。一方で、チーム医療やタスクシフティングなど検査室外の業務に積極的にかかわっていくことが、今後さらに臨床検査科が求められていくという社会的な背景もあることを忘れてはいけません。これらを両面から考えることが、人員計画を検討する際に重要です。加えて人への投資という意味においても、今後も優秀な人材を確保していく必要があると考えています。

昨今では、検体検査の人員を減らして生理検査へ配置するという流れがあると思いますが、当院では検体検査の件数が増えてきています。さらに加えて、COVID-19といった社会的な課題に直面したことによっても検体検査関連の業務が増えています。このような状況の中でまだ検体検査から生理検査への人員の配置変更には着手していません。

当院では、すでに検体系はかなり少ない人数で業務を実施しているので、さらなる人員の最適化はAtellicaの拡張性次第だと考えています。検査室外業務としては、COVID-19の検体採取を積極的に行っており、ほぼ1名を検査室外に派遣していてます。検査技師が常駐で入院前、オペ前の検体採取やドライブスルー検査の検体採取を実施し、PCR検査を行っています。たとえば、関連施設でクラスターが発生した際は、そちらにも追加で1名を検体採取に派遣する体制を整えています。

生化学検査のTATは図に示した通りですが、緊急は30分、通常は45分程度での報告を目標としています。検体検査のグループは生化学、免疫、血液および一般検査を午前中2-3人で対応しています。午後は、検体採取がある場合は、1人体制で対応を行っています。

上田 技師長:私が技師長になったタイミングで、生化学免疫検査に限らず、検体検査で使用している機種が16年目を迎えており、更新を検討していく必要がありました。そのなかで生化学免疫検査の分析装置も検討に上がったのがきっかけです。これまではSiemens Healthineersとは別のメーカーの免疫生化学統合分析装置を使用しており、その分析装置の更新機種の選定を始めました。(写真:上田 技師長)

望月 副技師長:日本医療検査科学会の機器展示で3社の免疫生化学統合分析装置を見学し、Atellicaではなく他社の分析装置を第一候補として検討していました。Atellicaに関してはオートQCや一本検体搬送が魅力的ではありましたが、設置面積が大きいことが難点だという声が上がりました。そのため、Atellicaと他社の分析装置の2機種を候補機種として、検討を進めていきました。

検討を進める中で他社の分析装置はこれまでの機器の延長にあり、分析装置を新しくしてもあまり検査室の運用が変わらないことが決め手に欠ける点でした。一方でAtellicaを選定した場合は、運用が大きく変わり、新しい検査室を構築できることが魅力的でした。オートQCやマグラインによる一本検体搬送、サンプルハンドラーによる検体自動仕分けなどの特徴的な機能を活かして検査運用を一新し、効率化することができると感じました。特に魅力に感じたのはメンテナンスを自動でできるオートメンテナンス機能です。時間のかかる流路洗浄などのメンテナンスを夜間に自動で行えることは非常に効率的で、日中に行っている生化学分析装置のメンテナンス業務を大幅に軽減できると感じました。前述の通り当院ではAtellica 導入前から少ない人数での検体検査体制を構築していましたので、Atellicaの導入が人員の再配置にすぐにつながるわけではないですが、全体的に余裕をもって業務ができるようになり、付加価値を出せる業務へ注力できるのではないか、と考えました。

選定過程において、営業から既に導入された施設でのAtellica による具体的な運用改善事例のプレゼンテーションを聞き、Atellicaへの期待がより具体化されていきました。これらを経て、最終的にAtellica(CH930 1台、IM1600 1台を連結したScI)を選定しました。

