
2021年5月1日に設立70周年を迎えた南大阪病院は、急性期医療から包括ケアまで、当該地域医療全般をカバーする中核病院です。今回は、Atellica Solutionの新規導入から2ヵ月が経過した同院を訪ね、評価、今後の臨床検査業務における活用について福田 隆 院長、臨床検査科の桑山 和哉 科長、伊澤 久美子 科長補佐、上地 裕美 主任、上遠野 明 技師にお話をうかがいました。
Decapperが大いに役立っています。今では朝出勤する時点で当直業務がほぼ終了していますので、これまでの開栓作業がどれだけ大変だったのか、改めて実感しています。この他に、Atellica Solutionでは検体の投入および回収の負担が軽減されました。

試薬の補充時に機械を停止しなくていい点、採血管の開栓が自動化された点が検査業務効率化の上でとても役に立っています。以前よりも検査業務の流れがシームレスになったと感じます。

福田 院長:当院は大阪府初の民間総合病院です。がん診療拠点病院に指定され、リハビリテーションクリニック、透析センター、健診センター、内視鏡センターを併設しています。内視鏡検査数は年間1万件を超え(平成29年度実績11,216 件)、これは大阪市立大学関連病院の中で最多であり、その関係から食道裂孔ヘルニアの手術件数は全国第1位の実績を誇っています。また、コロナ禍にあっては、急増する新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるために50床の1病棟を専用病床に改編しました。これらはいずれも「地域からよろこばれ、信頼される病院をめざす」という病院理念を実現するための施策です。
私は昨年、院長という役職を拝命したばかりですので、現時点ではこれまでの70年間に培ってきたレガシーを未来に繋いでいきたいと考えています。しかしながら、その大前提として、激変する医療環境の中で病院として生き残っていかなければなりません。その上で、地域医療に貢献することで病院の理念を全うしながら、かつ、事業を継続する経営のあり方というものを追究していきたいと考えています。(写真:福田 院長)

福田 院長:新規の医療機器の導入に当たっては、「地域からよろこばれ、信頼される病院をめざす」という理念に適っているか、そして、病院としての事業継続への貢献度をもって要否および可否を判断しました。この度、Atellica Solutionを選択した主な理由には、検体投入から測定までの全自動化による業務効率の向上がありました。業務効率の向上により業務の幅を広げたり、突発的な作業などに臨機応変に対応できるようになることで、最終的に患者さんの利便性向上に繋がるという点が挙げられます。また、Siemens Healthineersによる365日24時間体制のカスタマーサポートにより、トラブル発生時の迅速な対応が得られることも必要条件の一つでした。これらの利点は上述の病院理念を追求し、かつ激変する医療環境下で事業を継続するための経営戦略を具現化する上でも有用であると判断し、導入を決定しました。
桑山 科長:これまで使用していた検査分析装置は、2011年12月の新病院移転時に医療機器の全面的な刷新に合わせて導入したものでした。そのため経年劣化の兆しが見え、更新の時期にさしかかっていました。今回の機器更新は前回の更新とは異なり、優先度に応じて順次更新するため2018年頃から機器選定を進めており、各メーカーから情報収集し、入念に比較検討を重ねました。その際の主要な検討項目は、①導入初期費と維持費を合わせたトータルコストと収益の予測、②臨床検査科における業務フローへの影響、少なくともTAT(TurnAround Time)が長くなるようなことがないこと、③スタッフの習熟レベルを問わない操作性、特に、当直スタッフの業務負担への影響、④ ISO15189認定取得を意識し、精度保証を担保するためのデータトレーサビリティ機能が備わっていることでした。導入を決定後は、機器変更に伴う他部署の業務への影響を想定し、無用な摩擦を避けるべく看護師長会、医局会に対する説明会を稼働前に複数回実施しました。(写真:桑山 科長)

