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国内対応が決定TSH値のハーモナイゼーション

甲状腺ホルモン検査のなかでも、甲状腺疾患の診断、治療の上で根幹をなすTSH値のハーモナイゼーションに対し、国内の対応が決定し、関連学会のホームページに掲載されました。

なぜハーモナイゼーションが必要か?

主要な検査項目であるにもかかわらず、測定値の方法間差が大きく、そのため正常/異常の区別が不明確で、適切な診断・治療につながらない可能性や医療機関を変えることにより違う値が出るという課題がありました。この方法間差を抑えるためにIFCC(国際臨床化学連合International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)は、C-STFT(甲状腺機能検査標準化委員会 Committee for Standardization of Thyroid Function Tests)を組織し、国際的標準化を推し進めています。日本国内においては、IFCCのC-STFT委員である菱沼 教授を中心に標準化委員会が立ち上がり、IFCCでの検討結果を元に世界に先駆けてTSH値のハーモナイゼーションが計画され、日本臨床検査医学会標準化委員会において議論されてきましたが、方針が決定されました。

TSHはなぜ標準化ではなくハーモナイゼーションなのか?

TSH-chart

血清中のTSH は分子的に1種ではない混合物で、アミノ酸配列や糖化が異なる分子的多様性を有する物質です。一方、基準物質であるWHO IRP 80/558 & 81/565は死体下垂体抽出物で血清中に存在するTSHと分子的に異なります。

TSHの測定法は免疫学的測定法であり、基準測定法が存在しないため、全方法間の平均値を”便宜的”基準測定法としています。IFCC、C-STFTは10年以上の年月をかけて、フェーズⅠからⅣの経過で検証を行い、最終段階の基準値測定試験としてフェーズⅣを発表しました。このIFCC基準適合検査値(Phase Ⅳ)に対し各方法(試薬キット)を補正する事により、測定値を合わせる事をハーモナイゼーションと呼びます。

どのような対応が必要か?

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IFCC基準適合検査値(Phase Ⅳ)補正方法の各キットへの適用は2021年3月末日までに各メーカーが行うとされています。
なお、補正係数1.00の試薬キット(ケミルミ TSHⅢ ウルトラ )をご使用中の施設では、基準適合検査値に合わせる補正対応は不要です。(現在の測定値のままでIFCC基準適合検査値に準ずるものとなります。)

ビデオ講演

獨協医科大学 菱沼 昭 教授に「甲状腺ホルモンの標準化」について、3部にわたりビデオ講義で解説いただきます。
このビデオ講演では、標準化の必要性、国内外のハーモナイゼーションの取り組み、そしてどのようにして実現したのか、その全貌を知ることが可能です。是非ご覧ください。

甲状腺検査の現状
TSH、FT4とも方法内変動は良好であるが、方法間変動が大きく、キットによって測定値が異なってしまうというのが現状です。
このため、”正常“と”異常“の判定が異なったり、医療機関により値が異なったり、また研究成果を比較できない等が発生し、ガイドライン作成も不正確になりかねません。
このような現状の測定方法の課題点を整理して解説していただきます。

IFCCハーモナイゼーションの取り組み
IFCCにおける世界的な標準化の取り組みを、これまでどのようにしてハーモナイゼーションを決めたのかも含め、主に以下の内容を中心に大変わかりやすく解説いただきます。

  • 「標準化」と「ハーモナイゼーション」の違い
  • TSHはなぜ「標準化」ではなく「ハーモナイゼーション」というのか?
  • ハーモナイゼーションの実際のデータ
  • ハーモナイゼーション後のTSHの参考基準範囲

国内のハーモナイゼーションについて
日本国内では日本臨床検査医学会標準化委員会が中心となり厚労省や各関連学会、各診断薬メーカーと連携して、2021年3月末日までに各キットがIFCC基準適合検査値(PhaseⅣ)補正方法を適用するという方向性でのハーモナイゼーションが進行中であり、各キットの補正係数や、新たに設定されました日本人の基準範囲について、丁寧に解説いただきます。

IFCC C-STFTの甲状腺ホルモン検査の標準化に関する考え方と取り組みについてはこちら