上田 技師長:Atellica の個々の機能も魅力的でしたが、モジュール方式の統合機なので、後から機能を追加することができ、進化していくことのできる分析装置だという将来性に特に魅力を感じました。昨年、採血管の自動開栓機能であるAtellica Decapper が新たに発売されたことを聞きましたが、今後も検査前工程や後工程の一部が自動化される機能が追加され、分析装置がバージョンアップされていくことに期待しました。さらに、Siemens Healthineersが徳洲会グループとパートナーシップを締結していることも大きな魅力でした。Siemens Healthineersは放射線領域や生理検査領域も手掛けているので、検体検査だけでなくこれらの検査情報をベースにした包括的なAIシステムの開発や生理検査のトレーニングプログラムにも注目をしています。また、パートナーシップを結んでいる強固な関係により、疑問点や改善要望にも、個々の病院への対応ではなく、徳洲会全体を見てSiemens Healthineersとして一段と注力して対応してくれるということも期待できました。

機種の選定に関しては、徳洲会グループにはグループ全体の検査部会があり、そこで推奨機種などを設定しています。Atellicaは新しい分析装置ということもあり、導入に伴うメリットや他の分析装置に対する優位性、シミュレーションなどを入念に行い、選定に至った根拠を詳細に提出して承認を得たうえで、導入しました。

Atellica Solutionの導入事例(静岡徳洲会)上田技師長

望月 副技師長:生化学の測定法が検体前希釈方式に変わったため、切り替え時は少し不安がありましたが実際に検討、使用してみると特に問題なく使えています。Atellicaの導入にあたり前機種と1カ月間の並行稼働期間を設けました。そのため、試薬の切り替えに関しても検査現場だけでなく臨床の現場も大きな混乱なく実施することができました。

運用面での変化に関しては、特に当直者の負担が大きく減りました。当院では当直帯は、1人ですべての検査を実施しています。当直中に、生化学のブランクキャリブレーションや電解質のキャリブレーションを実施、完了させて、翌日の担当者に引き継ぐルールなのですが、Atellicaの導入によりこれらの業務が自動化されたことは非常に大きなメリットだと思います。加えて、Atellicaの電解質測定は専用カートリッジ式のため、検査技師によるメンテナンスや毎日のキャリブレーション作業が必要ないのも大きなメリットだと感じています。生化学試薬はAtellicaになり、専用試薬になりましたので、これまで試薬交換や補充後に実施していたキャリブレーション、コントロール測定という一連の作業がなくなったことも業務の軽減につながりました。Atellicaの試薬は生化学および免疫ともに、未開栓の状態で分析装置へ装填することができます。装置が必要なタイミングで自動的に開栓して使用するため、連休前なども試薬開封後の安定性を気にすることなく、余裕をもって試薬を搭載しておけることも運用の利便性の向上につながっていると感じています。

測定中でも試薬をいつでも搭載することができるうえに試薬残量が設定したテスト数以下になると、アラートを出してくれるので、それも便利ですね。アラート機能と測定中でも常時補充可能な専用試薬という特徴があるので、試薬追加のフローが大幅に改善されたと思います。測定自体も検体のバーコード面を気にする必要がなくなったのもヒューマンエラーの防止に一役かっています。専用ラックに搭載してドロワーを閉めるだけで、サンプルハンドラーの中でロボットアームが検体をマグラインに搭載するというシステムなので、より直感的に扱えるようになったと感じているのは、Atellicaの力も大きいと感じています。

上田 技師長:以前の機種を使用していた際は日勤帯の検体が来ない時間帯を見計らって、試薬の交換を行っていました。汎用分析装置ではAtellicaと異なり、試薬交換後にキャリブレーション等の作業が必要でした。機器のメンテナンスを含めて日勤帯に検査技師が行う作業が長時間必要になり、どうしても技師が拘束されてしまいます。Atellicaを導入したことでこれらの業務が軽減されました。検査技師1人をCOVID-19関連の検体採取に派遣しても余裕をもって通常の検体検査業務にあたることができています。

