Photon-counting CT - NAEOTOM Alpha
先天性心疾患の術後に酸素化不良を来し、造影CTにて発見された肺塞栓
岡山大学病院 放射線科 浅野 雄大先生、平木 隆夫先生

2023-09-19
臨床画像 岡山大学

先天性心疾患術後の酸素化不良に対する精査で造影CTが撮影された。ヨードマップ画像を作成することで血流低下域が描出され、通常の再構成画像での指摘が難しい分枝レベルの血栓が同定可能となり、ヨードマップ画像のみにて末梢レベルの血栓による血流低下が指摘された。


患者は生後1ヶ月以内の女児。左心低形成症候群に対してNorwood手術、右BTシャント形成術後。酸素化不良の精査目的に造影CTが撮影された。体重は3.52 kg、心拍数は約120 bpmで、高速撮影が可能なFlash Spiralモードで撮影した。


心血管の描出は良好で、酸素化不良の原因となるような肺動脈の狭窄や主幹部血栓は指摘されず、BTシャントの描出も良好であった。Norwood導管の描出も良好であった。ヨードマップ画像を作成することで右肺主体に複数の造影不良域が存在することが確認され、こちらをガイドにすることで右肺動脈の分枝レベルの塞栓を指摘することが可能であった。臨床所見とも合わせBTシャント部での血栓形成が疑われ、後日シャントクリップの調整が行われた。


高心拍の新生児の症例であり、Flash Spiralモードの良い適応であった。Flash Spiralによる高速撮影(最大秒間737 mm/s)により1秒未満で全肺野が撮影されており、NAEOTOM Alphaの高い空間分解能(0.4 mmスライス厚)と時間分解能(ハーフ再構成:66 ms)により心内腔やシャント血管、肺血管などが良好に評価可能であった。心臓CTは小児においては高心拍のため、成人で一般的に用いられるstep and shoot法による撮影が困難である。Flash Spiralモードで撮影することにより高心拍でも高画質で、かつ低被ばくでの撮影が可能である。さらに本CTでは従来機種のFlash Spiralモードでは原理的に併用不可能であった、スペクトラルデータを活用した画像が作成可能である。ヨードマップ画像は肺血流評価に有用であり、ヨード造影剤の造影効果が増強される低keV画像は今後の造影剤減量に活用されるものと思われる。また仮想単純CT画像を作成することで、単純CTの省略による被ばく低減も行うことが可能であり、今後の臨床での活用が期待される。