桑山 科長:スタッフ総数27名、そのうち今年度の新入職員が1名、再雇用が2名、非常勤1名という構成になっています。主たる業務内容は、検体検査(生化学・免疫血清・血液・一般)、輸血検査、微生物検査、生理機能検査、病理検査、健診センター業務となります。
また、当院では毎年4月に提示される病院全体の事業計画に基づき、当科所属部門である診療支援部のBalanced Scorecard(BSC)が策定されますので、それに従って臨床検査科としての年間行動計画を立てます。そして、この計画を私との話し合いによりスタッフ個人に落とし込みます。科長として年2回、スタッフ全員と個別面談を行い、その席で進捗状況をチェックし目標達成についてディスカッションします。幸いなことに、当科は協調性に富む人材に恵まれ、相互に積極的にサポートに入るなど、協力し合いながら業務を進めるという雰囲気のある部署になっています。この柔軟なチームワークや協力的な雰囲気が検査を効率的に進めるための基礎になっていると感じますし、当科の強みだと思います。
上地 主任:桑山科長から示された方針に必要性を感じ、相互に助け合いながら仕事を進めています。そのようなチームワークが我々臨床検査科の大きな強みだと思います。(写真:上地 主任)

福田 院長:導入から2ヵ月しか経過していないので戸惑うところもあるようですが、使い慣れればメリットが明確になってくると考えています。現時点では、Atellica Decapper(自動開栓装置、以下Decapper)の機能を臨床検査科のスタッフが高く評価していると聞いています。
桑山 科長:まず、自動化機能を搭載し、迅速・正確・簡便な免疫・生化学検査を実現するというAtellica Solutionのコンセプトを高く評価しています。ただ、この装置が持つパフォーマンスを最大限に引き出すにはもう少し時間が必要なようです。以前の免疫分析装置は3世代に亘って使用しましたが、初代の段階ではトラブルが決して少ないとは言えず、しかし、2代目で改良が進み、3代目になると安定をみました。同様のことがAtellica Solutionにも言えると考え、今はユーザー側のニーズにメーカー側がどのように対応してくれるのか、期待とともに注意深く観察しているところです。
なお、院長の福田が指摘したDecapperは、特に、当直担当者に評判がいいようです。当直担当者は、日勤のスタッフとの業務交代までに病棟から回収された検体の処理を可能な限り済ませておく必要があります。この作業には原則として当直担当者1名で対応することから、かなりの負荷がかかっていましたが、Decapper導入以降はむしろ余裕を持って終了できているようです。もちろん、日勤業務においても時間を要し、感染リスクなどの懸念もあった採血管の開栓作業ですから、人の手を煩わすことなく機械に任せることができれば自ずと業務は効率化し安全性の向上にも繋がります。その効果は、業務が集中するときほど大きくなります。
また、当院ではコロナ禍に対応し、病棟1つを新型コロナウイルス感染症専用に転換しました。そのような背景からも、スタッフが検体に接触する機会を減らし、感染リスクを低下させることを可能にするAtellica SolutionとDecapperの導入には大きな意義があると言えます。
伊澤 科長補佐:Decapperが大いに役立っています。今では朝出勤する時点で当直業務がほぼ終了していますので、これまでの開栓作業がどれだけ大変だったのか、改めて実感しています。この他に、Atellica Solutionでは検体の投入および回収の負担が軽減されました。サンプルハンドラー** が検体を自動的に仕分けしてくれるからです。また、これまで行っていた検体のバーコードの面出しも不要となり、特に、検査業務量がピークとなる午前9時半から10時の作業効率が上がっていると感じています。(写真:伊澤 科長補佐)
上地 主任:精度管理物質がサンプルハンドラー上の保冷庫に保管され任意で設定したタイミングで自動的に測定されるので、精度管理の作業が軽減されました。また、装置を停止させることなく試薬や消耗品の交換ができますので、その分の時間を他の業務に充てています。検体の自動仕分け機能も便利で、エラーがあれば赤く表示されて戻ってきますので、一目でラックのどこに戻り検体があるのか判断がつき、対応が容易になりました。採血管の開栓の自動化に関しては、特に、当直担当者から本当に楽になったという話を聞きます。オーバーキャップタイプの採血管の栓はきつく締まっているものが多く、開けるのに結構な力が要るのです。なお、私は生化学検査の担当で、これまでは日本製の装置を扱うことが多かったせいか、Atellica Solutionの操作性などにまだ慣れない点もあります。Siemens Healthineersには、ユーザビリティの点を考慮して今後対応していただければと思います。
