Photon-counting CT - NAEOTOM Alpha
「石灰化を含む病変への薬剤溶出性ステント
留置後のステント内評価について」
IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 循環器内科 青島 千紘 先生

2023-08-18
CT臨床画像(板橋中央総合病院)

冠動脈CTは冠動脈評価に有用であり、ガイドライン上中等度以上のリスクを有する患者に対して推奨1) されているが、しばしばアーチファクト、特に石灰化病変による画質の低下が問題であった。NAEOTOM Alpha は「フォトンカウンティング検出器」を搭載したDual Source CTで、各X線光子とそのエネルギーレベルを直接検出することによって被ばく量を低減した0.2 mmスライス厚による高分解能な画像が提供可能となり、これまで評価困難であることが多かった石灰化病変へのステント留置後の評価も可能となった。今回NEAOTOM Alphaの導入により、冠動脈ステント治療後のステント内腔の評価が可能であった症例を報告する。


57歳女性。高血圧、脂質異常症、糖尿病のため内服加療中であった。X-4年、起床時から持続する胸背部痛が出現し当院外来を受診、急性冠症候群の診断で緊急冠動脈形成術を施行した。左前下行枝(left anterior descending artery:LAD)に高度狭窄を認め、病変は一部石灰化を含み冠動脈ステントResolute Onyx 3.0/18 mmを留置した(図1 a-b)。術後経過は良好で退院後の外来通院中も症状の出現なく経過をしていたが、X年心窩部痛が出現しステント内再狭窄が疑われ、冠動脈CTが施行された。身長159 cm、体重72 kg、BMI 28.8 kg/m2であり、撮像時平均心拍数は54 bpm、高精細モードで撮像した。造影剤量は80 mlであった。

図2a.0.2 mmスライス厚によるLADステント部位の冠動脈CT画像:ステント外側に石灰化病変(→部)を認めるが、アーチファクトはわずかでステント内再狭窄は認めなかった。図2b.対角枝分岐部:LADステントから分岐した対角枝(→部)の評価も可能であった。ステント内再狭窄は認めず、非心原性の症状として内視鏡含めた消化管の精査の方針となった(図2 a-b)。

本症例ではステントが留置され新規症状を認めており、冠動脈CTは非侵襲的な画像診断としてよい適応である。CTの画質に影響する高BMI、ステント留置に加えて石灰化病変を伴っている状態でも、NAEOTOM Alphaの高い空間分解能(0.2 mmスライス厚)と時間分解能(ハーフ再構成:66 ms)により、高画質な画像が得られステント内評価が可能であった。
冠動脈CTは陰性的中率が高いものの陽性的中率は低く2)、患者の体格や脈拍、石灰化、金属によるアーチファクトなど、画質に影響を及ぼす因子が複数存在する場合、陽性的中率の低下に寄与していると考えられている。NAEOTOM Alphaの登場により高い空間分解能の画像が得られ、さらに別の撮像方法ではスペクトラルデータを活用したPure Lumenモードで石灰化病変の評価も可能となった。従来に比較しノイズの混入も少なく、これらの技術により偽陽性の原因であった複数のアーチファクト軽減が可能となり、冠動脈CTの陽性的中率の向上が期待される。さらに高画質であることから、その後の非侵襲的評価であるFFRCT 検査も信頼度の高い結果になることが予想され、非侵襲性という特性はそのまま臨床上の有益性向上に繋がっている。現在当院では、より少ない造影剤での撮像や被ばく低減に挑戦しており、本CTは患者にとってより安全な医療機器であると考える。

1) 日本循環器学会 ほか編:慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版). 2018.
2) A Farzaneh-Far et al. Coron Artery Dis.2013 Nov;24(7):606-12.

販売名:ネオトム Alpha
認証番号:304AIBZX00004000