英国のCTイメージング事情~2つの都市を比較して~

Dan Whitaker|2020/06/24

国の北部と南部の間にライバル関係があるように、イギリスの医療サービスは公的機関と民間機関とに分かれています。しかしながら、それぞれの主要な病院の画像診断部門を見てみると、両者には違いよりも類似点の方が多いことがわかったのです。

写真:Andrea Artz


デュアルソースCTの導入によって、スパイアマンチェスターでは子どもの画像診断が増加しています。
コロナMPRとVRT画像は、7歳の女の子の全身ネイティブスキャンを示しています。80 kVの管電圧と0.57 mGyの放射線量で、14.7秒で1.355 mmのスキャン範囲が取得されました。

中世には、マージー川のほとりの村落だったというディズベリー。現在、そのビクトリア様式の赤レンガの建物は、近郊の都市マンチェスターで働く人々の住居として活用されています。マンチェスターは、サッカーチームとポップスターで有名な、そして英国政府が『ノーザン・パワーハウス(北の発電所)』と呼ぶほど商業が盛んな都市です。

またここには、英国を代表する有数の私立民間病院ネットワークの旗艦施設である「スパイアマンチェスター」があります。昨年完成したばかりのこの施設における、放射線学部門と理学療法部門は全て、地元在住のStephen Trimble氏によって計画されました。Trimble氏が地元に根差している象徴の1つに、オフィスの壁に掛けられた、マンチェスターユナイテッドFCマネージャー、ホセ・モウリーニョのサインが入った写真があります。彼はまた、今は病院がある場所で昔、父親がサッカーをしていたときのことを覚えているといいます。それはStephenがAdvanced Practice(臨床放射線撮影レポート)分野の修士号を取得するため、地元サルフォード大学に向かう数年前のことでした。

スパイアマンチェスターでは、新しいデュアルソースCTを導入後、小児患者のCT撮影が増えました。
スパイアのCT室でのStephen Trimble氏

デュアルソースCTの導入によって、この部門への検査依頼は3~4倍にも増えました。
今や忙しく、活気に満ちたこの部門を誇らしげに見渡すStephenですが、その笑顔が最も輝くのは、訪問者に『SOMATOM Drive』を紹介する時です。
『SOMATOM Drive』は、国内初の、そしてこの地域では唯一のデュアルソースCTスキャナーです。「CT画像のカギになるのは放射線量です」と彼は説明します。「デュアルソースCTなら線量を最小限に抑えられることから、以前、16スライスのシングルソースCTを使用していた時の3〜4倍もの検査依頼が来るようになりました」。

「かつてはCT検査の後にX線撮影を行っていたようなケースでも、デュアルソースCTの場ならその必要がありません。コンサルタントや放射線科医はこの点を高く評価しています」と彼は言います。これは、民間の医療機関からの紹介された患者、そして彼の患者の30%を占める、公的国民健康サービス(NHS)からの紹介患者の両方に共通することです。
Stephenと彼のスタッフはまた、デュアルソースCTの撮影速度にも満足しています。高速撮影は、毎日のスループットが最大になるもう1つの要因で、結果として得られる収益は、デュアルソースCTの購入やサービスの導入などのイニシャルコストを容易に上回るからです。

新しいスキャナーは、2つの意味でスパイアの領域拡大に貢献しています。治療という意味では、これまで主流だった心臓病に加えて、より多くの筋骨格系および神経系にまで対象が広がりました。そしてもう1つは患者層の広がりです。地元のNHS病院は、血管石灰化という珍しい遺伝性の症状を持つ、7歳の少女の定期検診をスパイアに依頼してくるようになりました。またマン島から心臓検査を受けにくる中年男性は、その日のうちに飛行機で島に戻ることができますー彼がそれまで耐えていた、長時間に及ぶカテーテル検査を受けなくてよくなったからです。どちらも、デュアルソースCTスキャナーを導入するまで、スパイアの患者ではありませんでした。

ロンドンのGOSHは、子どものCT画像診断を専門としています。
ロンドンのGOSHの元主任放射線技師であるAnna Guy氏は、キャリア全体を通して子ども達の治療に焦点を当ててきました。

スパイアが幼い少女をケアするのは珍しいケースです。しかし一方で、南に約300キロ離れたところに、ほぼすべての患者が小児という病院もあります。ロンドンのグレート・オーモンド・ストリート病院(GOSH)は、国の代表的な小児科施設であり、NHSの旗艦病院であり、そしてイギリス国民に最も親しまれている医療施設でしょう。GOSHは、160年以上の歴史を持つ、チャールズ・ディケンズも知っていたであろう古い病院です。狭い市内中心部に位置することもあり、ここの放射線検査は、地下の入り組んだ回廊で行われます。というのも、建物の上階の床は、検査機器の重量に耐えられないからです。

