
医療法人尚豊会みたき総合病院(199床)は、工業地域として知られる三重県四日市市に位置しており地域の医療において欠かせない役割を果たしています。2019年9月に導入されましたAtellica Solution(Scci)への期待、現時点でのご評価、健診領域で検査室の果たすべき役割などについて、奥田 容山 検査室長、藤田 るみ子 主任にお話を伺いました。
なによりサンプルハンドラーの有用性が光ります。健診の検体は一度に大量に来るので、それを一気に投入できるのが非常に便利です。可能であればサンプルハンドラーをもう1台接続してもよかったかな、と思うほどです。

これまでルーチン帯は検体検査に3人を充てていたのですが、自動化が進んだAtellica を使うことで、2人検体検査を実現することができるようになりました。スタッフ一人を新たに雇うことは難しいですが、現状を効率化することで、1人分の新たなリソースを生み出すせたことは大きな成果です。

奥田 室長:当医療法人尚豊会は、北勢医療圏に位置する総合病院(199床、人工透析センターおよび緩和ケア病棟を含む)、在宅ケアセンター、健診クリニックからなります。当法人では地域に密着して地元の住民の方々や患者さんから信頼される医療を提供することを大きな目的としています。その一つの特徴として総合診療科があげられます。初期診療のスペシャリストとして機能するだけでなく在宅診療から終末期医療まで実施しています。どうしても入院できない患者さん、自宅にいなければならない患者さんを医師がしっかりとフォローすることが、地域医療における安心感や信頼感につながると考えています。容態が悪くなった際は、すぐに当院で診るという在宅医療のプロセスと合わせて安心の医療サービスを提供することで、地域医療にも貢献を果たせていると考えます。
奥田 室長:検査室は14人で運営しています。検査室として特徴的なのは、院内に加えて併設するみたき健診クリニックからの検体を受けていることです。生化学検査の検体数は月間で約7,100件、1日平均すると約320件ありますが、そのうちの約80%が健診由来の検体です。みたき健診クリニックはクリニックで実施する以外にも巡回健診としてバスで企業など訪れて実施する健診もあります。健診検体は午前中の検査が落ち着いてくる午後から本格的に出検され、最終検体の出検時間はバスがクリニックに戻ってくる17時頃になります(図1)。また、病院の診療では夕診もあるので、午前診、健診、夕診、巡回健診のような流れで途切れることなく検査依頼があります。つまり、スタッフも分析装置も1日フル稼働しています。当院で導入したAtellicaは生化学2式で3,600テスト(比色:2,400テスト、電解質:1,200テスト)の処理能力です。病院だけの施設規模に比べると、オーバースペックのようにも思えますが、健診の検体数も考えると適切なスペックであると考えています。夜間帯の検体は、緊急検査の連絡があった際に呼び出し当番が対応するように体制を整えています。
図1:みたき総合病院検査室の代表的な検査依頼の出方とAtellica 導入前後の1日のスケジュール

図2:みたき総合病院におけるAtellica 導入による効果

奥田 室長:併設しているみたき健診クリニックに、いかに迅速に検査結果を返すかだけではなく、前回値データとの比較など常に緊張感をもって取り組んでいます。健診においては1年に1度の定期健診のケースも多く、定期的に外来でフォローしている病院の患者さんよりも検査の頻度は低くなっています。病院に定期的に通院している患者さんは、頻回な測定が行われるので、検査値をトレンドで診る先生が多いのですが、健診の場合、1年に1度のワンポイントのため、検査技師においても検査値の変動が生理的変動に基づいた許容誤差限界幅なのか他項目データとの相関などを読み解きデータの変動を理論的に説明できる能力が必要になります。また、再検査に対応するため健診の残検体は2カ月間、超低温のフリーザーで保存しています。健診検体では、当日の到着後に迅速に検査を行うものと翌日に実施するものがあります。(写真:奥田 室長)