望月 副技師長:導入当初は、採用メーカーが変わったので、エラーが起きた際にどのような対応をするべきなのか苦慮したこともありました。ここについては、Siemens Healthineersのトレーニングセンターで装置の詳細なトレーニングを受けたことで、エラーメッセージの内容を深く理解でき、エラーの対処方法も明確になりました。いろいろな疑問が氷解したので、より自信をもってAtellicaを扱うことができていると感じています。

総合評価としては10点満点中8点です。現状のAtellicaにおおむね満足しています。この点数にはモジュール方式の特徴を活かした今後の機能追加により、さらに臨床検査技師の効率化を追求した装置へと進化してくれることへの期待を込めています。(写真:望月 副技師長)

Atellica Solutionの導入事例(静岡徳洲会)望月先生

図:静岡徳洲会病院におけるAtellica 導入前後の生化学免疫検査の平均TATの比較

Atellica Solution導入事例(静岡徳洲会)TAT比較CH

生化学検査

Atellica Solutionの導入事例(静岡徳洲会)TAT比較IM

免疫検査

上田 技師長:臨床検査技師が必要な場所はある程度決まってきていて、AIの活用が進んでくれば、これらもさらに変わってくる可能性もありますが、いまのところは形態学や細胞診、エコー検査などは残っていく、と思います。一方で、臨床検査科という組織として何が重要になっていくのかは常にアンテナを張って、最新の動向を把握する必要があります。これらを総合して、少し先を見据えたうえで必要とされる場所の人材を厚くしていく必要がある、と感じています。当院における検査科の人員の増員についてもそこを意識しています。人材育成という観点としては、現在の環境下では、なかなか1つの分野のスペシャリストということは難しくなってきています。これからの医療環境を考えると、少ない人数でも幅広く検査業務をカバーしていくため最低限の能力を身に付けたジェネラリストの育成が必須であると考えています。” 広く浅く”となってしまわないためにも、その中で興味をもって面白いと思えるような分野については、知見を深めてき、年次に応じて認定技師などを目指していく。そのようにモチベーションを高く持ち、検査業務全般を幅広く修め、特定の分野においては、高度な専門性を発揮していける人材が理想的なのかと考えています。

望月 副技師長:検査結果の報告に関しては、臨床に対して付加価値をどう出していくのかが重要になっていくのでは、と考えています。検査結果を返すだけではなくレントゲンなどの結果と合わせて、診断の補助をより積極的に実施していく必要があると思います。

上田 技師長:検査室外で臨床検査技師という役割が活かされていくこともどんどん増えていくのだと思います。たとえば外来で検査データを臨床検査技師が説明することが現状でもあると思いますが、これについても保険点数が加算されるようになると一気に広がると思います。タスクシフティングの推進においても、当院では検査科の技師全員が静脈路の確保の講習を受けます。この業務は、おそらく当院でもニーズがあると考えています。自己血糖測定に関する一連の業務、喀痰の採取、内視鏡のガイドワイヤー生検鉗子を操作することなど、今まで明確化されていなかった業務についてもあいまいな部分が解消され、自信をもって実施できるようになってきています。COVID-19のワクチン接種についても、残念ながら静岡市では自治体からの要請がなく実施はできませんでしたが、我々も研修を受け依頼があればいつでも実施できる体制を整えました。これら昨今の事例からも読み取ることができるように、今後、臨床検査技師が検査室外で活躍の場が増えていくのは間違いないことだと考えています。一度開いた扉は決して閉じないので、しっかりと時流を読んで新しい技を身に着けていくことが大切です。

(取材日:2022年3月30日)

Atellica Solution事例:静岡徳洲会外観
  • 所在地:静岡県静岡市駿河区下川原南11-1
  • 病床数:499床
  • お話をおうかがいした先生:臨床検査科 上田 真路 技師長、望月 美孝 副技師長
  • 主なご導入装置:Atellica Solution(ScI), SOMATOM go.Top, Biograph Horizon, MAMMOMAT Inspiration, Artis zee biplane, teamplay