検体検査業務改善が支える検査科の新しい価値免疫生化学統合分析装置Atellica Solutionの導入に至る経緯とその活用

 

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JR東京総合病院 様

|2021-11-04

東京都心に位置するJR東京総合病院は急性期から回復期リハビリ、地域包括ケアと地域医療において中核的な役割を果たしています。今回は、2019年3月にAtellica Solution(以下Atellica)を導入してから約2年が経過した同病院を訪ね、選定時の検討、現在のご評価、コロナ禍における新規検査業務の拡充、検査室外業務の推進について、
土田 一樹 技師長、舩山 英明 副技師長、大野 順司 副主任、小野寺 涼 技師にお話を伺いました。

大野 順司 主任
舩山 英明 副技師長

土田 技師長:臨床検査科は現在40人のスタッフが所属しています。免疫・生化学、血液検査で1日500-600本ほどの検体を処理しており、検査部としては、もともと外の仕事をしっかりしていきたいという計画のもとで動いていました。しかし、新型コロナウイルスの蔓延があり、ここ1年半ほどは新型コロナウイルスの検査拡充を進めました。先月(10月)あたりから検査件数も減ってきたので、本来目指していた方向性である乳腺エコーなど生理機能検査の拡充、耳鼻科検査や糖尿病指導など検査室外業務へのシフトをさらに強化していこうと考えています。

機種選定においては、担当部署、専門の検査技師だけではなく、他の部門のスタッフも選定に関わることで、いろいろな目を入れることが大事だと思います。昔とは異なり宿直も当たり前になってきている昨今ですので、簡便な操作性や画面のレイアウトなど専門外のスタッフが選定に入ることで新たな気づきもあります。例えば、当院においてはメーカーの協力をいただき、実機を用いたデモを行い、いろいろと議論をしたうえでAtellicaを選定しました。この判断は間違っていなかったと思います。(写真:土田 技師長)

Atellica Solution事例:JR東京 土田技師長

舩山 副技師長:実際に免疫の分析装置を導入するとなった際にAtellica IM1600を含めて、3社の候補がありました。AtellicaはオートQCをはじめとする業務の効率化に繋がる機能に魅力を感じていましたが、一部の感染症に少し測定時間が長い項目があったのが、気にかかりました。一方で、検体1本搬送(Atellica マグライン)や、時間440テストの処理能力など、他社にはない特徴もあり、検体の取り回しを考えると、他社の分析装置とどの程度報告時間に差が出るのか興味があるところでした。それまでは他社の免疫装置を使用していたのですが、検体が滞留してしまうことや、装置内に検体が入った後しばらく戻ってこないことがありましたので、そういったところが改善されるのか、とも考えました。当時デモをしていた他社の同等機種とAtellica IM1600を用いて、同等の条件で検体を測定して、それぞれの結果報告時間を比較してみました(図1)。すると、ルーチン検査のように多くの検体を同時に測定する環境だと、Atellica IMのほうが41分も早く終わることがわかりました。実際の検査のTATを考える時に、単に測定時間だけでなく処理能力や検体搬送の流れ方、検体の渋滞など、多くの要因が絡み合っていることを感じました。

大野 主任:実際に使ってみて、TATは全く問題ないです。そもそも感染症はそこまで至急性が高くないですしね。それこそ当院で、より至急性が求められる甲状腺と循環器の検査は、すごく早い。臨床からも内分泌検査が早くなったと声をいただきます。当院では外来迅速加算を算定するために必要になるのが内分泌の項目ですので、そこが早くなったのは非常にありがたいと感じます。外来迅速加算に含まれる消化器系の項目は、当院では継続的にフォローしている患者さんが多く、次回来院時に検査結果を伝えるため、やはり内分泌検査の速さのインパクトが強いですね。

小野寺 技師:導入した時は測定時間が30分だったものが46分になったので、臨床の先生も前より遅くなったという感覚になるのかな、と不安でしたが、蓋を開けてみるとそういった問い合わせもなく、安心しています。通常診療時間帯は全体的に目まぐるしく動いていますので、個々の項目で長いなと感じることはないですね。(写真:小野寺 技師)

舩山 副技師長:装置のTATではないですが、従来は生化学免疫検体の投入ルールが複雑だったため、担当者が検体の投入から結果の確認・承認まで行っていました。Atellicaが導入され項目を集約できたので検体投入に関するルールがシンプルになり誰もが検体投入することができ、生化学免疫の担当者は結果の確認、承認の業務に集中できるようになりました。結果が出ていても未承認で報告が遅れてしまうといったことがなくなりました。

Atellica Solution事例:JR東京:小野寺技師

小野寺 技師:生化学の部分が非常に楽になりました。以前は汎用機を使用していたのですが、週に1回プローブ洗浄と、廃液流路の洗浄、恒温槽の洗浄で1時間半ぐらい作業時間が必要でした。この作業をすることで、「検体を測定できなくなってしまうな」「残業になってしまうな」と考えると実施するタイミングの判断に苦労しましたし、実際作業を見送ることもありました。装置のためにはこのメンテナンスは実施することが良いことなのはわかってはいるのですが…。その点、Atellicaでは以前使っていた機種と同じように洗浄時間はあるのですが、スケジュール機能を使い、夜中に自動メンテナンスを行うように設定していますので、実際にはほぼ省略されているような印象です。朝検査室に到着したら、順調に洗浄メンテナンスが終わっているので、すごく助かっています。プローブ表面の洗浄は、手で実施するのですが、当院では週1回だけなので煩雑さやわずらわしさは感じません。