たとえ北部の小さな街のサッカーチームに負けるという屈辱に耐えなければならないような時でさえ、ロンドンは、国際的に強いつながりを持つ都市だということへの自信を失いません。GOSHの元主任放射線技師であるAnna Guy氏は、NHSのすべての画像診断装置において13年の経験を積んだ後、このつながりを使って、オーストラリアに異動しようとしています。出発の数日前、彼女は座って、患者が幼い子どもである場合の違いを説明してくれました。「5歳以下の子どもならはじめは誰でも、『従順ではない』状態で、叫んだり暴れたりしますー不安げな両親、しかも大人たちは皆、スクリーンの後ろに隠れているー今まで経験したことのない状況ですから、子ども達の反応に無理はありません」。

GOSHのSOMATOM Forceには、特に子どもたちの撮影に役立つ機能があります。子どもたちが泣きわめいても、画像は高精細でぼやけたりすることはありませんが、魚が泳ぐ水槽の壁、天井、床に描かれた絵を照らす優しい色のライトのおかげで、不安な反応自体が軽減されました。これらはすべて、動きにインタラクティブに反応します。「ここがとても素敵なところです。手を振ればこれらが操作できる、とわかると、子どもたちは自分たちがプロセスをコントロールする大事な役目を担っているように感じます」とAnnaは言います。彼女のチームの1人は、子どもたちの心を落ち着けるための、もう1つの味方 ー チャーリーと呼ばれるカメのぬいぐるみ ー をにっこりと掲げます。

特に、麻酔を必要とするMRI検査の30分と比較した際、CTの撮影スピードは大きな利点となります。Annaは、新しいCT装置の速い動きを初めて見たとき、チームメンバーが『歓声をあげた』ことを覚えています。その上、このスピードでありながら、3 kg~9 kgの赤ちゃんを自動的に判別して線量を調整する機能も備えています。「私は当初、この機能を疑っていましたが、実際には可能で、そしてとても役に立つということがわかったのです」と、Annaは認めています。

スパイアと同じようにGOSHでも、デュアルソースCTの精細な画像によって、ケースミックスの幅が広がりました。たとえば、体重が1キロ未満の新生児でも細い血管がより見やすくなりました。そしてこの優れた技術により、半分以上が胸部症例として残っていた患者名簿に、肺の病状と腫瘍学の症例が追加されたのです。

Annaは自ら600人の患者を対象として、デュアルソースCTの画像がどれほど従来のシングルソースCTよりも鮮明であるかを調べました。 患者の半分は2016年に新しいデュアルソースCTで、残りの半分は2015年に、従来のシングルソースCTで検査されました。どちらで検査したかを知らない2人の放射線科医が5点満点評価で約1点差で、デュアルソースCTの方がより明瞭であると評価しました。1点差というのは「悪い/まあまあ」な画像と「良い」画像の差であることを意味します。この強力なエビデンスは、近々発表される予定です。

GOSHではCT撮影時、インテラクティブな優しい光で小さな患者たちを落ち着かせます。
GOSHではCT撮影時、インテラクティブな優しい光で小さな患者たちを落ち着かせます。

麻酔の回避は重要です。Annaは、手術計画のためにCT検査が必要だった、ある重度の肺高血圧症を患った4歳児のことを覚えています。「この子の容体では、麻酔によって死亡リスクが大幅に上がるので、可能な限り回避する必要がありました。SOMATOM Forceの高速画像撮影により、麻酔を必要とせずにスキャンが完了し、診断ののちに手術計画が立てられ、手術は成功しました。チームは得られた画像に非常に満足しています。CT検査はこの子の手術計画に不可欠だったのです」。

しかしとにかく、GOSHにおいて最も重要だったのは、デュアルソースCTによって放射線量を削減できるということです。ほとんどのケースで、放射線量は従来の約半分に抑えることができます。「本質的に子ども達にとって、放射線の生涯リスクは高いのです」とAnnaは指摘します。これは、GOSHで実施されている年間2,500件の検査についてだけの問題ではありません。多くの国で、小児医療におけるCT検査の需要は、高齢者と同じくらい、急速に高まっているのです。

このように多くの課題があるにもかかわらず、Annaは、小児患者のために働くことにとてもやりがいを感じています。「子どもは感情に正直ですから、そう簡単ではありません。けれども彼らが笑顔でCT室から出てくるのを見ると、自分たちの仕事にはとても大きな価値があると感じられるのです」。


Dan Whitaker: ロンドンを拠点とするフリージャーナリスト