奥田 室長:機器選定は、3社の比較を行いました。比較項目は、測定時間の短縮(受診者満足度向上、効率的な診療、測定に掛かる人件費改善)、試薬経費、保守費用、更新に伴う機器撤去費用、減価償却期間を数値化した対照表を作成し稟議文書に添付して提出、その後プレゼンテーションを行いました。この際、業務改善効果や収支予想が明確でないと、了承されることはありません。その点、Atellica Solutionは、従来の機器と比較し大きな業務と収支の改善が可能となることからスムーズに了承していただきました。
藤田 主任:以前使用していた生化学汎用分析装置同機種2台が導入後10年を迎えること、免疫検査の分析装置がリース満了することがあり、選定を始めました。営業担当者からの詳細な説明を受け、導入施設への見学にも伺い、見学を経てAtellica(CH930 2式とIM1300 1式の3台連結)を運用している施設を選びました。この装置であれば、検査材料費の削減、検査時間の短縮、人件費の削減の結果、業務の改善が行えると考えました。
材料費の削減ですが、試薬費用の検討だけではなく、1本検体搬送の統合器であるAtellicaを採用することで、これまで生化学と免疫で2本採血していた採血管を1本に集約できることを考えました。検査時間の短縮は特に免疫項目の寄与が大きく特に診療前検査として行われることが多いPSAを10分、TSH、FT3、FT4を14分で測定できることに魅力を感じました。
人件費の削減については、オートQCを活用することで早出出勤の削減だけではなく、自動再検などの様々な機能でルーチン帯の検査にかかる人数も減らすことができると考えました。
奥田 室長:生化学と免疫分析装置を同一メーカーの製品を使用するのは、保守契約の観点からも、いい選択だと考えました。2社の装置を使うよりも1社に統合すれば、その分保守契約の費用が圧縮できます。
奥田 室長:なによりサンプルハンドラーの有用性が光ります。繰り返しになりますが、健診の検体は一度に大量に来るので、それを一気に投入できるのが非常に便利です。可能であればサンプルハンドラーをもう1台接続してもよかったかな、と思うほどです。
藤田 主任:大量の健診検体を処理している最中に、外来の検体が来た際はSTATラックを用いて、優先順位付けを簡単にできるのもいいですね。出検元、緊急度が異なる検体依頼が混在していても通常ラックとSTATラックを使い分けることで臨床の望む報告時間を、実現しやすくなっていると思います。これはロボットアームが採血管をキャリアに載せるというAtellica独自のプロセスによるものだと考えています。エラー検体と外注用検体を仕分けるロジックも組んでいます。これによって検査技師の介入が必要な検体が一目でわかりますし、誤って外注検体を載せてしまっても、仕分けして排出してくれるので、ミスが起こることが限りなく少なくなっています。これまでルーチン帯は検体検査に3人を充てていたのですが、自動化が進んだAtellicaを使うことで、2人検体検査を実現することができるようになりました。スタッフ一人を新たに雇うことは難しいですが、現状を効率化することで、1人分の新たなリソースを生み出すせたことは大きな成果です。
奥田 室長:早出出勤が1時間15分削減されたのが大きいです。前述の通り、ルーチン帯は絶え間なく検体が来ているため、生化学装置の2台体制が欠かせません。ですので、必然的に試薬補充やキャリブレーション、QC測定などは、朝に実施していました。慣れていない技師は、6時30分から早出して対応にあたることもありました。
藤田 主任:その点、Atellicaでは専用試薬であり、測定中でも試薬ボトルの追加が可能となるため、ルーチンをしつつ試薬を追加することができます。朝や夕方に必要な試薬をまとめて、補充するなどの時間を確保する必要がないです。以前の機種では試薬を目分量で足していたので、つぎ足す量にも注意を払い、特にR1試薬、R2試薬の量が異なる項目では試薬量の少ないR2試薬の充填量に気を付ける。ラテックス項目はしっかり攪拌して充填するなど、注意しなければならないことがたくさんありました。早番は持ち回りで行っていますので、いろいろな意味で作業を標準化するのが難しかったですね。それに加えて、オートQCが朝のQC測定を実施してくれるので、凍結したQC試薬を溶かす手間や実際に測定する時間を確保する必要がなくなったのでとても大きな効果を感じています。メンテナンスにおいては夜間に自動で行ってくれるよう設定しているので、ルーチン時間帯は検体処理の進捗状況を気にしながらメンテナンスをする必要がなくなりました。データの安定性も上がっています。特にHBs抗原検査では顕著です。当院ではHBs抗原検査の依頼が毎月600件ほどあるのですが、前の機種では毎月10件ほど偽陽性による再検がありました。再検が発生すると、再遠心も行うので、大きく時間をとられ、報告時間が大幅に遅れてしまいます。Atellicaを2年以上使用していますが、この時間を通して偽陽性による再検が発生したのは数件ほどです。
奥田 室長:海外出張の前に感染症検査を実施していく企業もあります。そうした場合は、朝に受診いただくのですが、その際に偽陽性が発生し、再検査などで時間がとられると、健診中に結果を報告できないこともありました。比較的急がない院内の感染症検査と異なり、健診ではこういったケースもあるので結果をクリアに判別できるAtellicaのHBs抗原検査を高く評価しています。
藤田 主任:ちょうど先日、日本臨床検査技師会の精度管理サーベイの報告書が届いたのですが従来機種と比較して高成績でした。検査データは、安定した精度が求められることが多いなかで、生化学検査、免疫検査の外部精度管理サーベイにおいて精度の改善が可能となりました。
藤田 主任:まずは採血本数を減らしたことは喜ばれました。これまで一般的な健診では生化学、免疫、CBC、HbA1cの4本でしたが、それが3本になったことで、採血のスピードが上がったという話を聞きました。加えて、免疫検査の報告時間が非常に短くなり診療効率が向上したと、臨床医からご評価いただいています。PSAは従来の1/3、甲状腺は1/2の時間で測定できるようになりました。臨床医から、これまで1人しか診られなかった時間枠で2人、3人と患者さんを見ることができるようになった、というお話を聞いて臨床検査技師として診療に貢献できていることを実感し、とてもうれしく思います。(写真:藤田 主任)

