アレルギーの診断

アレルギーの診断アレルギー検査試薬アラスタット3gAllergy*の特徴や日常診療ですぐに使える情報

アレルギー検査試薬アラスタット3gAllergyとは

新しい特異的IgE検査“アラスタット3gAllergy”は従来法にない高感度(検出限界0.1IUA/mL)とワイドレンジ(~500IUA/mLまで定量測定)を可能にした第3世代の特異的IgE検査です。“3g”は、3rd generation(第3世代)を意味します。

特異度の改善と高感度・ワイドレンジの実現
第2世代からの変更点は、

  • 固相アレルゲンから液相アレルゲンに改良することで反応性を向上させるとともに立体障害を最小化し特異度を改善。また、個々のアレルゲン濃度を至適濃度に調整することで反応液中の抗原抗体反応をピーク状態に維持
  • 測定原理をEIA法からCLEIA法に改良することで最小検出感度を0.1IUA/mLと高感度に、また測定限界を500IUA/mLまで広げ高感度・ワイドレンジを両立

 

立体障害を最小化するための技術

立体障害を最小化するための技術
抗原を固相化するときには目的抗原のエピトープと抗体の結合が阻害されないようにする必要があります。特に分子量が小さい場合は、抗原を担体に直接的に結合させるとエピトープがブロックされてしまうことや、立体障害により抗体がエピトープにアクセスできないことがあります。アラスタット3gAllergyでは抗原のアミノ基と反応するNHSエステルをスペーサーアームとして用いることで立体障害を最小化しています。この技術により、反応性を向上させるとともに特異度を改善しました。

タイトレーションカーブ
液相アレルゲンは、アレルゲンと特異的IgE抗体の反応を至適濃度に維持できます。
反応系のアレルゲン濃度を至適化することで、アレルゲン量不足による特異的IgG抗体の干渉を防ぐとともに、IgE抗体過剰による反応性の低下も防ぐことができます。

検査結果の判定および濃度単位(IgE 抗体濃度(IUA/mL)とクラス分類

クラス

IgE抗体濃度(IUA / mL)

判定

0

<0.10
0.10 - 0.34

陰性
微弱陽性

1

0.35 - 0.69

弱陽性

2
3
4
5
6

0.70 - 3.49
3.50 - 17.4
17.5 - 52.4
52.5 - 99.9
100≦

陽性

プロバビリティーカーブ
一般に広く普及している特異的IgE抗体の測定値はアレルゲンへの感作を示す指標であり、必ずしも患者様のアレルギー症状と一致するものではありません。原因食物の確定診断には食物負荷試験が行われますが特異的IgE抗体価が高いほど当該アレルゲンによる症状発現率が高いことが知られており、連続した特異的IgE抗体価と誘発率との関係をグラフに表したプロバビリティーカーブが作成されます1)
プロバビリティーカーブは、日常診療に活用することでアレルギーの発現率を予想することが可能となります。また、リスクの高い負荷試験を回避することもできます。ただしプロバビリティーカーブはあくまで統計的な手法による確率論(参考値)ですから、母集団や特異的IgE抗体の測定方法などで発現率が異なってくることに注意してください。

1) Komata T, Ebisawa M, et al: J Allergy Clin Immunol 119(5):1272-1274, 2007

アラスタット3gAllergyによる卵白のプロバビリティーカーブ
アラスタット3gAllergyによる卵白のプロバビリティーカーブ

アラスタット3gAllergyによる卵白と牛乳のプロバビリティーカーブ
プロバビリティーカーブの読み方:特異的IgE抗体値の上昇に伴い症状発現の可能性が高くなります。
卵白の特異的IgE抗体値が19.5IUA/mLの場合、症状誘発の可能性は約50%、3.54IUA/mLでは約30%です。牛乳の特異的IgE抗体値が162IUA/mLの場合、症状を誘発する可能性は約90%、4.68IUA/mLでは約50%、1.23IUA/mLでは約30%です。

アラスタット3gAllergyと従来法の換算表

アラスタット3gAllergyと従来法の換算表
アラスタット3gAllgeryの卵白特異的IgE抗体値430 IUA/mLは従来法の100 UA/mLに相当し、牛乳特異的IgE抗体値278 IUA/mLは、従来法の100UA/mLに相当します。

出典:アラスタット3gAllergyによる食物アレルギーの診断とプロバビリティーカーブ
監修:国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部 部長 海老澤 元宏 先生
   国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部 病因・病態研究室 室長 佐藤 さくら 先生