舩山 副技師長:以前使用していた汎用機の場合は、人がついてメンテナンスをしないといけないのでいろいろと制約がありました。作業後の確認があるので、当直者に任せづらいところもあり勤務時間内にメンテナンスを実施していたのですが、その時間帯は1時間半ほど検査が止まります。止まっている間に検体が来てしまうと、測定できずクレームになってしまいました。Atellicaの場合はスケジュールを組んで分析機に自動でメンテナンスをさせることができるので、検体の出る可能性のある時間帯を避けられるのがいいですね。

大野 主任:メンテナンスもそうなのですが、自動精度管理「オートQC」も便利です。信頼度も高く、朝8時ぐらいに出勤しても、スムーズに検査が進められます。こういった点もメリットだと感じています。

土田 技師長:COVID-19はかなり早い段階で装置の申請ができ、2020年の5、6月ぐらいにはPCR検査の装置を導入し、2021年9月末までにはトータルで20,000件ほど実施しています。全国的にもPCR検査のニーズが高まり、技師を募ってもなかなか技師の供給が追い付かない状況でした。そこでAtellicaの導入により余力が創出された生化学免疫のメンバーを中心にPCR検査の拡充に対応できたのは非常に良かったです。人員面で考えると、数年前の検査体制ではPCR検査を実施するのはなかなか厳しかったと思います。現在は万が一検査科でクラスターが発生した時のリスクを考え、ある程度、部門をまたがって対応したほうがいいという考えを持っており、私も含めて6名の技師が持ち回りで担当しています。

小野寺 技師:PCR検査は現在1日に2バッチかけるルールになっていて、朝11時に締め切りの第1便と、15時に締め切りの第2便があります。第1便は15時までに、第2便は19時までに結果を報告するといった感じです。1回で最大96テストあると3時間ぐらいかかります。検体検査はPCR検査にスタッフを派遣している時は1名減で対応しています。生化学免疫も多い時で3人いるのですが、そのうち1人は採血と兼務、1人は耳鼻科と兼務しています。Atellica導入による効率化によって、PCR検査体制の確立を円滑に進めることができました。

大野 主任:PCR 以外のところで言うと、COVID-19でKL-6の依頼が増えました。それをAtellicaに載せて測定できるようになったので結果が早く出るようになり、臨床から喜ばれています。

舩山 副技師長:耳鼻科関係の検査業務サポートが特徴的かもしれません。聴力検査(毎日)とめまいの検査(週2日)、新生児の聴力検査(週2日)などをサポートしています。新生児の検査は生理検査部門の技師にも手伝ってもらっています。めまいの検査はさまざまなプロセスがあり、患者さん1人の検査をドクター含めて3人で行い、2-3時間かかります。11時からスタートして、2人目の患者さんの検査が終わるのが17時過ぎぐらいになるので、ほぼかかりっきりになりますね。最近は、耳鼻科の顔面神経の手術にも立ち会うようになりました。顔面神経に触れるとストレスがかかり聴力が落ちるため、手術中は聴力を測定し術中モニタリングをします。聴力が落ちてくると、その神経への処置は一旦中断します。10-15分ほど待っていると、聴力が戻ってくるので手術再開の判断の補助になります。他のスタッフにもこのような経験をしてほしいと思っています。

その他に現在は耳鼻科の業務をもっと増やせないかと検討しています。例えば、現在当院ではインフルエンザ検査のスワブによる検体採取も医師が行っています。ですので、診療のフローは先生が患者さんから検体を採取して、検査にかけ検査結果が出て、その後診察するといった形です。呼吸器も耳鼻科もインフルエンザの流行時期は外来の同じ場所で検体を採取して、結果だけ持っていくようなシンプルなフローにできないか考えています。もちろん、検査だけではなく看護師や医師と一緒に手伝ってもらいながら、より良い形を模索していけたらな、と思っています。個人的にはできることはまだまだあると感じています。

土田 技師長:現在は、どのメーカーも装置の質が上がってきていると感じています。装置の信頼性が低い時代は、どの領域にもスペシャリストが配置され、データのチェックをしていくというのが当然でした。現在は時代が変わってきており、自分の仕事以外にも幅広く対応できる能力が求められてきているように感じています。当検査科では、全員が自分の専門業務以外でも2つか3つぐらいの業務をこなせるようになってきています。例えば、生理機能のエコー検査を担当しながら一般の受付や採血の対応をします。バックボーンをしっかりと持ちつつ、専門以外の業務も幅広く対応できるようにしたいと思います。そういった臨床検査技師をどんどん増やすことで、検査科としてもより高いパフォーマンスが出していけると感じています。

舩山 副技師長:普段から検査室の外に出て医師や看護師と話していると、今以上に臨床検査技師に対応できることはたくさんあり、看護師の方たちからも期待されていると感じることがあります。そういうこともあって私自身、外来に積極的に行くようにしていますが、日々の会話からヒントが得られることも多いです。検体についての疑問など検査に関わることで力になれることも多くあり、日ごろからのコミュニケーションで自然とやれることが見つかってきます。検査科の多くのスタッフに、臨床の場での更なる活躍に期待をしています。

(取材日:2021年11月4日)

JR東京総合病院2
  • 所在地:東京都渋谷区代々木2-1-3
  • 病床数:425床
  • 取材にご協力いただいた先生:
    臨床検査科 土田 一樹 技師長、舩山 英明 副技師長、大野 順司 主任、小野寺 涼 技師
  • 主なご導入装置:Atellica Solution (Sccl, Scl), ADVIA2120i (x2)