上遠野 技師:試薬の補充時に機械を停止しなくていい点、採血管の開栓が自動化された点が検査業務効率化の上でとても役に立っています。以前よりも検査業務の流れがシームレスになったと感じます。これからのAtellica Solutionに期待するところもあり、お互いに情報交換しながら、更なる機能向上を楽しみにしています。
桑山 科長:機器変更や新規導入の際の判断基準は、概して一致したとしても細部は施設状況、事情によって千差万別だと思います。問題は、導入を決定し、いざ、稼働させてから生じる部署間の行き違いにあるように思います。これにいかに上手に対処するかが導入後の業務を円滑に進めるコツだと考えています。
今回のAtellica Solutionについては、Decapperを使う上で従来の採血管からオーバーキャップタイプの採血管に変更する必要がありました。採血管の変更は医局には関わりのないことですが、看護部に対して無断でという訳にはいきません。「今後はこれを」という一方的なお願いでは円滑な移行の妨げになる可能性がありますから、Decapper導入のメリット、現状の採血管の在庫量から想定される新たな仕様の採血菅への移行時期などについて、看護師長会で事前に説明し、了承を取り付けました。
また、項目によっては従来装置と差異が生じることもあります。このような項目に関しては、医局会での事前説明会を実施することにより、Atellica Solution稼働後、大きな混乱を生じることなくスムーズな切り替えが実現できました。検査分析装置の変更が何らかの影響を及ぼす可能性のある部署に対しては、事前の綿密な調整が極めて重要であることを助言しておきたいと思います。
桑山 科長:以前から業務フローの効率化を行っていたのでAtellica Solutionの導入により検体検査の業務フローは大きく変わらないと考えています。ただ、この装置のコンセプトは大変気に入っていますし、導入以前と比較するとDecapper機能により検査業務の効率化が格段に向上されるものと期待しております。もっとも私がこの装置に期待をかけている点は、データトレーサビリティ機能です。データのトレーサビリティが担保されることはISO15189認定の要求事項をクリアする上での要件であり、Atellica Solutionはそれを満たし得る装置だと考えています。今後のISO15189取得に貢献してくれることを期待しています。
一方で、8 年後には臨床検査科のあり方が今とは異なっているであろうという予測に立ってこの装置を導入したのも事実です。8 年後にはこうなっているであろうという具体的な予測はできませんが、今とは異なる状況になると考えています。検査分析装置は進歩するでしょうし、エコー検査もAIにより身近な検査になるかもしれません。しかし、医療提供体制がどのように変化し、施設機能がどのように分離あるいは統合され、その結果、検査分析装置がどのように配置されるか、検査技師の役割、臨床検査科の業態の変化については、全く予想がつきません。よりチーム医療との関わりが重要になっているかも知れません。訪問診療に関わるようになり、検査科スタッフは医療チームの一員として同行するようになっているかもしれず、そうであれば医療機器はモバイル化が必須となります。もはや、操作に特別な技術や知識が求められない時代になるかも知れませんし、そのときに技師に求められる能力としてデータマネージメントスキルや患者さんに検査(結果)についての説明する能力が重要になると考えます。未来予想がつかないからこそ、これからやってくるであろうさまざまな変化に即応できる能力を備えたスタッフを育て、環境変化に柔軟に対応できる組織をAtellica Solutionと一緒に構築していこうと考えています。
(取材日:2021年6月29日)

社会医療法人景岳会 南大阪病院
- 所在地:大阪市住之江区東加賀屋1-18-18
- 病床数:400床
- お話をおうかがいした先生:
福田隆 院長、臨床検査科 桑山和哉 科長、伊澤久美子 科長補佐、上地裕美 主任、上遠野明 技師 - 主なご導入装置:Atellica Solution ×2, Atellica Decapper ×2