アレルギー診断のフローチャート

適切な食物除去は正しい診断から
乳児の食物アレルギーは乳児アトピー性皮膚炎と合併して発症することが多く、症状から早期に診断することの難しい病気です。スキンケアやステロイド外用剤による治療にも関わらず、顔や頭にかゆみの強い湿疹が長く続いた場合には食物アレルギーの合併を疑います。また、食物アレルギー治療の基本は必要最小限の食物除去です。過剰な食物除去は栄養不足を招き、成長障害を引き起こすことになりますので適切な診断、治療が必要です。

食物アレルギー診断のフローチャート
食物アレルギー診断のフローチャート(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)

食物アレルギー診断のフローチャート(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)

  • 注1:スキンケアに関して/スキンケアは皮膚の清潔と保湿が基本であり、詳細は「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2009」などを参照する。
  • 注2:薬物療法に関して/薬物療法の中心はステロイド外用薬であり、その使用方法については「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2009」などを参照する。
    非ステロイド系外用薬は接触皮膚炎を惹起することがあるので注意する。
  • 注3:生後6ヶ月未満の乳児では血中抗原特異的IgE抗体は陰性になる確率が高いので、プリックテストも有用である。

食物アレルギー診断のフローチャート(即時型症状)
厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2011(研究代表者 海老澤 元宏 先生)
※学童期以降発症の即時型症例は一般的に耐性を獲得する頻度は低い 

導入事例

琉球大学医学部附属病院では、特殊項目のいくつかをイムライト2000XPiに集約しました。生化学免疫検査主任の山内 恵 先生に大学病院、基幹病院における特殊項目実施のあり方とイムライト2000XPiについてお話をうかがいました。

琉球大学医学部附属病院 化学免疫検査主任 山内 恵 先生

特殊項目は外部委託をしていましたが、沖縄県は陸続きでない分他県よりも結果報告が1~2日遅れること、離島から飛行機で来院される患者様も少なくないこともあり効率のよい検査体制を考えていました。これまでsIL-2Rは週1~2回にまとめて検査を実施、アレルゲンについてはアレルゲン項目だけの専用機器を使用し作業効率と依頼件数を考えると週1回の検査に制限せざるを得ませんでした。
イムライトを導入したことにより生化学検査と同じくsIL-2Rとアレルゲン検査結果の即日報告が可能になりましたので、臨床での診療計画に貢献でき、また患者様への負担も軽減されることを期待します。
sIL-2R、アレルゲンいずれも従来法との比較で問題はなくアレルゲンのクラス判定も同じなので機器変更はスムーズに行うことができ、臨床からは結果報告が早くなることへの評価が高く機器・試薬の切り替えに関して反対はありませんでした。

広島大学病院では2013年10月よりアラスタット3gAllergyによるアレルギー検査がスタートしました。アラスタット3gAllergyおよび全自動免疫化学発光システム イムライト2000XPiについて、先生方にお話をうかがいました。

広島大学病院 皮膚科 秀 道弘 先生

近年、新たな特異的IgE抗体の検査方法である「アラスタット3gAllergy」が広く用いられるようになりました。高感度ワイドレンジ測定が可能になったことで、今までより定量性に優れた特異的IgE抗体の検査結果を得ることができます。例えばアトピー性皮膚炎においては特異的IgE抗体の濃度が高く、従来法では測定値が得られなかったり、また免疫療法患者などにおいても同様に特異的IgE抗体濃度が高くてモニタリングできなかったケースが多くありましたが、アラスタット3gAllergyでは今まで測定できなかった100IUA/mL以上の測定が可能となりました。アラスタット3gAllergyの登場で特異的IgE抗体の検査対象が広がると考えられます。

広島大学病院検査部 部長 横崎 典哉 先生

広島大学病院検査部は、夜間救急を含めた24時間体制で医科・歯科含めて年間500万件を超える臨床検査を免疫化学検査、血液検査、生理検査、微生物検査、遺伝子検査、一般検査、採血・受付・治験の総勢35名で実施しています。アレルギー検査がアラスタット3gAllergyへ変更されたことで、リアルタイム診療とワークフローの改善が可能になりました。さらに高感度ワイドレンジによる臨床診断への貢献により検査現場、臨床、そして患者様にとって大きなメリットが得られたと思います。

広島大学病院 山中 遥 先生

アレルギー検査の測定機器としてイムライト2000XPiを採用しましたが操作方法も簡単で、メンテナンスも容易です。
装置がスタンバイ状態であれば検体投入のみで自動的に測定がスタートしますから、機器に人員を取られることがなくなり作業効率がとても向上しました。

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