奥田 室長:当院では、施設認定を取得して、睡眠時無呼吸症候群の検査である終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)を睡眠認定技師が検査を実施しています。この検査は、患者さんに病院に宿泊していただいて、睡眠時の脳波や呼吸の状態、心電図、いびき、酸素飽和度などセンサーを取り付けて一晩中連続して記録する検査です。検査技師が2交代制で検査、対応にあたっています。1泊していただくので、患者さんに快適に過ごしていただくためのホスピタリティーも重要だと考え、設備を含めて病院全体で取り組んでいます。検査後のアンケート調査では90%以上の患者さんに大変満足と答えていただいております。常に患者さん目線で考え行動することが重要と考えます。
奥田 室長:検査室は利益創出部門として、どれだけ病院の経営に寄与できているか常に考え運営をしています。検査コストの計算では、年度末に検査室にかかわる請求書を業者よりExcelファイルにて提出いただきます。検体検査では、その測定結果を出すために必要な検査経費、材料費(試薬、消耗品)、減価償却費(検査機器・冷蔵庫・保冷庫・遠心機など)、維持費(保守費)を各検査項目(生化学、免疫、血液、腫瘍マーカーなど)別に割り当てて1件の検査費用を算出しています。また、レセプト請求額をモニタし、どれくらいの利益率になっているか管理しています。加えて、医療法人尚豊会において、みたき総合病院とみたき健診クリニックは企業でいうところの事業部が分かれているような形になっていて、健診クリニックから受託した検査に対して、検査室では請求書を毎月発行しています。各職員の業務には、毎年更新される人事分掌があり詳細に担当者が選任されており、精度やコストについて責任をもって担当することが組織運営において重要な事項と考えています。収益から前述の検査経費を引いて算出した利益に対して占める人件費の割合はかなり優れていると自負しています。検査室は、コスト的に自立存続できていて、迅速で正確な検査データを提供するだけでなく、更に一歩進んで、経営に貢献していかなければならないと考えています。
(取材日:2022年2月3日)

- 所在地:三重県四日市市生桑町菰池458-1
- 病床数:199床
- お話をおうかがいした先生:奥田 容山 検査室長、藤田 るみ子 主任
- 主なご導入装置:Atellica Solution(Scci)